トランプ氏と金正恩委員長の電撃会談が日本に与える影響
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ニッポン放送「飯田浩司のOK! Cozy up!」(7月1日放送)にジャーナリストの須田慎一郎が出演。トランプ大統領と金正恩委員長の板門店での電撃会談について解説した。
トランプ氏と金正恩委員長、板門店で電撃会談
6月30日、アメリカのトランプ大統領は板門店の非武装地帯(DMZ)を訪れ、北朝鮮の金正恩朝鮮労働党委員長と会談を行った。6月29日にトランプ氏がツイッターで呼びかけ、それに金正恩氏が答える形で実現したとされている。
飯田)突然会うことになったのか、根回しがあったのか、両者の思惑はどういうところにあるのか。ジャーナリストで北朝鮮情報専門サイト「Daily NK Japan」編集長の高英起さんに電話を繋げます。高さん、これは本当に突然だったのですか? それとも事前の準備はあったのでしょうか?
高)アメリカは事前にビーガン氏が訪問するなどして、準備があったと思います。ただ最終的に金正恩氏が決断したのが「トランプ氏のツイッターだ」ということは、おそらく本当だと思います。
飯田)ツイッターを見て驚いたと。逆に僕らは、金正恩委員長がツイッターを見ていたことに驚いたのですが。
高)トランプ氏はツイッターを通じていろいろな意見表明をしていますので、金正恩氏がというより、北朝鮮は常にトランプ氏のツイッターを見ているでしょう。
政府同士は厳しいが、トランプ氏と金正恩氏の関係は悪くない
飯田)金正恩氏としても、次の会談を是が非でもやりたい、という思いはどこかにあったわけですか?
高)2人ともあったと思います。ハノイでは決別したと言われていますが、この2人の関係は決して悪くはありません。つい先日もお互いに親書を交換していますし、トランプ氏も金正恩氏をことさら批判しないことを考えると、アメリカと北朝鮮は相変わらず厳しいけれども、トランプ氏と金正恩氏の関係はそんなに悪くはないということですね。
飯田)トップ同士と政府同士は違う、ということですね。
高)そうですね。トランプ氏はそもそも国内で、いろいろ問題を抱えています。ただし、金正恩氏は独裁者でやりたい放題できるのですが。
飯田)スタジオには須田慎一郎さんもいらっしゃいます。
トランプ氏も金氏にとっても、会うことが最大の成果
須田)外交巧者として知られる北朝鮮が、今回トランプ氏の突然の要請に応えました。いま北朝鮮の外交スタイルはどういう状況になっているのでしょうか?
高)前提として、トップ会談を好む。トップと会談して事態を打開することと、そういう機会があれば世論を気にしなくていいのですから、フットワーク軽く行けるところがあります。彼らはよく速度戦という言い方もしますが、行動は早いですよね。
飯田)今回の随行員のなかに、ハノイのときにいた人がいなかったのではないかと言われ、外交指導権が外交部に変わったということが指摘されていますが、これはどうですか?
高)でも、見る限りほとんどオールスターで来ていたと思います。基本的に北朝鮮の外交は労働党の外交部がやりますから、それに関して主導権が変わることはまったくないと思います。仮に進め方が変わったとしても、北朝鮮の外交を決めるのはすべて金正恩氏ですから、あまり意味がありません。
飯田)いままで通り、段階的な制裁緩和と非核化を求めて行くことに変わりない、ということですか?
高)北朝鮮というか、アメリカは求めていますけれども、昨日(6月30日)はそんな話は出ていないですよ。
飯田)なるほど。その辺もこれから2~3週間の間、チームを組んでやることになって来るのですね。
高)それをやっても、果たしてどこまで進むかは疑問だと思います。トランプ氏も金正恩氏も言っているのは、とにかく会うことが最大の成果だと。彼ら2人は本気でそう思っていますから。
飯田)わかりました。高さん、どうもありがとうございました。Daily NK Japan編集長の高英起さんにお話を伺いました。続いて、安全保障上にどのような影響があるのかということも含めて、慶応義塾大学教授の細谷雄一さんにも伺います。細谷さん、よろしくお願いします。今回の首脳会談ですけれども、どうご覧になりましたか?
トランプ氏にとってはあくまで国内向けのアピール
細谷)実質的な米朝間での協議の準備は進んでいないと思いますから、あくまでも国内向けのアピールというところが大きいと思います。
飯田)一部にはイランとの緊張関係も抱えていて、二正面はできないから、こちらは緩和したのではないかという指摘もありますが。
細谷)そうですね。むしろイランのときに、大統領補佐官のジョン・ボルトン氏が強硬な態度を取って、戦争寸前まで行ったとトランプ大統領自らが言っていました。強硬路線のボルトン補佐官に対して、いま北朝鮮は深刻な軍事攻撃に対する懸念が一部で出ているのかもしれないですよね。
飯田)北朝鮮が短距離ミサイルの発射実験を、ハノイの2月以降にやっています。しかしトランプ大統領は会談後、記者団に対してそのことをあまり気にしないと述べていますが、この辺は東アジア全体のパワーバランスを変えたりしますか?
細谷)トランプ大統領はアメリカファーストの政策ですから、同盟国に対しては厳しい態度を取っています。そういった意味では、同盟国の安全と自国の安全を一体として見ずに、あくまでもアメリカ国民の安全を守る為に行動する。そういうパフォーマンスが、明らかに歴代の大統領との違いだと思います。
飯田)そのロジックで行くと、日米安全保障条約が不公平だとトランプさんが指摘したことにも通じる部分があると思いますが、最終的にはアジアからも引こうとしているのでしょうか?
米朝間の国交正常化となれば日米同盟は機能が半減する可能性
細谷)正にその点がポイントだとは思いますが、今回の重要なポイントはホワイトハウス、あくまでもトランプ大統領らが中心となって動いたことだと思います。これは明らかにペンタゴンや国防省の線とは違うところがあるのです。トランプ大統領は北朝鮮の緊張を緩和することによって、もはや米韓同盟や日米同盟は必要ないという発想がおそらくあるのだろうと思います。もちろん米韓同盟と日米同盟は大きな違いとして、日米同盟はアジア太平洋の地域の安全にも重要な意味を持っていますから、この2つは大きく違う同盟なのですが、トランプ大統領は同盟一般に対する不信感が強いと思います。
飯田)そうすると我が国としても、変えて行かなければならない部分が出て来ますよね。
細谷)そうですね。北朝鮮の脅威がないということをトランプ大統領が言った場合には、まず米韓同盟が必要なくなります。米韓同盟はあくまでも北朝鮮に対する同盟で、それ以外の同盟ではないので、これが大幅に削減されます。朝鮮半島の脅威が低下して韓国を防衛する必要性が減れば、日米同盟の機能の半分は必要なくなります。そうすると大幅な在日米軍の撤退と日米同盟の機能の弱体化が、当然ながら視野に入って来る可能性があります。
飯田)そこをどう担保して守って行くかと。細谷さん、どうもありがとうございました。国際政治学者、細谷雄一さんとお繋ぎしました。
長期的な視野で考えると、日本をどう守って行くかも含めて考えなくてはなりません。
須田)最終的には米朝の間で国交正常化ということになるのですが、そこに行くまでにいくつもの山がある。そのなかで日本がどのように対応して行くのか。日本は拉致問題がありますから、そのスケジュール感のなかに拉致問題をどう埋め込むかということだと思います。
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