韓国への輸出規制強化~日本が「安全保障の問題」と主張する理由
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ニッポン放送「飯田浩司のOK! Cozy up!」(7月3日放送)にジャーナリストの佐々木俊尚が出演。日本が行った韓国への半導体の材料などの輸出規制強化について解説した。
韓国への輸出規制強化~政府は安全保障が理由と説明
世耕経済産業大臣)今回の見直しはこうした不断の見直しの一環でありまして、一部報道にあるような自由貿易体制に逆行するということはまったくありません。WTO違反の指摘もまったく当たらない。
河野外務大臣)WTOのルール内で認められていることしかやりませんので、そもそもWTOの提訴の対象になるとは思っておりません。
韓国に対する半導体の材料などの輸出規制の強化について、世耕経済産業大臣は2日、安全保障を目的に輸出管理の運用を見直すもので、いわゆる対抗措置ではないと話した。また輸出管理体制は不断に見直すとも述べていて、対象商品の拡大を検討することも示唆している。
飯田)昨日(2日)は、閣僚による韓国への輸出規制の強化発言が相次いでいます。菅官房長官も安全保障が理由であると説明していて、政府は足並みを揃えています。
韓国「WTO違反」、日本「安全保障の問題」
佐々木)この話は分かりにくいですよね。貿易はWTOという世界貿易機関があって、WTOでは最恵国待遇というもので、ある国と貿易したら他の国とも同じ条件で仲良くしなければいけないとされています。その理念で行くと、「韓国だけ閉め出すとはけしからん」という韓国側のロジックになります。しかしWTOとはまったく別のキャッチオール規制という、兵器や核兵器などに対する規制があります。大量破壊兵器に使われる可能性がある部品や材料に関しては、経済産業大臣の許可を得なければならないというものです。これは安全保障の話ですよ。ただし、日本からするとEUやアメリカのように、相手国が大量破壊兵器に使わないだろうということで、輸出しても大丈夫な国へはいちいち許可がいりません。そういう国のリストを作っていて、それをホワイト国と言います。その国は白だから大丈夫ということです。
飯田)潔白だと。
佐々木)潔白である。だから、「大量破壊兵器に使われるような素材部品でも、許可申請なしに輸出します」というものです。そのホワイト国リストに韓国は入っていたのですが、日本側のロジックとしては、「今回はいろいろと安全保障で対立があった。しかも韓国が中国側に寄っているし、瀬取りなど北朝鮮に物資が流出しているという噂もある。そうすると安全保障的には、韓国に大量破壊兵器や核兵器の材料を輸出したら、それが北朝鮮に流れてしまう可能性があることも含めて、安全保障上の懸念があるのでホワイト国規制から外します」ということです。
韓国、日本のどちらに説得力があるのか
佐々木)これは「あくまでも安全保障の話なので、WTOの最恵国待遇とは関係ありません」というものが日本のロジックです。韓国側は、「それはWTOの話だろう」と言っていて、どちらの物語に説得力があるかということです。日本側のロジックが世界に受け入れられれば、日本が正しいとなりますし、韓国側のロジックが受け入れられれば日本が経済制裁をしているとなります。そこの勝負です。日本政府としては安全保障と言い続けるしかない、これをやれば説得できるのではないかということですよね。
飯田)安全保障を使う、安全保障を大義名分にするのは、いろいろな国でもやっていることなのですか?
ファーウェイをめぐる米中の争いと同じ状況
佐々木)最近だと、中国のファーウェイがそうですよね。明らかに貿易戦争で、次世代通信規格である5Gをめぐってのアメリカと中国の争いなのですが、それで貿易制裁をするとWTO違反になってしまう。そのためファーウェイに関しては、通信ルーターなどから中国に情報が流れている、だから安全保障上の懸念でファーウェイを追い出すしかないというロジックをアメリカは言っています。古いところでは、日米貿易摩擦でもかつてIBM産業スパイ事件などがありました。
飯田)東芝COCOM事件もありましたね。
佐々木)あれも本来は貿易摩擦ですが、安全保障のロジックを入れることで、アメリカが日本を叩いたものです。安全保障を持ち出すことは、昔からよく使われる手法ではあります。
飯田浩司のOK! Cozy up!
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