北方領土問題~現状は“時効の成立”を止めるための交渉か
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ニッポン放送「飯田浩司のOK! Cozy up!」(5月10日放送)に外交評論家・キヤノングローバル戦略研究所研究主幹の宮家邦彦が出演。日露間の北方領土問題の現状について解説した。
河野外務大臣が、ロシアのラブロフ外相と会談へ
河野外務大臣はロシアを訪問した現地時間5月10日にモスクワでラブロフ外相と会談し、北方領土での共同経済活動の具体化などを協議すると見られている。
飯田)北方領土の問題について、G20までにということが言われていましたが。
宮家)若干止まっていますよね。難しいとは思う。しかしやる価値はあると思います。
飯田)やる価値はある。
宮家)まず対話をして、対外的にはっきり言うかどうかは別にして、ロシアの行為は不法占拠なのですから日本側も文句は言い続けなくてはいけない。なぜかと言うと、不法占拠でこのまま日本が何もしなければ、一種の時効が成立してしまうからです。時効が成立したと思われてしまったら、本当に取られてしまうことにもなりかねません。「貴方がやっていることはおかしい、それをきちんと直してからでないと平和条約は結べない」のだと言い続けることは、意味があると思います。ただし今回は相手が悪いですね、ラブロフさんでしょう。昔グロムイコさんという、長くやった人がいるではないですか。ソ連時代の外務大臣ですね。ソ連時代からロシアという国は、外務大臣を長くやります。5年10年と平気でやるわけです。
飯田)下手したらトップよりも長いですよね。
宮家)それで一貫性がある。ラブロフさんも長いせいからなのか、煮ても焼いても食えない。領土問題は首脳レベルでやらないと、外務大臣のレベルに落とせばロシアにもきちんとした官僚組織があって、しっかり理屈で守っているから河野さんもなかなか苦しいだろうと思います。けれど、やる価値はあるので、言うだけ言って来てくださいという話です。
飯田)これに関しては、平行線であることが前提になってしまうのですか。
宮家)最悪な場合でも、時効を止めることはやらなくてはいけないと思っています。
米露関係が改善されない限りチャンスは遠い
飯田)ロシアは対独戦勝記念日を迎えて、そのパレードを北方領土の古釜布でもやっていたという話が出ていますけれど、やはり実効支配ということですか?
宮家)これは仕方がないですね。昔は戦争で取り返したのですが、いまは領土を取り返すための戦争は違法ですから。もちろん日本はそんなことしません。
飯田)それを交渉でとなると、相当難しい。
宮家)いまの状況でいちばん問題なのは、アメリカとの関係がロシアも中国も悪いということです。ロシアだって本当に問題なのは中国だということは分かっているのです。あれだけ国境が長く人口差もあって、経済力も違うとなれば、本来ロシアにとってはアメリカも嫌だけれど、中国がもっと嫌なわけです。しかし中国とアメリカの関係は悪い、ロシアとアメリカの関係も悪いから、今ロシアと中国は一緒にならざるを得ない。
飯田)敵の敵は味方と。
宮家)戦術的にはね。そういう状況が続くと、なかなか北方領土の問題も含め、日本との関係改善、アメリカとの関係改善を図るためにロシアが新しい政策を取ることは難しい。それが当分続くのかなと思います。中国が本当の安全保障上の問題だということを分かって、しかもそのことを戦略的に判断して政策を変更するというところにロシアが行くには、もう少し時間が掛かるかもしれません。そういう時期がしばらく続くのかな、嫌だなと思っております。
飯田)そうすると米露関係の進展によっては、日本にとってもこの問題に関してチャンスが出て来るということですか?
宮家)そうですね。米露関係が良くなって、「やはり中国がおかしい」ということになったときには状況が変わるのですが、トランプさんもいまロシアとの問題を抱えているでしょう。しかもロシアゲートのことで400ページもも特別検察官の報告書が出てしまって、今度はトランプさんの息子が議会に呼ばれるのです。上院の共和党の一部の議員も賛成していて、追い詰められているので、トランプ政権としてもロシアとの関係改善という状況にはまるでないのです。
飯田浩司のOK! Cozy up!
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