西武・ニール投手 優勝と共に叶えたいもう1つの夢
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話題のアスリートの隠された物語を探る「スポーツアナザーストーリー」。今回は9月18日のオリックス戦で、チーム外国人タイ記録となる10連勝を飾った、西武のザック・ニール投手にまつわるエピソードを取り上げる。
「あざーす!」「ゲンダ・トノサキ(源田・外崎)、タマラン!!」
18日、メットライフドームで行われた西武-オリックス戦。お立ち台に上がり、日本語で叫んだのは、先発で11勝目を挙げた西武・ニールでした。
ソフトバンクとの熾烈な優勝争いは、いよいよゴールも間近。この日から、本拠地メットライフドームで3連戦→移動日なしで敵地4連戦と、勝負の7連戦がスタートしましたが、その先陣を任されたニール。
得意のツーシーム、チェンジアップを駆使してオリックス打線を翻弄。自己最長の8イニングを投げ、5安打無失点という素晴らしいピッチングを披露しました。
15個の内野ゴロを打たせましたが、うち併殺が2つあり、24のアウトのうち実に17がゴロによるアウト。典型的な「グラウンドボーラー」(=ゴロを打たせて取る投手)ニールの真骨頂とも言えるゲームでした。
打線も、外崎の25号ソロなどでニールを援護し、西武が5-0で快勝。2位・ソフトバンクが楽天に敗れたため、西武のマジックは2つ減って「6」に。残り7試合で「6」ですから、まだまだ油断はできませんが、リーグ連覇に向けて大きな勝利となりました。
これで、ニールの今季(2019年)成績は11勝1敗。6月20日の中日戦で2勝目を挙げて以来、負けなしの10連勝です。西武の外国人では、「オリエンタル・エクスプレス」の異名を取った郭泰源に並ぶ、球団タイ記録となりました。
圧倒的な「獅子おどし打線」の破壊力で、ここまで勝ち星を伸ばして来た西武。ただしチーム防御率はリーグワーストの4.36。昨年(2018年)のエース・菊池雄星はメジャーへ移籍し、昨年16勝で最多勝を獲った多和田真三郎、今季10勝を挙げた高橋光成も戦線離脱。
投手陣のやりくりに苦労している辻監督にとってニールは、まさに救世主のような存在で、「毎日投げてもらいたい」と冗談を言うのもよくわかります。
来日1年目で10連勝も立派な記録ですが、連勝が始まった6月20日以降、勝敗の付かなかった2試合も含め、先発した12試合はすべて責任回数の5回以上を投げ、3失点以内に収めているニール。そしてチームは12戦全勝。つまり「ニールが先発すれば、必ず勝つ」のです。西武の驚異的な巻き返しに、ニールの活躍が大きく寄与したことは言うまでもありません。
「自分が勝てるのは、打線のおかげ、対戦相手じゃなくてよかった(笑)」
とニール自身が言うとおり、「獅子おどし打線」の強力なバックアップもニールにとっては心強いですが、もう1つ見逃せないのが「守備」。
特に、ヒーローインタビューでも「タマラン!」と口にした外崎・源田の二遊間コンビには、絶大な信頼を置いています。ゴロを打たせて取るニールにとって、内野守備は生命線。守備範囲の広い2人が二遊間を守ってくれているので、安心してゴロを打たせることができ、それが好結果につながっているのです。
とは言え、来日直後は苦しみました。2月に左太もも裏を痛め、その影響で4月までは1勝1敗、防御率5・95と結果を残せず、2軍に降格。「日本で成功したい」という思いが強すぎるあまり、気持ちに体が追い付いていなかったのです。
このファーム調整は、ニールにとって心身の折り合いを付けるいい機会になりました。6月、交流戦中に1軍へ再昇格すると破竹の10連勝。いまやチームの大黒柱です。
今後のさらなる記録更新はもちろんですが、どうしても叶えたい夢がもう2つあります。
まずは「胴上げに参加すること」。実は米国時代、1度も優勝経験がないのです。「(胴上げを)経験するのが楽しみ」と語るニール。
そして、もう1つの夢は……実は、愛妻・キアナ夫人のお父さん(義父)は、メジャー通算142勝の元投手、ボビー・ウイット氏。よくアドバイスをもらっているそうです。
そしてキアナ夫人の弟(義弟)のボビー・ウイット・ジュニア(19)は、今年6月のMLBドラフトで、ロイヤルズから1巡目指名(全体2位)されているスター候補生。「いつか、義弟と対決したい」というのが、ニールのもう1つの夢です。
その前に、まずはリーグ優勝。ニールの次回登板は7連戦の最後となるロッテ戦の予定ですが、その日が胴上げ試合になる可能性も。球団新記録の11連勝と優勝、Wで歓喜を味わえるのか、ニールのピッチングに注目です。