ニッポン放送「飯田浩司のOK! Cozy up!」（1月25日放送）に外交評論家・キヤノングローバル戦略研究所研究主幹の宮家邦彦が出演。日露首脳会談による交渉の進展について解説した。

首脳会談を終え、共同記者発表で握手するロシアのプーチン大統領（右）と安倍晋三首相（ロシア・モスクワ）＝2019年1月22日　写真提供：時事通信

日露首脳会談からダボス会議まで～安倍総理の外交の成果はいかに

今週は安倍総理大臣が22日、日本時間では火曜日、日露首脳会談をはじめとしてその後のダボス会議ではG20の議長国としてスピーチを行い、TPP11やEU（ヨーロッパ連合）とのEPA（経済連携協定）を引き合いに出して、自由貿易の重要性などを訴えた。

飯田）日露首脳会談からダボス会議と駆け足で、もうすでに昨日戻って来たというところですが。

宮家）日露に限らず外交交渉というのは、議論し、それをどうやって発表するかということです。あくまで一般論ですが、民主社会で説明するときでも、いちばん大事なことは喋れないことが多いわけです。ですから発表のなかでそれが入っていない場合に、一部の人たちは「全然進展がない」という言い方をしますが、進展があるのかないのかは分かりません。でも進展があれば、発表するかもしれない。
私だったらどう読むのかというと、「いちばん大事なことは今は発表しない」のだと思います。もし本当に全体がダメで潰れそうになっているとしたら、それは必ずどこかで外に出るはずです。

飯田）それもどこかで出てくる。

宮家）出すとしたら、ロシア側が出します。潰しに行くのだから。だけど今回はそういう感じでもないですよね。物事がよく動いているとしたら、日本側が出したいところですよね。でもそれも出てないでしょ？　両方とも黙っているということは、核心の議論を両方がしているということです。

両国とも黙っているということは、核心の議論をしているということ

飯田）いよいよ議論が煮詰まって来ているということですか？

宮家）核心の議論が始まっているということです。だから迂闊に喋れない、だから表に出ない。で、ある人はそれを失敗と言い、ある人はこれを進展と呼ぶかもしれない。僕はどちらでもないと思っています。１対１でやっているわけだから、状況をいちばんよく知っているのは、総理自身ですよね。
ですからそれ以外は、公開情報のなかからヒントを見るしかない。そうすると、言わなかったことがいちばん大事だし、そのなかでどちらからも何も出ないということは、恐らくどちらも喋れないぐらい、核心の議論をしているということです。

記者会見を発表にするのは、「進展が無い」だけでなく「喋れないことが多い」場合もある

飯田）一部、進展が無かったではないかと言う人のなかには、会見で質疑応答があると言われていたものをキャンセルされた。発表のみに終わったということで、これはご破算に近いのではないかと言う人もいますが。

宮家）それは違うでしょうね。「突っ込まれても言えることが無い」ということで、最初は記者会見を考えていたけれど、発表に変えたのだと思います。だからと言って進展が無かったとは限りません。

全体のパッケージで慎重に進む領土問題～最後まで核心の情報がでない可能性もある

飯田）今回の舞台設定ですが、いままでクレムリンでやっていたものが今回元老院というところでやりました。プーチンさんの執務室まで総理を案内したという話が出ていますが、これは自分の城に引き込んで有利にやってやるぞというものなのか、友好の証なのか。

宮家）友好かどうか別として、個人的に自分の部屋に招くとことは、親しさの象徴だろうと思います。そこに入ったからといって、別に良いことがあるわけでは無いと思いますが。トランプさんだって自分の別荘とかに行って、ゴルフまでやるわけです。それは首脳外交としてはよくあることだとは思います。あまり深読みしても意味は無いと思います。

飯田）何にせよこれは、出て来るまでは核心の部分は分からない？

宮家）最後まで出ないと思います。しかもこれは、パッケージだと思います。経済協力も領土問題も平和条約も、全体のバランスが取れて、「これなら行ける」と両者が思ったときに、初めて外に出るわけです。それまではそのパッケージを作るためにものすごいエネルギー使います。１つ間違えても、それ全体のパッケージが壊れる可能性があるわけですから。そうすると何も言えない。一喜一憂しても仕方ないのですが、最後まで核心の情報が出ない可能性は十分あると思ってください。

飯田浩司のOK! Cozy up！
FM93AM1242ニッポン放送　月-金　6:00-8:00