ゴーン容疑者~気になる東京地検特捜部が動くその背景

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ニッポン放送「飯田浩司のOK! Cozy up!」(12月3日放送)にジャーナリストの須田慎一郎が出演。日産とゴーン容疑者の役員報酬をめぐる事件について解説した。

カルロス・ゴーン 逮捕 容疑者 ゴーン会長 日産 ルノー フランス 三菱 特捜部

三菱自動車岡崎製作所と隣接する研究開発拠点を初めて視察するカルロス・ゴーン会長=2017年5月19日 愛知県岡崎市 写真提供:時事通信

日産~ゴーン容疑者と特捜部が報酬記載義務で対立

日産自動車前会長のカルロス・ゴーン容疑者の、報酬を少なく記載したとされる事件。東京地検特捜部との対立構造が鮮明となっている。ゴーン容疑者は「退任後に受け取る計画だった報酬の1部は額が決定しておらず、記載義務はない」と主張しているが、特捜部は退任後に受け取る予定額を記した覚え書きを複数入手していて、決定的証拠としている模様。

飯田)金融商品取引法違反容疑です。役員報酬は将来受け取る場合でも、有価証券報告書に記載を義務づけています。ただ、それがどこまでかというのが攻防のポイントですね。

須田)「受領額が確定しているか否かがポイントになっている」という日本のマスコミ報道が多いですが、この一連の報道を見ていて、大前提として「特捜部はかなり余裕がないな」という印象です。このような情報をリークすることで、マスコミや世論を味方に付けようとしている特捜部の焦りを感じます。この記載義務の有無はもちろん裁判で争われますが、実は、今回の事件に関しては重要なポイントではありません。

カルロス・ゴーン 逮捕 容疑者 ゴーン会長 日産 ルノー フランス 三菱 特捜部
「書類にサインした=故意性はなかった」という結論になりかねない

須田)今回は有価証券報告書虚偽記載罪と、金融商品取引法違反が問われているわけですが、この有価証券報告書虚偽記載罪は2段構えになっています。1つは「記載すべき事項を記載していたか否か」です。これがいま言われていることですが、それだけで有罪になるわけではない。もう1つ重要なポイントが「記載すべきと知りながら、あえて記載しなかった」という認識があったか否かです。つまり故意性ですね。すると、記載義務について争っているということは、故意性がないということです。

飯田)確かにそうですね。報道されているベースで「金融庁にも照会したが、載せなくていいと言われた」という話も出ていますね。

須田)その件に関して言うと、いろいろな書類にゴーン容疑者が了承、了解するサインをしたことについて、「これが決定的な証拠だ!」としている報道があるけれど、むしろサインしたということは「故意性がなかった」と証明してしまう諸刃の剣なのです。

飯田)後ろめたかったらサインしませんからね。

須田)「サインせずにやり過ごす方法を採るはずなのに、サインした。つまり違法性の認識がなかった」という、逆証明になってしまうと思います。

カルロス・ゴーン 逮捕 容疑者 ゴーン会長 日産 ルノー フランス 三菱 特捜部

【日産、カルロス・ゴーン容疑者逮捕】日産自動車グローバル本社=2018年11月22日 写真提供:産経新聞社

日産がルノー傘下入りを拒む政府の意思が働いている?

飯田)事件発覚当初は特別背任とか、会社の金を故意に使い込んで私腹を肥やしたとか言われていましたが、全然言われなくなって来ましたからね。

須田)特別背任、横領、脱税などが本線であって、そもそも金商法違反は形式犯ではないかと思います。
ところが、特捜部長が「形式犯ではない!」と記者に言いまくっているらしいです。すると、なぜこんな針穴に糸を通すような捜査をやっているのか。その背景を知るのが重要になって来ると思います。それは大げさに言い過ぎかもしれませんが、日本の国家意思、あるいは経済産業省を中心とした政府の意思として「やはり日産がルノーの傘下入りをすることはよくない。徹底的にゴーンを叩け!」みたいな国家意思が働いた可能性もある。そう考えると、「総理大臣秘書官の今井さんは経産省だしな」とか、よけいなことを考えてしまいますね。

飯田)いまの官邸はどちらかと言うと経産省が強い。前々からいろいろ言われていますよね。

須田)そういうゲスの勘ぐりをしたくなる捜査のような気もします。

飯田)だからこそ、「フランスのマクロン大統領が安倍総理に直談判する」みたいな記事が週末紙面で踊っていましたね。

須田)これは場合によっては政治決着を付けなければ収まりが付かないし、ル・モンド紙以下のフランス大手メディアは「陰謀論だ! クーデターだ! 日本けしからん!」の一色ですよ。フランス世論もこれについてはかなり激しく見ていますからね。日仏対立をこんなところでしていていいのか、という問題もあると思います。

協議では決着しない

飯田)今度は資本関係のところを見て行く必要があると思います。ルノーは日産の株式約43%を持っているとされています。一方で日産は15%くらいしかルノーの株を持っていない。この辺の比率をいじることになるのでしょうか。

須田)協議では決着しないと思います。場合によってはいろいろな意味で「敵対的買収」などの切り口で見て行く方が適切だと思います。

飯田)すると、日産がことに出ようとすると、資金面で新たなスポンサーを見つける必要がありますね。

須田)同時に、資本関係からすると圧倒的に不利です。それが敵対的買収に入ったときにゼロスタートではありませんから、日産は大丈夫なのか。

飯田)莫大な額が必要になりますからね。大きな絵をどこが描いて、どう資金を出すのでしょうか?

須田)西川社長にそこまでの力量があるのか、少し難しいと思います。

飯田)これはまだまだ続いて行く話ですね。

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