ニッポン放送「飯田浩司のOK! Cozy up!」（2月25日放送）にジャーナリストの須田慎一郎が出演。毎月勤労統計の調査方法で出された部分入れ替え方式への修正報告の背景について解説した。

政治　衆院予算委員会に参考人招致され、答弁を行う毎月勤労統計調査問題の特別監察委員会・樋口美雄委員長＝2019年2月4日　写真提供：産経新聞社

部分入れ替え方式

毎月勤労統計の調査方法の変更をめぐり、厚生労働省が2015年に従来の総入れ替え方式から部分入れ替え方式への修正報告を出したが、その背景について政府は国会答弁などで官邸の圧力を否定していた。しかしこの中間報告の前に、官邸関係者と厚生労働省が連絡を取っていた可能性が浮上するメールが発覚した。これをもって野党は「関与が明白になった」と反発している。

飯田）官邸の圧力がとか、そういった話に持って行きたいのかなという感じもありますが。

須田）「連絡を取り合っていたこと自体がおかしい」というニュアンスが伺えます。ここまでのメディアの報じ方が、「連絡を取り合っていること自体が異常なのだ」ということ一色です。ここも1つの大きな誤解があります。
そういった指摘は、官邸の仕組み、総理への報告や説明の仕組みをよく分かっていないことが考えられるのではないでしょうか。
全省庁のいちばんのヘッドが総理大臣ですが、全省庁で報告すべきこと、説明すべきことをそれぞれの担当者、それぞれの省庁の官僚が総理大臣に直接説明するということはあり得ません。そんなことをやっていたら大変な作業になりますから。

飯田）総理の寝る時間が無くなっちゃいますね。

政治　衆院予算委員会・集中審議で答弁を行う参考人の中江元哉元首相秘書官＝2019年2月20日午後、国会・衆院第1委員室　写真提供：産経新聞社

中江元総理秘書官と姉崎元統計情報部長が会っていたのは日常業務の範疇～メールの関係者が誰なのかを厚労省は説明すべき

須田）そうですね。そのために総理秘書官という存在があって、総理秘書官が所管する問題テーマ、あるいは省庁の問題について、秘書官の責任を持って問い合わせをして、意見調整をし、そしてそれを総理大臣に報告する。あるいは説明が求められたら説明するという作業をやっています。
実は今回の1件もその一環なのです。つまり中江元総理秘書官と姉崎元統計情報部長が会っていたのも、その一環で会っているわけですから、会っていることあるいはやり取りがあること自体はおかしくも何ともないのです。日常業務です。
そのなかで、「こうすべきだ」という指示指摘があったのかどうかが問題になって来る。ですから先ほど読んでいただいた「メールのなかの関係者が誰なのか、そのときのことの経緯も含めてきちんと私は厚生労働省が説明すべき」だと思います。

GDB統計精査のために日銀が1次統計を内閣府を通じて厚労省に要求

須田）なぜこれが問題点として浮上して来たのかと言うと、2018年1月以前の段階、やり方を変えた1月以降ではなく以前の状況だと、日本銀行が各支店でやっている調査結果で把握した経済実態とどうもデータ統計が合わない、齟齬が生じている。これはなぜかと言う問題意識はそれ以前にあったのですね。
もっと言えば、GDP統計でこれは2次データと呼ばれていて、GDPの数値だけを調べることはできない。そこで、いくつかの53あると言われている基幹統計をベースに、計算してそれを組み立ててGDP統計を出すわけです。いまの日本の経済情勢がどうなのかを推し量る意味で、GDP統計はいちばん重要なデータとされるではないですか。それについては各省庁、あるいは日本銀行は注目しているのです。日銀はそれを見て、何かどうもおかしいなと。自分たちが把握している実態とGDP統計のデータは何かおかしい。そうするとGDP統計が正確なのかどうかを検証するにあたっては、元データ、1次データにあたらないとダメだとなった。GDP統計は2次データですから。

厚労省からはゼロ解答だった

須田）1次統計について、そのデータを提供して欲しいということを、窓口になっている内閣府に要求したのですね。内閣府はそれを取りまとめている厚生労働省に要求したのですが、作業が煩雑になってしまい、時間も無いので答えられないということで、実は日銀に対してゼロ回答だったのですよ。
それに困ってしまった日銀は黒田、安倍という関係がありますから、官邸サイドに何とかしてくれないかという要請が行われていて、そういった背景もあってこの中江、姉崎のやり取りが行われたという部分もあるのですよ。そのあたりが、いまのマスコミ報道でズッポリ抜け落ちているわけです。だから異常に感じるのですけれどね。

飯田）結局いままでのデータが間違っていてそれを直すみたいなところだったから、もしあったとしても、ある意味官邸からの圧力は良い方に向いているではないかという話ですよね。

須田）もしあったとしても。だから部分入れ替え方式が経済実態に即しているのか、それとも全入れ替え方式が経済実態に即しているのか。そこを考えて行けば明らかになるのだと思いますけれど。

飯田浩司のOK! Cozy up！
FM93AM1242ニッポン放送　月-金　6:00-8:00