ニッポン放送「飯田浩司のOK! Cozy up!」（12月9日放送）にジャーナリストの須田慎一郎が出演。米朝関係の新たな展開の可能性について解説した。

4日、朝鮮東海の海上で行われた前線・東部戦線防護部隊の火力攻撃訓練を指導する金正恩朝鮮労働党委員長＝2019年5月4日　写真提供：時事通信

北朝鮮の重大な実験はICBMエンジン燃焼か

非核化交渉をめぐってアメリカと北朝鮮の駆け引きが続くなか、北朝鮮は8日、「北西部・東倉里で7日午後、非常に重大な実験が行われた」と発表した。実験の詳細は触れていないが、大陸間弾道ミサイル（ICBM）のエンジン燃焼実験の可能性があり、日本、アメリカ、韓国の当局が警戒を強めている。

飯田）もともと、重大なことをやるということは予告されていました。一方で、長距離を飛ばすICBMの実験ということは、アメリカに対して大きなメッセージになりますよね。

第1回米朝首脳会談の際にトランプ大統領が金正恩委員長に贈った“信頼のメダル”

須田）「短距離・中距離については問題ない、問題なのは大陸間弾道ミサイル（ICBM）なのだ」と、トランプ大統領は常に言っていた。そのICBMを発射ということになると、重大な局面を迎えることになります。これはきょう（9日）、日本のメディアでは初めて流される情報だと思いますが、私は今年（2019年）8月にワシントンで、米朝問題についていろいろ取材して来ました。そのなかで、非常に興味深い物証の写真を撮ることができたのです。まだ出してはいけないということで、出していませんでした。やっと年末になってGOサインが出たのでお見せいたしますが、このメダルです。これは2018年にシンガポールで開かれた、第1回米朝首脳会談のときにトランプ大統領が作って、金正恩委員長に渡したと言われるメダルです。とても数が少ないもので、両首脳の顔が彫られているメダルです。

飯田）両首脳の顔のバックに、星条旗と北朝鮮の国旗があり、周りには2018メモリアルと彫られています。

須田）裏面を見ていただくと非常に興味深くて、新しいジェネレーション、新しい時代、新しい希望、新しいリーダーシップということが彫られています。

飯田）歴史的だとありますね。

須田）2人で新しい歴史を作って行こうというものです。それを受け取ったということで、両首脳の個人的な信頼関係ができたのですよ。

飯田）トランプさんが再三「信頼」という言葉を使って金正恩氏を表現するのは、このやり取りがあったからなのですね。アメリカ人にとって、メダルというのは特別なものなのですか？

須田）そうですね。人の生き死に関わる際に、こういうメダルをやり取りすることが往々にして行われます。

飯田）個人的であれば、冠婚葬祭のときなどに行われる。

2日午前、北朝鮮の国防科学院が東部の元山湾で行った新型の潜水艦発射弾道ミサイル（SLBM）「北極星3」の試射＝2019年10月3日　写真提供：時事通信

信頼を裏切るICBMの燃焼実験によって緊迫状態に戻る可能性の米朝関係

須田）その気持ちを金正恩氏サイドも受け取ったからこそ、信頼関係ができて、今日までに至っている。だからさまざまな挑発行動を取ったけれども、最終的な一線を超えることはなかった。それは、このメダルのやり取りがあったからこそです。しかし今回、ICBMのエンジン燃焼をして一線を超えたとなると、米朝はまったく新しい局面を迎えることになります。

飯田）今回のことで、また圧力路線に戻ることもあるのですか？

須田）2018年シンガポール会談以前の状況に戻りかねないリスクを孕んでいます。金正恩委員長のことを「ロケットマン」と呼んだのも、シンガポール会談以前の話です。また米朝緊迫という状況にもなりかねない。いまはその瀬戸際です。

飯田）トランプさんからしたら、信頼していたのに裏切られたということで、いちばんイラっと来ますよね。

米が人道的な支援をするのか、一線を超えて緊迫して行くのか

須田）ただ金正恩氏サイドからすると、行動を抑制したにも関わらず、何ら成果が得られないわけですよね。経済的な成果は、何も前には進んでいない。国内経済はどんどん疲弊して行き、人心は荒廃し、政府や体制に対する批判が出ています。抑えが利かなくなって行く状況で、相当強い苛立ちが今回の動きになっている。選択肢として、最終的に核ミサイルの完全凍結や廃棄をする前に、アメリカが国連制裁決議に違反しない範囲で何らかの経済協力…人道的な経済支援に入るのか、それともこのまま一線を超えて米朝が緊迫して行くのか、それを決める重大な局面に入っていると思います。

飯田浩司のOK! Cozy up！
FM93AM1242ニッポン放送　月-金　6:00-8:00