ニッポン放送「飯田浩司のOK! Cozy up!」(5月1日放送)にジャーナリストの佐々木俊尚が出演。昨日の前天皇陛下による最後のお言葉を受けて、令和の時代を実り多き時代にするためには平成という時代をよく精査し、改めるところは改め、普通の人が普通に暮らせる世の中を取り戻さなければいけないと言及した。
退位礼正殿の儀、上皇となられた前天皇陛下が最後のお言葉
上皇となられた前天皇陛下は昨日、退位礼正殿の儀に臨まれ、天皇として最後のお言葉を述べられました。今日5月1日午前0時をもって元号は平成から令和へ変わり、前天皇陛下は上皇となられ、新しい天皇陛下が即位されています。
飯田)では昨日、午後5時から皇居宮殿松の間で行われた退位礼正殿の儀、改めて前天皇陛下が述べられた最後のお言葉をお聞きいただきましょう。
『こんにちをもち、天皇としての務めを終えることになりました。只今、国民を代表して安倍内閣総理大臣の述べられた言葉に深く謝意を表します。即位から30年、これまでの天皇としての務めを国民への深い信頼と敬愛を持って行いえたのは幸せな事でした。象徴としてのわたくしを受け入れ、支えてくれた国民に心から感謝します。明日からは始まる新しい令和の時代が平和で実り多くあることを皇后とともに心から願い、ここに我が国と世界のひとびとの安寧と幸せを祈ります』
飯田)昨日のお言葉をノーカットでお聞きいただきました。昨日のメディアは終日平成を振り返っていました。
佐々木)平成のこの30年は何だったのか、我々はきちんと精査する必要があって、戦争がないことはいいことでした。でも経済的にはかなり疲弊してしまいました。私の専門分野はテクノロジーですが、家電エレクトロニクスが完全に敗戦してしまって、日本で残っている主要産業の中で大きいのは自動車だけになっている。その自動車でさえもこれから自動運転だEVだっていう中、日本はこれからどうやって舵取りしていくのか。
あともうひとつ政治です。こんなに政治の時代がもう一回やって来るとは思わなかった。平成が始まった頃はまだバブルだったので、政治なんてみんな興味ないよねっていうムードでした。
飯田)経済一流、政治三流なんて言われていました
佐々木)マスコミ四流なんて言葉もありました。それが今や政治闘争はSNSですごい勢いです。こんな時代になるとは思わなかった。盛んに反安倍と安倍擁護派でうわーと戦っている状態、これが令和の時代にはどうなっていくのか考えなければいけない。
格差をどう変えるかが課題
佐々木)もうひとつは格差の問題。日本は特別にすごい金持ちがいないからアメリカとは状況が違うんですけど、一方で底が抜けている。中流は普通にいるんだけど、下の方の貧しいひとがどんどん増えている。その状況をどう変えるのか。
いろんな問題が山積みになってはいますが、そう言いながら、今のヨーロッパやアメリカと比べると、状況はまだましです。そう思いませんか?そんなにひどいポピュリズム政党が現れているわけでもなければ、ものすごい極右化する、極左化するかという状況でもありません。取り敢えず穏やかな形で令和を迎えられているというのは、これからの世界で日本はロールモデルにならなければいけない時代が来てるんじゃないでしょうか。
飯田)各国で国民というか、国民国家としてどう統合していこうかっていうのが、ある意味、上の方のひとたちはグローバリズムの中で儲けちゃてるから国なんか必要ねぇみたいなことになっていて、そこも含めてどう統合していくか、そこのジレンマですよね。
佐々木)平成のひとつの象徴として、古い会社の共同体みたいなものがどんどん衰退して、終身雇用がなくなって、寄る辺なき人が増えていきました。そこで起きたことは何かというと、これからは個人の時代だと、僕も散々そう言っていたんですけど、でもそればかりだと、弱肉強食になっちゃうわけです。
そうすると弱肉強食の中で戦えない人たち、普通の人たちはどんどん落ちこぼれていくっていう状況が起きる。戦えないひとはオンラインサロンに入れだとか自己啓発本読んでこのジャンルで戦えとか、靴磨けとかトイレ掃除しろとかいろいろ言われている。でもそんなもので生き延びられるわけがない。
だから個人がジャングルで生き抜けみたいな話ではなくて、もう1回みんなで協力しあって生きていけるような、普通の人でも普通に暮らせるような時代をどうやって作るかってことの方が大事なんじゃないか。そういうモデルを作り直す時代なのだと思います。
コストカットばかりで投資ができず未来が作れなかった
飯田)今日(5月1日)の朝日新聞のオピニオンのところに、「えらいてんちょう」さん(経営コンサルタント、YouTuber、平成生まれ)が、まさにそれを仰っています。
