この年末年始、日本は北朝鮮の行動に最大級の警戒が必要

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ニッポン放送「ザ・フォーカス」(12月10日放送)に中央大学法科大学院教授・弁護士の野村修也が出演。北朝鮮の弾道ミサイル問題について解説した。

この年末年始、日本は北朝鮮の行動に最大級の警戒が必要

29日付の北朝鮮の労働新聞に掲載された「超大型多連装ロケット砲」の試射(コリアメディア提供・共同)=2019年11月29日 写真提供:共同通信社

国連安保理、北朝鮮対応をめぐり会合を開催へ

国連安全保障理事会は北朝鮮による相次ぐ弾道ミサイル発射を受け、11日午後(日本時間12日午前)、緊急の公開会合を開くことを決定した。会合では北朝鮮による一連のミサイル発射や挑発拡大の可能性に関して議論を交わすものと見られる。

森田耕次解説委員)北朝鮮の国防科学院の報道官は8日、「北西部東倉里(トンチャンリ)の西海(ソヘ)衛星発射場で7日の午後に非常に重大な実験を行い、成功した」と発表しました。実験内容はわかっていませんが、エンジン燃焼実験などICBM(大陸間弾道ミサイル)発射再開に向けた動きの可能性があります。北朝鮮軍出身の金英哲(キム・ヨンチョル)朝鮮労働党副委員長は談話を発表し、「もうろくした老いぼれと呼ばざるを得ない日がまた来るかもしれない」とトランプ大統領のことを激しい言葉で非難しました。「年末までに打開策を示さなければ、アメリカの安全への脅威は増大し続ける」と警告しています。また、党で外交を統括する李洙墉(リ・スヨン)朝鮮労働党副委員長も談話を発表し、「金正恩委員長が年末に最終判断と決心を下す」と述べています。これに対してトランプ大統領はツイッターで、金正恩委員長に対し「敵対的行動を取れば、すべてを失う」と強くけん制している状況のなか、国連安保理が日本時間の12日午前に開かれるという流れになっています。

野村)緊張が高まっている感じがしますよね。金委員長が日本に対しても厳しい言い方をしていますし、トランプ大統領についてもかなり口汚い言い方をしています。この背景には、年内にアメリカの方から経済制裁を解くという譲歩を引き出したいというのが最大の目的だと思います。

この年末年始、日本は北朝鮮の行動に最大級の警戒が必要

南北軍事境界線がある板門店で握手するトランプ米大統領(左)と北朝鮮の金正恩朝鮮労働党委員長=2019年6月30日(ロイター=共同) 写真提供:共同通信社

大統領選を控えるトランプに揺さぶりをかける北朝鮮の戦術

森田)トランプ大統領が“外交成果”と誇ってきたICBMの発射実験中止を撤回したらどうなるかということをちらつかせながら、来年の大統領選もにらんでの挑発ということなのでしょうか。

野村)トランプ大統領としては、これまでのアメリカ大統領では成し得なかった2国間の対話をしたわけですよね。その成果がICBMを実験としてでも飛ばしていないということです。これを崩されてしまうと来年のトランプ大統領の選挙にも影響してきますから、揺さぶりをかけて自分たちに有利な交渉材料にしようというのが北朝鮮側の思惑です。

森田)今月の安保理の議長国はアメリカということですから、アメリカが自ら国連安保理での会合開催を提案したということで、これまで北朝鮮非難に一線を画してきたのですが、姿勢を変えてきたという動きに取れますね。

野村)北朝鮮は5月以降13回もミサイルを飛ばしているわけですね。これはいずれも国連決議に違反するようなミサイルのタイプではないかと日本や韓国は見ていたわけですよね。そのような主張もしてきたわけです。しかし、アメリカは弾道ミサイルとは認定しても、短・中距離のものだと一貫して無視してきました。それが今回国連の安保理を開くということになれば、制裁の強化や決議を行うことになりますから、北朝鮮は立場が悪くなる可能性があると。ただ、北朝鮮は何か重大なことをするときに、(金委員長が)白馬に乗って山を登るわけですが、このあいだ登っているので、日本に向けてもかなりプレッシャーをかけてくるのではないかと思います。

森田)日本の安全保障体制はますます悪化する可能性があるわけですよね。

この年末年始、日本は北朝鮮の行動に最大級の警戒が必要

2日午前、北朝鮮の国防科学院が東部の元山湾で行った新型の潜水艦発射弾道ミサイル(SLBM)「北極星3」の試射=2019年10月3日 写真提供:時事通信

アメリカの前に日本へ揺さぶりをかけてくる

野村)そうなのです。トランプ大統領はアメリカに届かなければいいと言っているのですが、いまの北朝鮮の兵力を考えると、完全に日本は射程内に入っているわけですよね。いつでも日本に攻撃できる状況になっているわけです。それを見せつけるために、年内あたりに場合によっては日本列島を飛び越えるような形でミサイルが飛んでくる可能性があるわけです。

森田)危険性は十分にありますね。

野村)思い出してみると、「Jアラート」が鳴っていた時期がありましたよね。私たちがいままで聞いたこともないような(警報音で)、非常事態だという雰囲気になりました。あれがまた来たときに日本人が思う印象もあると思いますが、いちばん懸念しているのは東京オリンピックの最中にそれが飛ばされたときに、日本のみんなが非常に努力して準備してきたイベントに味噌をつけることにもなりかねません。ある意味では日本は“人質”に取られてしまう危険性があるわけです。かと言って、日本の立場は明確で、とにかく核兵器をなくしてもらわなければ日本の安全保障は守れません。それが譲れない線なのです。更には拉致問題もありますから、柔軟な対応はなかなかできません。ただ、アメリカを揺さぶるためには日本の力を使わなければいけないという北朝鮮の考え方からすると、当面は日本を揺さぶってくることを警戒しなければいけません。

森田)すぐにICBM発射ということはないでしょうが、日本を揺さぶる動きは年末や年明けにかけて十分にあり得るということですね。

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