ゴーン容疑者解任と共に問われる日産の経営体質

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ニッポン放送「飯田浩司のOK! Cozy up!」(11月27日放送)にジャーナリストの有本香が出演。カルロス・ゴーン容疑者の三菱自動車の会長職解任と日産の経営体質について解説した。

三菱自動車がゴーン容疑者を解任

益子)ゴーン前会長の当社代表取締役及び会長の職を解くことを取締役会に提案し、全会一致で承認されました。

昨日、臨時取締役会を終えた三菱自動車の益子修CEOの会見の模様。日産のグループ会社、三菱自動車は昨日、臨時取締役会を開き、金融商品取引法違反の容疑で逮捕されたカルロス・ゴーン容疑者の会長職と代表取締役の解任を決めた。

飯田)フランスのルメール経済・財務大臣は、ルノーの新経営陣がカルロス・ゴーン容疑者の報酬や企業資産を巡って、不正が無いか調べる監査を始めたことを明らかにしました。先週の月曜、夕方くらいから急速に動き始めたニュースです。1週間が経ちましたが、ご覧になっていかがですか?

有本)最初に一報を聞いたときはちょっと耳を疑いました。と言うのは、いまのような法律の下ではないですけれども、過去に取締役会や株主総会の事務局などを経て、株主向けに広報するというIRをやっていたことがあります。それ以後法律が変わって、役員報酬を有価証券報告書に記載しなければいけないというルールになったわけですが、企業によってはより情報開示をする意味合いで、それ以前から役員報酬を載せているところもありました。

飯田)自主的に載せていたと。

有本)自主的に。だけど、実際にお金が動くものである役員報酬を、「記載する・しない」といったごまかしはなかなかできるものではないだろう、ということでまずびっくりしました。

飯田)有価証券報告書を出すときにいろいろな人の目を通るわけですよね。

三菱自動車 カルロス・ゴーン ゴーン容疑者 日産 80億円 解任 会長 三菱
不確定な解任後の退職金は有価証券報告書に記載する義務はない?

有本)それが事実ということであれば、とんでもないことだと思う一方で、日産自動車ほどの会社が何年にもわたってそんなことができていたということが信じられなかった。会社全体の責任を問われるのは当然だろうと思いました。けれど、段々といろいろなことが進んでいくなかで、今回のニュースは三菱自動車がゴーン容疑者を解任したということと、ルノーが調査を始めたということ。調査を始めるまでにフランス側は、この件とは関係無い日本の捜査当局、人権侵害ではないかということを問題にしていたようですけれども。それはちょっと筋が違うと思います。
今朝の新聞各紙の報道で、各紙とも独自に取材をして違う情報を取って来ています。この精度がどこまで正確なのかという疑問符はつきますが、ゴーン容疑者側としては、退任後に報酬を受け取る予定だったということは認めている。しかし、事実関係については認める供述をしているのですが、「退任後の支払いが確定していたわけではないのだから、有価証券報告書に記載する義務はなかった」と言っているということです。

飯田)引当金なり、というものが動いていないから。

有本)企業側のね。

飯田)ただの約束であって、反故にされる可能性もあったではないかということです。

有本)予定のことだから、それは報告書に書く必要は無かったというのも、そこだけ捉えるとそうかなという感じにもなって来るのです。

飯田)ある意味、法解釈の争いというか。

有本)だから最終的にこれがどこまで違法であると問われるか、というのはまだまだ分からないのですよ。

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2017年1月、米ラスベガスの家電見本市「CES」で、基調講演する日産自動車のカルロス・ゴーン社長(ロイター=共同) 写真提供:共同通信社

他にもあるゴーン容疑者の疑惑

飯田)いろいろメールも頂くのですが、おそらく専門家の方でしょうか、世田谷の“道草”さんから。「80憶円のゴーンさんの退職慰労金ですが、ボーナスを退職金としてプールするという方法があります。SRPと言いますが、外資では頻繁に使われた手段です。退職金は税率が安いので、ある意味の税金逃れ。2005年頃に日本の税当局から禁じられたと思うのですが、その前に日産に入っているゴーンさんは適応外かもしれません。税務から特捜が攻めるというのは無理、という声も多いですが、退職後80億円というのを聞いてこの手を使うつもりで、それも1つの特捜を動かしている背景かもしれません」。

有本)税務から攻めるのは難しいということは、数日前から言われています。その一方で、他の新聞は私的損失を日産に転化させたのではないかという疑惑もあると言っています。2006年くらいに、デリバティブ取引という金融派生商品の取引をしていて、2008年のリーマンショックで、担保として銀行に入れていた債権の時価が下がった。銀行側と話をして、銀行は「担保を追加してくれ」と言うのだけれども、それをしない代わりに損失を含む全ての権利を日産に移す。そんなことがそもそもできるのか謎なのですが、そこも含めて日産のコーポレート・ガバナンスはどうなっていたのか。銀行側は「そうですか、いいですよ」と言ったということです。銀行側は自分たちの担保が確保されていれば良いわけです。

飯田)焦げ付きよりはよっぽどまし。

有本)そう。個人企業でもあるまいし、そんなことが簡単にできるのかと思ってしまいますよね。

飯田)銀行側は「取締役会にかけろ」と言ったようですけれども、ゴーンさん側は「大丈夫だ」と答えたそうです。

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【日産、カルロス・ゴーン容疑者逮捕】日産自動車グローバル本社=2018年11月22日 写真提供:産経新聞社

問われる日産の経営体質

有本)これが大体2008年以降の話でしょう。ルノーの経営責任者になったのは2005年くらいですかね、以降で問題が出て来ている。独裁的になったと言われていたり、今回の役員報酬の件で最初に出て来た、ストック・アプリシエーション制。これも株価が上がった報酬として取締役が受け取るということですが、取締役が何人もいるわけで、どのように配分するかも取締役会にはかけず、ほぼゴーン容疑者が独断で決めていた。ちょっと考えにくいですよね、日産程の会社で。

飯田)一部上場のこれだけ大きい企業で。

有本)まず容疑者に対する疑問とか怒りみたいなものと同時に、日産に対して「会社としてどうなっていたんだ」という部分は禁じ得ませんよ。思い出されるのは20年近く前ですけれど、ゴーン容疑者が乗り込んで来てマスメディアも皆持ち上げました。だけど結局やったことというのはコストカットでしょう。それまでの放漫経営的な経営失敗のツケを、2万人のリストラという形を代償として立て直したと言われている。そういう点でも、日産の経営側の体質、これは長年に渡ってずっと酷いものだったと言わざるを得ないし、いまも引きずっているのではないですかね。

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