内容としては、「平成は生きづらい時代だった。世界に一つだけの花って曲があって、オンリーワンがもてはやされたけど、一方で何かのオンリーワンにならなきゃいけない。一生懸命に自己啓発本を読んでやってきたけれども、それって漠然とした目標だから、どこに達成感があるのかも分からず、本当に苦しかった。そうじゃなくて個々で戦うのではない、小さなコミュニティであっても、そこで花を咲かせることを考えよう」ということでした。
佐々木)結局、自己啓発で生き抜けとか勝ち抜けとか言いながらやっていることは情報詳細を売っているだけで、メルマガ出したりブログを書いたりする程度。だいたいそうじゃない。お金を作る形を作れるかどうかが大事です。
飯田)そういう小さなコミュニティの中でということを考えると、今の東京一極集中みたいなことを昭和から平成にかけて言われてきたことが逆回転して、まさに地域の時代になっていかなければ本当はいけない。
佐々木)僕は昭和の終わりに新聞記者になりました。あの時に言われたのは、社内で特ダネ競争をやっていると、先輩記者に手柄を取られたりするわけです。するとほかの部署の親しい上司がやってきて、お前の仕事は見ているひとはちゃんと見ているからと励ましてくれたものです。終身雇用の時代が良かったのは、黙々と仕事をしていても、見てくれているひとは見てくれているところがありました。でも今は黙々と仕事をしていると誰からも見向きもされない。目立つ奴だけ生き残る。それは良くない。終身雇用に戻さなくていいんだけど、ちゃんと見てくれているひとがいるという、仲間がいる感じは取り戻さなきゃいけないんじゃないかと思います。
飯田)コストカット、コストカットで来たこの平成の時代、黙々とやってきたひとに対してはコストばっかりかかるなって対応になっていた時代かもしれません。
佐々木)そうなんですよ、だから平成の終わりにゴーン逮捕なんて象徴的な話です。あのひとは日産という潰れかけた会社にやってきて、コストカットで成功しました。確かにバブルの時代にはタクシー券使い放題のような余計なコストはたくさんありました。それを一旦やめて、無駄は省きましょうと呼びかけた。そこまではよかったのですが、省きまくった結果何も残っていないのが今の日本です。ここからもう1回、コストカットだとか省くことではなくて、何を作っていくのかを考えなければいけない。その時代の変化にゴーンさんは対応できなかったわけです。
飯田)まさにそれで企業はものすごい内部留保でお金を貯め込み、家計にもお金がある。でも金を使う主体がないから政府がどんどんお金を出すというのが平成だったような気がします。
佐々木)だから今の地方では、地銀破綻とよく言われています。おじいさんはお金を山ほど持っているんです。でもそのお金をどこにも投資・融資する先がないので、途方に暮れているのが今の地方銀行の問題です。そしてそれがまさに今の日本の象徴です。対外資産もいっぱいあってお金は山ほどあるんだけど、新しいことをやるひとにちゃんとお金を出す仕組みがないし、みんなで助け合う仕組みもまだ作られていない。だからここからゼロベースでもう1回やり直すというのが令和の時代ではないかなと思います。
飯田)まさにテック系の話なんかはそれでどんどん新しい分野にお金を流し込まなきゃいけなかったのに、平成の30年間はそこがなかなか出来なかった。
佐々木)古い大きな企業を維持したのは、悪くなかったんですよ。雇用を守るという点では。でも正社員の雇用を守りすぎて、逆に非正規雇用が増えてしまって、今は40%を超えています。古い企業、平均年齢40代後半の会社ではどうしても新しいイノベーションは作りにくいものです。だから雇用はちゃんと守りつつ、新しいものを作ろうとしている若い人にどんどんお金を流し込むといった、両輪をやらなければいけなかった。でも平成の時代は若い世代や新しいことをやるひとへの融資をやらないで、ただ守るところまでで終わってしまったのが、日本の失敗の一つだったんじゃないかなと思います。
飯田)ここから令和に向けて、令和からどう変えていくか。
佐々木)新天皇陛下はほぼ同じ世代なので、すごい親近感があって、そういう意味では我々は50代後半ですけど、ちゃんと次の時代のレールを敷いていく、ローラー役をまだやらなければいけないのかという感じがしています。
飯田)日本もまだまだ新しい才能がいっぱいあるけど、なかなか伸ばしきれないというところが
佐々木)人材はめちゃくちゃ優秀ですよ、しばらく前の調査でスペインとイタリアの大卒と日本の中卒が同じくらいの技能だそうです。
飯田)見ました!
佐々木)人材はすばらしいんだから、やり直そうと思えば、いくらでもやりようはあるはずです。
飯田浩司のOK! Cozy up!
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