安田純平さん帰国~中東人質ビジネスの実態

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ニッポン放送「飯田浩司のOK! Cozy up!」(10月26日放送)に外交評論家の宮家邦彦が出演。シリアで拘束されていた安田純平さんの解放について解説した。

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2015年からシリアで拘束されていたが、解放されて帰国を果たしたフリージャーナリストの安田純平さん=2018年10月25日 成田空港 写真提供:産経新聞社

ジャーナリストの安田純平さんが帰国

シリアで3年4ヵ月間拘束され、解放されたジャーナリストの安田純平さんが昨夜、成田空港に到着した。警察は今後、安田さんの健康状態などを見計らった上で、拘束の状況などについて聞き取りをする方針。

妻・安田深結)まず、安田本人から皆様への言葉をお伝えします。「大変なお騒がせと、ご心配をおかけしました。おかげさまで無事、帰国することができました。可能な限りの説明をする責任があると思っています。折を見て対応させていただきます」。長い監禁生活で、かなり体力が落ちて痩せていました。

飯田)安田さんご本人の会見については、体調を考慮した上で後日行うと弁護士が話しているということです。これに関して、様々なご意見をいただいています。“笑顔で閂”さん、いすみ市の方ですが「彼の行動には賛否がありますね。私は否の方です。宮家さんに、中東でテロリストや反体制勢力に拘束された場合、外務省や政府がどういった行動をするのか、今回はどのようなケースだったのか、答えられる範囲で教えてください」という質問です。

宮家)海外で日本国民が被害に遭うということになれば、日本政府が助けるのは当たり前です。それに差別は全くありません。問題は、相手があることだから、できることには限りがあるということです。賛否両論あるというのはその通りで、1部ではヒーロー扱いではないけれど、好意的に報じているところもあるし、一方で自己責任だと言う人もいる。
僕の意見は非常に単純で、どちらでもない。安田さん本人はプロでしょう。こういう形で帰って来るのはジャーナリスト失格だと言う人もいるけれど、そういうことではなくて、ジャーナリストである以上、仕事をして生きて帰って来るのは当たり前です。今回はその仕事が十分にできなかったということで、本人はヒーローだと思っていないと思います。だからこういうメッセージになるのでしょう。
では自己責任なのかというと、ジャーナリストですから、そんなことはわかっていて勝手に行くわけです。僕みたいに「イラクへ行け」と言われて行ったのではなくて、彼は自分でシリアへ行ったのだから、責任を持って行くのは当たり前です。そこを批判しても仕方ありません。
私がいちばん気になるのは、中東には安田さんのようなジャーナリストがいるのです。彼らの仕事はどういうものかと言うと、メジャーなメディアがやらないことです。メジャーなメディアは危険なところに行きません。危ないところに行ってくれる人がいなくてはニュースができません。そういう意味では持ちつ持たれつです。それをどうしているかと言えば、言い方は適切かどうかわからないけれど、アウトソースしているのですよ。下請けなのです。そういう形で情報を取ってメディアは報道する。そしてそれなりの報酬を払うというビジネスだから、メディアは批判もできないしヒーロー扱いもできない。

飯田)表に出ているメディアの下部構造みたいなものですか。

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安田純平(ヤスダジュンペイ)さん ジャーナリスト=(2004年4月撮影) 写真提供:時事通信

中東では人質がビジネスとして成立している

宮家)そうですね。でも、それも全体のメディアの1部ですから、その矜持はあったと思います。問題は、シリアみたいなところへ行けば、最近は廃れて来ましたが、人質ビジネスというものがあるのです。誘拐するグループがいて、それを売買するマーケットがあってバイヤーがいて、交渉屋がいる。全体で産業なのですよ。これで捕まる人が増えて、身代金を払うかどうかは別として金になるわけだから、ビジネスとして栄える。ところが、勝手なことができる時代はそれで良いのだけれど、いまのシリアみたいに政府軍が強くなって、イランとロシアと組んで包囲網ができて来たら、反対派の連中がトルコの国境に近いイドリブというところに封じ込められて行っているのです。

飯田)どんどん追い詰められて。

宮家)このままだと大惨事になっちゃうから、トルコもいろいろ考えて非武装地帯を作りましょうということになって、「非武装地帯へ来れば出られるよ。その代わり武装解除だよ」というディールが起きていた。安田さんには失礼だけれど、いままで人質というのは商品だったのです。行動の自由があるときは宝物ですよね。ところが、行動の自由がなくなってくるとお荷物になるのです。お荷物になったら売るしかないですよね。そういうチャンスがたまたま巡って来たのだろうと思います。よく3年頑張ったとは思うのだけれど、これがイスラム国相手だったら、もしかしたらもっと悲劇だったかもしれません。でも、イスラム国ではなくヌスラ戦線、アルカイダ系ですから。とは言え、必ずしも信念のある連中じゃないから、金になるかどうかですよね。だからラッキーだったのだと私は思います。冷たい言い方かもしれないけれど、これが中東でいま起きている現実ですからね。それを安田さんがわからないで行ったはずはないので、ご本人がいちばんよくわかっているはずです。

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