中国駐在カナダ大使辞任~ファーウェイ問題にある2つのポイント
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ニッポン放送「飯田浩司のOK! Cozy up!」(1月28日放送)にジャーナリストの須田慎一郎が出演。ファーウェイ孟晩舟副会長のアメリカへの身柄引き渡しについて解説した。
ファーウェイ擁護の中国駐在カナダ大使、トルドー首相の要請で辞任
去年12月に逮捕された中国通信機器大手ファーウェイの孟晩舟副会長を巡って、中国駐在のカナダ大使ジョン・マッカラム氏が「アメリカ側への身柄引き渡しは良好な結果に結びつかない可能性がある」と発言し話題になっていた件で、トルドー首相はマッカラム氏に駐中大使の役職を辞するよう要請し、受諾したと明らかにした。
飯田)アメリカが近くカナダに対して、正式にこの孟晩舟氏の身柄引き渡しを要請する方針であり、期限も迫って来ているなかでの発言。司法には介入しないという建前を破ってしまったのではないか、ということになったようですが。
須田)タイミングとしては非常にナイーブなタイミングですからね。普通だったらそれほど問題視されないのでしょうけれど、今回は辞任要求ということになったのだろうと思います。結局はリップサービスの側面が非常に強かったのではないですかね。駐中国大使として、周りに記者がいればその程度のことは発言をするので、そういうことになったのではないかなと思いますけれども。
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中国の通信機器大手、華為技術(ファーウェイ)の孟晩舟最高財務責任者(CFO)(ロシア・モスクワ)=2014年10月2日 写真提供:時事通信
ファーウェイ問題にある2つのポイント~ファイブアイズと以前からの内偵
須田)大前例として、ポイントは2つあって、それについてはもうすでにこの番組でお話しさせていただいていますが、諜報情報の世界において、カナダはアメリカと同盟国です。そのキーワードとして「ファイブアイズ」という言い方をしましたが、アングロサクソン系の5つの国、アメリカ、カナダ、ニュージーランド、オーストラリア、イギリス。ここは相互に情報の、あるいは収集情報の交換協定を結んでいることもあって、彼らとアメリカの関係を考えると、アメリカが要求すればそれに応じるという体制になっているのだと思います。
この大使の発言では、トランプ大統領は個人的な思惑でこのような対応を取ったとしていますが、これは個人的な対応ではありません。トランプ大統領就任前からアメリカは、このファーウェイについては、内偵と言うとちょっと言葉が強すぎるかもしれないけれど、ずっと調査をしています。その結果、ファーウェイはイランとの不正な取引だけではなく、シリアのアサド政権ともやっていたということが、物的証拠を持って明らかになってしまった。とすると、言ってみれば身柄を拘束することに関して、法的な手続きとしては何ら価値が無い、ということになっているのだと思います。
飯田)証拠は上がっているのだから、あとは駆け引きのなかでどうするか。特に30日までに犯罪人引き渡し条約に基づいて要請する期限がある。だからもう期限が迫って来ているわけですよね。
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中国広東省深圳市にある華為技術(ファーウェイ)本社キャンパス(ゲッティ=共同)=2018年12月7日 写真提供:共同通信社
中国とアメリカの政治的な取引もある
須田)間違いなく要請はするでしょうね。アメリカとカナダとやり取りもあるでしょうけれども、中国とアメリカ、中国とカナダの、その政治的な決着が無いわけではない。身柄引き渡しに関して言うと、それに応じざるを得ないような、具体的な証拠だとか物的証拠があるわけなのです。ただ、それとは別に政治的な決着の仕方がある。それに関して、そこで強引に身柄引き渡しを実現するよりも、もっと大きな成果をアメリカ側が得られると考えるならば、そこは取引に応じる可能性が無いわけではないと思います。
飯田)並行して動いているのが、貿易に関する一定の譲歩を引き出そうという期限が、3月末ぐらいまでですね?
須田)そうですね。加えて関税の問題だけではなくて、いちばん大きな焦点は、知的財産権のところです。これに関して、中国としてはとりあえず決着を先延ばしにして、その間にアメリカの開示を引き出そうというのが中国の基本的な戦略です。そうはさせじと、その期限を設けるのがいまのアメリカの戦略です。その辺りでどこかで妥協すれば、場合によっては孟晩舟容疑者もアメリカへ引き渡しをしなくて済む、ということになるのだろうと思います。ですからそこでアメリカ側が中国から譲歩を引き出すための重要なカード、ツールと考えてもらっても良いと思います。
飯田浩司のOK! Cozy up!
FM93AM1242ニッポン放送 月-金 6:00-8:00