勤労統計問題で政権責任追及より大事なこととは?

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ニッポン放送「須田慎一郎のOK! Cozy up!」(2月18日放送)にジャーナリストの須田慎一郎が出演。毎月勤労統計の問題について、須田慎一郎が独自取材により分かったことを解説した。

勤労統計問題で政権責任追及より大事なこととは?

政治 統計不正・賃金偽装真相究明野党合同院内集会で勢を上げる野党議員ら=2019年1月29日午後、国会内 写真提供:産経新聞社

毎月勤労統計~中江元哉元総理秘書官の発言の意図とは

中江元哉元総理秘書官は15日の衆議院予算委員会で、2015年に厚生労働省へ毎月勤労統計に関しての問題意識を伝えたことについて、政府に都合のいいデータが出るよう不適切な方法を取らせる意図は全く無かったと述べた。これを野党が実態を高く見せようとした圧力だとしているが、ことの真相について須田慎一郎が独自取材で分かったことを解説する。

須田)野党の質問の仕方を見れば、どういう方向に問題を導こうとしているのか見えて来ます。例えば立憲民主党の本多平直氏は、「首相秘書官が問題意識を指摘しただけで、厚労省は実態を高く見せようとプレッシャーに感じる」というある種の決め打ちをしています。マスコミも似たような報道をしているのだけれど、もう少し取材をしっかりして欲しいなと思うし、国会議員も決め打ちではなくて事実関係をもとに問題解決を導くような、建設的な質問をして欲しいと思いますよね。
私が取材して分かった状況ですが、まずこの問題意識を持ったのが日本銀行なのですよ。日本銀行は別名「調査の日銀」と言われていて、日銀の各支店ごとに銀行員が地域経済を徹底的に調査する。例えば地元の企業経営者の面談やヒアリングをすることによって、経済実態の把握に努めているのですね。なぜかと言うと、金融政策に反映させるためなのですよ。だから日銀マンの仕事の8割方はこの調査に掛けられるのです。

日銀の調査と政府統計のギャップが問題意識のきっかけ

須田)ところが、日銀マンたちが調査して出た結果と、政府が発表する統計の数値がどうも大きなギャップ、乖離が生じているということになった。日銀サイドとしてはなぜこんな差が出て来るのか、元データを検証させてもらいたいということで、窓口になっていた内閣府に確認を求めたのですが、内閣府は事実上の門前払いをしたのですよ。だから、日銀は内々に官邸を通じて検証作業を行わせてくれという申し入れを行っていた。これが問題意識のきっかけなのですね。だったら日銀サイドにもそういった検証ができるような、公平公正な統計データの検証作業をやって欲しいという風に申し入れたところ、なかなか応じて貰えなかったのが当時の実状なのです。
例えば、当時は異次元の金融緩和政策という非常にナイーヴな政策をやっていて、その問題についてかなりピリピリしていたのですね。日銀としては、誤った前提状況で金融政策を進めてしまうと大きな問題を残すので、その点に注目していたのは理解できる。ところが、逆に受ける側としてはどうでしょう。やるべき調査をやっていなかった、決められた手法で調査していなかったことを分かっているわけですから、それをオープンにできないのですよ。だから、なかなか公表しようとしない政府に対して不信感が募って行くのは当然で、問題決着を図るためにも善処して欲しいと申し入れを行うのは、首相秘書官だったら当たり前の話だと思いますよ。
何も数字が低いから、アベノミクスの結果を出すために高い数字を出してくれと要望しているわけではない。その点を考えると、この国会質問ないし一部マスコミ報道の意図としては、第二の森友・加計問題のようなところもあるのではないかと思いますね。アベノミクス偽装だと言い出している国会議員の発言を聞いていると、そういうふうにも感じます。

勤労統計問題で政権責任追及より大事なこととは?

【勤労統計不正】幹部職員に対する訓示をする根本匠厚生労働相=2019年1月22日午後、東京都千代田区 写真提供:産経新聞社

なぜ内閣府や厚労省がルール通りの調査を行えなかったかが重要

新行)答弁のなかで中江元総理秘書官は、日銀の名前は出していないですよね?

須田)それは流石に出しにくいですよね。日銀としても、本来あるべき公式ルートを通じても物事が動いて行かないので、ある意味の非公式ルートを使っている状況もありましたからね。その非公式ルートを表に出すのは日銀にとってもあまり宜しくないということで、なかなか言いにくいのだろうと思います。

新行)公式ルートで進まなかった根本には、統計がきちんとできていないから見せられないということがあったのですものね。

須田)だと思います。その辺りはしっかりと取材すれば出て来るのですよ。だからこの問題をきっかけに安倍政権の足を引っ張ろうという、ある種特別な意図が働いているのではないでしょうか。ただ、問題の本質は決してそんなところにあるわけでは無くて、なぜ内閣府あるいは当事者の厚生労働省が、決められた公式の調査を行えなかったのか。ルール通りの調査を行うには何が必要なのか。あるいはその誤った調査結果がいまにどういう影響を及ぼしているのか、それを回復させるためにはどういった作業が必要なのか。本来であればこういったことを国会で議論すべきなのですよ。それを全部すっ飛ばして、あいつが悪い、こいつが悪いと言っても何の意味も無いと思います。いくらこれを追求したところで、結果として安倍政権に何かダメージが出るかと言うと、何も出て来ないと思いますね。

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