“新生”東京モーターショー 来場者の声から改めて感じたこと
公開: 更新:
「報道部畑中デスクの独り言」(第158回)
ニッポン放送報道部畑中デスクのニュースコラム。今回は、11月4日に開催を終えた「東京モーターショー2019」について---
自動車の祭典、東京モーターショーが11月4日に終わりました。
前回の小欄でもお伝えしたように、私は報道公開日に取材したのですが、会場が広く、展示内容も多岐にわたったため、1日では正直回り切れず、一般公開日にも足を運びました。そこで得た印象は、報道公開日のそれとはずいぶん違ったものでした。
11月3日午前9時半、東京ビッグサイト(有明会場)に到着すると、入口は午前10時の開場を待つ人であふれていました。ざっと2000人ぐらいはいたのではないでしょうか。そしてなかに入っても、なかなか列が動きません。改めて自動車への関心は健在と感じました。
今回のモーターショーは新しい時代の空気を感じる一方、やや地味な印象で全体的に「ごった煮」感が強く、正直心配していました。連休中ということもありましたが、そうした先入観がいい意味で裏切られた感じです。
また、場所を変えると違った景色が見えて来ました。有明会場から「MEGA WEB」などがある青海会場につながる「OPEN ROAD」を歩くと、これまたすごいにぎわい。
ここでは歩行領域EVと呼ばれる電動車両が体験でき、歩いている人のわきのゾーンを、スーッと車両に乗った人たちが通り抜けて行きます。気持ちよさそうです。
青海会場の受付では、2時間待ちの掲示が出ていました。ところどころにグルメゾーンのテントもあり、早い昼食をほおばる家族連れも目立ちました。ベンチに座ったり、あらかじめビニールシートを用意している人たちもいました。
「20年前に来たことがある。晴海のころ、こんなに並んでいたかな? 当時は福祉カーが注目されていた。新しいこと、便利なことが20年経つとこうなって行くんだなと。また20年経つとどうなるのか」
男の子2人を子どもに持つお母さんは、目を丸くしていました。その他にもこんな声が……。
「環境省のセルロースナノファイバーのクルマが面白いと思った。運転はあまり好きではないが……」
「未来的な展示があって楽しい。いまは運転を楽しんでいるが、将来の老後を考えると、(自動運転などの次世代車両は)普及する方がいい」
「(部品メーカーの)自動車の中身がわかる機会はなかなかない」
「今回が初めて。1度来てみたいと思った。キックボードに乗るために朝早くから並んだ」
「愛知県から新幹線で来た。モーターショーは初めて。人の多さにびっくり」
このように初めて東京モーターショーに来場した人もいましたし、クルマそのものにはさほど興味のない人が多かったのも意外でした。
「クルマ好き」が本当に減ったのかなと、いささか寂しい気分になりましたが、見方を変えれば、クルマに興味のない人もモーターショーに足を運んだということになります。
日本自動車工業会の発表では総来場者数は延べ130万9000人。豊田章男会長(トヨタ自動車社長)が目標として掲げてきた100万人を大きく上回りました。100万人超えは2007年、12年前の第40回以来です。
今回は無料のゾーンもあり、そうした人も来場者としてカウントするのが適切かどうか……そうしたものも含め、成否の判断は主催者の日本自動車工業会自身がされるのでしょうが、主催者の意図がクルマに関心のない人への訴求にあるとすれば、一定の成果があったのではないかと思います。
私のような旧い人間は、ついつい操る楽しさという面でクルマというものを見てしまうのですが、こうした見方は時代にそぐわなくなっているのかもしれません。
前回の小欄でも申し上げた通り、それはそれで寂しいことではあるのですが、来場者の声を聴いてみると、楽しみ方はさまざま、そしてクルマに対する関わり方はまったく変わって来ている、そんなことを改めて感じる東京モーターショーでした。
最後に、こんな男子中学生の声です。
「スーパーカーを見たくて来た。免許を持ったら乗りたいクルマは“低公害車”」
次世代は「エコ」であるのが当たり前の時代になることは疑いありません。ただ、カッコよさ、思わず欲しいと思わせるオーラはいつの時代も不変だと思います。そんな期待に、自動車産業に携わる方々がどう応えるか……新たな課題も見えて来ました。(了)