イスラエル・ネタニヤフ首相の強みは「過小評価されること」

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ニッポン放送「飯田浩司のOK! Cozy up!」(3月6日放送)に国際政治学者の高橋和夫が出演。4月に総選挙を控えたイスラエルのネタニヤフ首相に収賄や背任疑惑が浮上。その裏側とネタニヤフ首相の強さを解説した。

イスラエル ネタニヤフ首相、検察が収賄などの罪で起訴へ

イスラエルのネタニヤフ首相が、収賄や背任などの罪で検察に起訴される見通しとなった。ネタニヤフ首相は大手通信会社に便宜を図った見返りを求めるなど、複数の汚職に関わったとされており、本人は身の潔白を主張している。

飯田)すでに検察は起訴の手続きを開始しているということですが、これはイスラエルでも初めてのことだそうですね。

高橋)現職の首相がということですね。4月の頭にイスラエルの総選挙ですから、この選挙の時期に起訴するのかな、しないのかなと見ていたら、構わずにやりますということでした。当然選挙には影響が出るのですが、ネタニヤフ首相は「あれはフェイクニュースだ。俺を落とそうとしている左翼の陰謀だ」と、どこかの大統領と同じことを言っています。

飯田)どこかの大統領とネタニヤフ首相は親しいではないですか。特に娘婿の方と。

高橋)そう、トランプ一族とは非常に親しいのです。ネタニヤフ首相にとって頭の痛い問題はこれだけではなくて、ネタニヤフ首相は選挙に絶対勝つとみんなが思っていたら、この問題が出て来た。それともう1つは、まとまらないと思っていた野党側が結束して、ネタニヤフ首相を倒そうという雰囲気が出て来ました。それも困ったことだなと。世論調査を見るとネタニヤフ首相危うし、という雰囲気も出て来たのです。そこにこの汚職疑惑が出た。
それと、最近出て来た問題なのですが、ネタニヤフ首相にたくさんお金を出している有名なお金持ちがいまして、アデルソンさんというアメリカのカジノ王です。トランプさんにもお金を出している人です。マカオ、シンガポール、そして日本にもと言われている会社を持っている方が、ガンだということが分かりました。85~86歳くらいでずっとお元気だと思われていたのですが、お金を出してくれる人が病気になるわ、汚職疑惑は出て来るわ、周りがまとまり始めているわで、急に四面楚歌という感じです。昨日までは俺の世界だ、みたいな顔をしていたのに。

イランでも外相の辞任をめぐり混乱

飯田)中東周りの情勢を考えると、裏ではサウジアラビアとも実は仲がいいと言われていましたが、サウジも例のカショギ記者事件の疑惑が晴れずにいます。

高橋)ネタニヤフさんの選挙民への売りは、「俺のおかげでアラブ諸国との関係も良くなっただろう。俺は外交の人だ、俺にやらせないでどうする、国が危ないぞ」。アラブ諸国ももちろんイスラエルと話をしているのですが、「頼むから大っぴらに言わないで、裏でそっとやりたいから」と言うのです。でもネタニヤフさんには選挙がありますから、「サウジともツーカーでこんなに仲がいいのですよ」という、ツーショットの写真を出して来るのではないか、みたいな雰囲気です。

飯田)敵の敵は味方ではないですけれど、サウジとイスラエルを結びつける存在と言えば、イランですよね。

高橋)イランが怖いということで、両者が結びついているところはあります。

飯田)そのイランは、外相が辞める辞めないでゴタゴタしている。

高橋)ザリフ外相が辞めると言って、世界中に大ニュースとして流れました。でもインスタグラムで辞めると発表していて、普通は辞表をきちんと出すものではないですか。この人もトランプさんみたいなことをするのだなと思いました。

飯田)世界中に流行が。

高橋)そうしたら最高指導者の大統領が「辞めてくれるな」と。辞めるときは俺たちの許可がいるだろう、勝手に辞めてくれるな、というコールがわき起こった。特に保守派の反対派と思われていた人からも「彼が辞めると困る」とみんなが言って、「そうか、やっぱり俺にやって欲しいのだな、言う事を聞けよ」という顔をして戻って来られたのです。

飯田)それで撤回したのですか。志半ばで折れたみたいなイメージがあったのですが、そうではなく。

高橋)これまでも何度も辞表を出していたみたいです。

飯田)辞める辞める癖があるのですか?

高橋)辞めないで頑張っていると言うか、人気があることが分かって「ほら、俺がいないと困るだろう?」とだんだん発言力を増して行くという、不思議な交渉をする人ですね。考えてみれば彼がアメリカを含めて安保理の5大国、ドイツ6ヵ国と交渉をまとめてネゴシエーションを、ネゴりにネゴった人ですから。国内でのネゴりも相当なものです。実際にお話しを聞いてみますと、外務大臣をやっているのが楽しくて仕方がない、みんなの前で話すのが大好きで、辞めたい顔はしていないですね。

ネタニヤフ首相の強みは「過小評価されること」

飯田)むしろ、外務大臣のザリフさんがここで求心力を高めて、もっと上のポジションを狙うこともあるのですか?

高橋)世論調査を見ると大統領よりも人気があるのです。

飯田)ロウハニ大統領よりも人気がある。

高橋)それは素晴らしいことですが、あまり人気のある人は最高指導者にとっては嫌ですよね。だからザリフさんが凄いと思われるのがいいのか悪いのか、彼の将来は分からない。あまり有能だと足を引っ張られるではないですか。イラン社会は日本社会と似たところがありますから、無能なふりをしている方がいいのかもしれません。
そういう意味では、ネタニヤフ首相はみんなから「アイツ頭もあまり良くないし、おっちょこちょいだし」と常に思われて来たのです。最大の強みはいつも過小評価されて、実は力があって足を引っ張ろうとした人の足を引っ張って、ずっと生き延びて来たという人です。彼がすごい人だとか頭のいい人だとか、あいつには勝てないとは誰も思わない。気が付いたら騙されているという感じで生きて来た。ですから、今回もみんなこれで勝てそうだなと思ったら、どこかでネタニヤフさんに足を引っ張り返されるかもしれないですね。結構手ごわい人です。

飯田)もともとこの人は、国民的英雄の弟さんなのですか?

高橋)アフリカ東部ウガンダのエンテベ空港事件というものがありましたよね。1976年にイスラエル国防軍が、エンテベ国際空港で実施した人質救出作戦。あれは全員を助け出して大成功だったのですが、1人だけ指揮官が死亡して、それがネタニヤフ首相のお兄さん・ヨナタン氏だったのです。「俺はヨナタンの弟だ」というのが売りで、彼自身も特殊部隊にいました。だから危ない場面、ハイジャックされた飛行機に突っ込むのはいいのですが、素敵な女性がいると、また突撃してしまったりね。女性遍歴もなかなか。1人でワイドショー番組ができる感じの人です。

飯田)それもあって、「仕方ないな、コイツは」という感じなのですね。

高橋)それでみんなに甘く見られて、でも実はそう甘くない。

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