ニッポン放送「鈴木哲夫のOK! Cozy up!」(2月21日放送)に国民民主党代表の玉木雄一郎が出演。日本の政治全体を捉えて解説。
毎月勤労統計~官邸関与を巡り元総理秘書官が答弁を修正
中江元哉元総理秘書官は昨日、毎月勤労統計の改善に関する検討会を巡り、2015年9月に議論の内容について報告を受けていたことを大筋で認め、従来の答弁を事実上修正した。中江元総理秘書官は15日の予算委員会で「検討結果は報告を受けた記憶はない」と述べ、総理官邸の関与を否定していた。
鈴木)問題になっているのは、中規模事業所の抽出方式が総入れ替えから部分入れ替えになった、なぜそうなったのかという経緯です。国会では立憲民主党の長妻代表代行がこれを根本厚生労働大臣に質(ただ)しましたが、根本さんは委員以外の関係者から、部分入れ替え方式を検討すべきではないか、つまり部分入れ替え方式にするべきではないかという意見があったと答えた。この関係者というのが、実はこの中江元首相秘書官のことだと思われる、という答弁をしたのですね。ここで、昨日の衆議院予算委員会での中江元哉元総理秘書官の答弁をお聴きください。
中江)今朝がた、厚労省から、官邸経由で姉崎元部長と宮野元総括審議官が2015年9月14日に、同年6月のボーナスの状況等について説明を行った際に、毎勤統計に関する検討会の状況についても触れたと言っている旨の連絡が私にもございました。正直、2015年9月14日に厚生労働省から説明を受けた記憶は、私にはまったくございません。
鈴木)記憶はないけれど、もしかしたら、と曖昧な感じですが、この問題については玉木さんも徹底的に追及されています。
玉木)2月18日に予算委員会で質問しました。
鈴木)これは官邸主導で意図的にこの統計のところを触ったのではないかという追求でしたが、やはりそういう見方をされていますか。
なぜ“総入れ替え”から“部分入れ替え”に変ったのか
玉木)そうですね。一般の方には分かりにくいと思いますが、企業のサンプルを全部入れ替えるのと、半分入れ替えるのと何が違うのだと思うかもしれませんが、3年に1回いままで全部入れ替えていました。何が起こるかと言いますと、3年間も調べ続けると倒産したり、外れて行く企業があるわけです。これを我々は生き残りバイアスと呼んでいますけれども、生き残った企業は社会全体よりも平均的に高めの賃金の会社だけが残って調べることになるので、高めに出るのですね。
それを3年に1回入れ替えると、ある種社会平均が下がってしまうので、どかんと下がるのは困るから半分だけ下げようというものが、部分入れ替えの趣旨です。2015年の有識者会議で、これも中江さんから言われて検討をしていました。そして、2015年の8月には検討した結果、これまでと同じことでやりましょうと一旦決まったのですが、翌月の9月になったらやはり部分入れ替えにした方がいいのではないかと変わるわけです。その間に何があったのかが謎で、私もずっと月曜日に聞いていたら出て来たのが、やはり総理秘書官の厚生労働省に対する働きかけが明らかになって来たということです。
鈴木)玉木さんも実際に霞ヶ関におられたのでわかると思いますが、秘書官が介入したり意見を言ったりと、秘書官が動くということは、霞ヶ関的には、官僚からするとどういう意味合いになって来るのですか?
玉木)私も秘書官的なことをやっていまして、指示を出すようなところにいましたが、総理秘書官から何か来たら最優先でやりますよ。かつ、その方向に沿ったことしか選択肢は有り得ません。
秘書官からの指示は絶対~総理の指示はあったのか?
鈴木)それくらい秘書官の言動は重いわけですか?
玉木)重いです。その後ろに総理がいるということよりも、これは霞ヶ関のある種の論理なのですが、総理秘書官になる人は各省のエースが行くわけです。その人は将来必ず官房長などの人事権者になります。そうすると、総理秘書官からの要請要求に速やかに答えられなければ、彼らは出世が無くなるわけです。逆にそこでちゃんとやって、こいつは速やかに答えるなと思ったら、「可愛い奴」となって将来出世しやすくなるということもあるので、霞ヶ関の役人にとって官邸なり総理秘書官からの指示は、ある種絶対ですね。
鈴木)秘書官の後ろに総理の意思があったのかなかったのか、この辺の問題についてはどう見ていらっしゃいますか?
玉木)ここは加計学園でも問題になりましたが、明示的な指示があったかどうかは、永遠にわからないところはあります。ただ、総理秘書官は優秀な人ほど、親分が何を考えているのか常に想像しながら、それに沿うようにしますし、それが秘書官の仕事です。当然、指示が出たら、少なくともそれは総理の意向には合致しているはずです。違うことを言うのは秘書官として失格ですから。
それで何が意向だったかと言うと、2015年の8月頃は安保法制で揉めていたころでした。その後の9月にアベノミクス新3本の矢というものが出て来て、潮目を変えようと頑張っていた頃で、9月24日に600兆円という目標が出て来るわけです。とにかく賃金がなかなか上がらないのがアベノミクスの弱いところで、あと2014年は官製春闘の1年目だったのです。その結果がまさかマイナスだったら困るわけで、その意味では、すごく頑張ったと思いますね。
与野党でベストな仕組みを考えるべき
鈴木)もう1つ、統計のことも聞きたいのですが、吉田茂さんが戦後総理になって、日本は統計を大事にしなかったからあの悲惨な戦争に行ったのだということを言った。それで自分の内閣府に統計委員会を作って、統計がいかに大事かを吉田茂さんがやったわけです。そういう意味で今回の安倍さんの事後処理の責任、アベノミクスの操作、その問題と統計そのものを政治のなかでもう1度見直すべきだし、体制を含めて、場合によっては内閣府に統計委員会をもう1回置いてもいいのですが、この辺の問題はあると思います。
玉木)そうですね。これを機に構造的な問題を解決する方策につなげて行かなければならないと思います。イギリスでは国家統計局という集中的な組織が第3者的に見ています。ただいちばん問題なのは、統計の職員を各省でどんどん切って来たことも影響があります。どうしても光の当たりにくいところですから、そういう部分を反省して、ベストな統計の仕組みはどういうものかを考えるべきだと思います。
鈴木)国会の仕事であれば自民党も、この部分ではちゃんとやってもらわなければ困る。
玉木)そうです。与党野党関係ありません。最近、EBPM(エビデンス・ベースト・ポリシー・メイキング)、データや情報に基づく政策作りということが言われていますが、データが滅茶苦茶だったら与党野党関係無く良い政治はできませんから。与野党越えて取り組みたいですね。
飯田浩司のOK! Cozy up!
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