ニッポン放送「飯田浩司のOK! Cozy up!」(6月12日放送)に数量政策学者の高橋洋一が出演。麻生大臣が受け取りを拒否した老後2000万円が必要だとする報告書について、どこが政府のスタンスと異なるのかを解説した。
老後に2000万円必要~麻生大臣が報告書の受け取りを拒否
麻生金融担当大臣)これまでの政府の政策スタンスとも異なっておりますので、担当大臣としては、これを正式な報告書として受け取らない。
95歳まで生きるには、夫婦で2000万円の蓄えが必要だと試算した金融庁金融審議会の報告書について、麻生金融担当大臣は6月11日、審議会側から正式な報告書としては受け取らないとのスタンスを示した。「これまでの政府の政策とスタンスが異なる」と理由を述べている。
飯田)年金や資産をどう作って行くかについては、高橋さんの専門領域ですよね。
「老後に2000万円が必要」という言葉が一人歩きしている
高橋)そうですね、私は2004年の年金改正に関わっています。この報告書も読みましたが、びっくりしたのは、金融庁の官僚はもともと財務省ですよね。これを財務省官僚が書いたのかなと思ったのです。なぜかと言えば、「年金が危ない、だから消費増税が必要だ。金融商品はこういうものがいい」というように、財務省官僚と金融機関の営業パンフレットそのままという感じだったのです。
飯田)コラムの欄に「分散投資がいいですよ、日本株だけではなくアメリカ株も」とか。
高橋)余計な事ですよ。こんな話は金融機関がやるのであって、政府の審議会がやってはいけないレベルです。財務省の方は消費増税と言うし、年金が危ないと言いつつ「この商品がいい」と金融機関の営業をしている。はっきり言ってとても出来の悪い、質の悪いパンフレットです。
飯田)2000万円という言葉が一人歩きしているような形です。2000万円ない人は路頭に迷うのか、という話になっています。
高橋)年金とは、現役世代の所得の半分くらいを出せるように作られた制度です。それで不十分な人は自分で蓄える、それだけの話です。この世代の貯蓄はもっと多くて、平均は2300万円以上あるのですよ。
飯田)いまの高齢者ですね。
高橋)それ以上の生活をしたい人は貯蓄するというだけの話で、それを取り崩しているというものが正しい見方ですよね。でも、年金が危ないということ自体がウソですから。
飯田)ウソ。
高橋)だからこうやって矛盾が出ているのです。政府として違うと言っているのはそういうことです。裏では年金が危ないから消費増税と言って、それに金融機関ものっかり、マスコミもそう書いてしまう。
年金制度が破綻することは考えにくい
高橋)年金とはどういう制度かと言うと、平均年齢よりも早く亡くなった人が払い損になって、その分を長く生きた人に渡しているというだけなのです。こんなにシンプルで単純な制度はないから、破綻するのは難しいのですよ。
長く生きた人の現役時代の年収を、半分くらい見たとする。そうするとどれくらい早く死ぬか分かるから、計算して保険料を取っているだけの制度です。これが破綻するのは本当に難しくて、従来の現役世代の約半分というデータは、どこの国でも同じですよ。これは数学の世界だから、誰がやっても同じような結果しか出ない。もし2004年の年金改正が破綻していると言うのだったら、民主党時代は何をしていたのかという話です。政争の具にしてはいけないような話を実はやっているのです。
とは言え収拾をつけたいから、報告書を受け取らないことにした。でも書いたのは自分のところの職員でしょう? 麻生さんが頼んだからやっているわけで、おかしな話ですよね。
飯田)メールもいただいています。相模原市の“とも”さん、47歳の方。「報告書の受け取り拒否は、何だか現実を直視するのを拒否しているようにも思えます。将来、年金だけで生活できないのは分かり切っているし、諦めています。2000万円貯められる生活ではありません。老後に対しては諦めしかなく、年を取ったらとにかく長生きせず早く死にたいと願うだけです」。
高橋)それはいろいろと誤解があります。私がやったもので、2004年の年金改正の他に、2006年の「ねんきん定期便」があります。どんな人にも必ず配達されて、払った金額とこれからもらえる金額がみんな書いてあります。それをぜひ見て下さい。
飯田)それで少ないと思ったら、いまのうちに備えればいい。
高橋)逆に言うと、払った金額も見て下さい。払った金額ともらう金額はあまり変わらないはずですから。もし年金が足りないのなら、増やすのは簡単です。
例えば現役年収の100%そのままがいいのなら、保険料をいまの何倍かにしてみる。こういうものは簡単な原理です。新聞報道にもいろいろなことが書いてあるけれど、自分のことがいちばん重要です。まずは自分の「ねんきん定期便」を見ること。これは全国民に届くものです。届かなければおかしいし、そこで自分の今後を考えるという仕組みなのです。
まずは「ねんきん定期便」を見ること
飯田)国民年金や厚生年金などいろいろとありますが、どの年金に入っていても「ねんきん定期便」は届くのですか?
高橋)届きます。どれだけ払っていても来るし、もし会社から給料が天引きされているのに払っていないことになれば、誰かが抜いていると分かるのです。だから会社に渡すのではなく、個人に行くようにしました。むしろ個人の方から文句が来ることを期待しているのです。
飯田)「あの給料でこれだけ天引きされているのに、これだけしか払っていない。どこに行ったのだ?」ということになる。
高橋)そういうことはよくあるのです。消えた年金の多くはそういうものだったので、作ったのです。個人で議論せず、平均値で年金の話をしても意味がない。
飯田)これに関してはケースバイケース過ぎる。
高橋)だから自分の金額を知るために、まずは「ねんきん定期便」を見て下さい。そして、来なかったら絶対に社会保険事務所に行って下さい。それは消えた年金になっている可能性が高い。
飯田)企業に勤めていて、例えば自分は厚生年金に入っているつもりだったけれど、実は入っていなかったとか。会社勤めなのに国民年金はおかしいだろう、というケースも。
高橋)だから直接、個人に送ってチェックしてもらう制度なのです。それと一緒に貰える金額も書いてあるから、自分の将来を考えてもらいたいという制度でもあります。
みんな定期便を見ていないのに年金が少ないと言っているので、まずは見てほしい。見ると少ないと思うけれど、よく見ると払った金額も少なかったりしますので。
飯田浩司のOK! Cozy up!
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