英議会EU離脱協定案否決～善後策をどう講じるか

By - NEWS ONLINE 編集部　公開：2019-01-16 　更新：2019-01-16

ニッポン放送「飯田浩司のOK! Cozy up!」（1月16日放送）にジャーナリストで東海大学教授の末延吉正が出演。イギリス議会がEU離脱協定案を否決したことについて解説した。

「英ＥＵ離脱へ」ＥＵ離脱案、大差で否決　１５日、ＥＵとの離脱合意案の採決前に英下院で演説するメイ首相＝ロンドン（ロイター＝共同）

EU離脱協定案をイギリス議会が否決

イギリス政府がEUから離脱する条件を定めた離脱協定案の採決がイギリス議会下院で行われ、反対432票、賛成202票の大差で否決された。3月29日に離脱を控え、イギリスは重大な局面を迎えている。

飯田）メイ首相にとっては屈辱的な敗北、230票余りの差がついたということであります。メールも頂いています。舘林の“サバ缶”さん48歳の方、「EU離脱の決議、大差で否決でしたね。元々は離脱に否定的だったメイ首相はもう責任を果たしたのではないかと思います。労働党が出すという内閣不信任案に保守党の中からも造反するものが出てきたら、総辞職でも良いのではないでしょうか。そうするといま威勢のいい離脱強硬派がまた国民投票の直後のように腰砕けになるかもしれませんよね」と。どうなるのか分からないというのがいちばん怖いですね。

末延）代替案を来週の月曜日と言っても間に合いませんから。EUと話して少し先延ばしにするか、対策を講じなくてはいけないですね。思い出してみると大事なのは、あのときEUから離れれば自由裁量で凄いことになるという独立派、離脱派がいろいろなことを言った、その言っていることのなかにもかなりフェイク、間違いや嘘があったのです。だからある意味ではポピュリズムの波が盛り上がって火がついて、終わって冷静になってみたら、この判断で良かったのかなと態度を変えた人も多いのです。
そういう意味では、もう一度国民投票に掛けるのかどうするのかを含めて、野党と与党の中で善後策を話さなくてはいけない。しかし、そういう事を含めてメイさんにいまの政局を動かしていく力が残っているのかどうか、少し難しいところですよね。

飯田）では離脱強硬派が主導権を取ってというのは、なかなかそれもやりづらい。ボリス・ジョンソンさんは激しく興奮していたらしいですが。

このまま離脱になれば経済はアウト

末延）何でもそうなのですけれど、ノーとか大衆迎合で過激なことを言うことは、瞬間の受けは良いのですけれども、よくよく全体を俯瞰して見て冷静に分析していかないと、果たして何を勝ち得たのかという、混乱だけだったということになるわけです。日本だってイギリスには1,000社出ているわけで、これで離脱になれば物流は止まります。経済はもう明らかにアウトです。それが分かっていたので、反対とか秘訣は良いのだけれど、その善後策をどうするか。EU側だって得は無いですからね。

飯田）欧州委員長のユンケルさんは声明というか、Twitterにもかなり書き込んでいますけれども、もうほとんど時間はないのだと、イギリスがどうするのか示せと、ただこの協定案がベストなものだと思っているし、これをあまり変えるつもりはないというのがEU側の本音でもあると。

末延）北方領土なんかでも、日本も気を付けなくてはいけないのは、何かがあるとメディアがすぐにこれは良いとかダメだとか感情的に言うでしょう。そういうのは良くないのですよ、ミスリードしてしまう。あのときも「夢の離脱」みたいな感じだったではないですか。しかし、少し時間が経って落ち着いてみたら、何を得たのかと、混乱だけだったという。

不信任案採決となれば議会解散も

飯田）出てきた協定案は人の移動は制限するけれども、物やお金の移動はいままで通りやらせてくださいと。それは少し虫が良すぎないかとEUからは言われてしまうと。

末延）もうG5の時代が来る、ネットで人と物が繋がっていく、そういうときに一国だけでどれだけガードして自由が受け止められるのかと考えたときにそうはいかないでしょう。自分だけのシステムで経済を動かすなんてことはできないわけだから、そう考えると、イギリス議会は野党ともに少し頭を冷やして、善後策ももう決めなければ、ルールなき離脱がいちばんただの混乱ですから。そこだけを避けるということを考えなくてはね。しかしメイ首相にそのリーダーシップが残っていますかね。

飯田）今回、ダブルスコアという大差で否決されてしまったということは、相当政治力を削ぎますかね。

末延）だからこれは離脱案の中身の不安ももちろんあるのですけれど、それをリードしてきたメイ首相に対するノーですよ。これはやはり人を変えるしかないのではないですか。

飯田）そうなっていくと。

末延）横綱稀勢の里ではないですけれど、一旦負のスパイラルに入った者はもうその瞬間どうあがいても駄目なのですよ。そこはシャッフルするしかないのですよ。

飯田）この先、直近では明日不信任案の採決が行われると、この結果如何によってはひょっとしたら議会解散まであるかもしれないと、そうしたらシャッフルになるかもしれないですよね。

末延）しかし、議会を解散するにしても国民投票をするにしてもあと3カ月をもう切っているわけで、手続きなどを考えるとやはりEU側と先延ばしとの合意を得た上でどうするのかということになるのではないですか。