米朝実務者協議~その先にあるトランプ大統領の目論見

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ニッポン放送「飯田浩司のOK! Cozy up!」(10月4日放送)に外交評論家・キヤノングローバル戦略研究所研究主幹の宮家邦彦が出演。再開されることとなった米朝実務者協議について解説した。

米朝実務者協議~その先にあるトランプ大統領の目論見

ホワイトハウスで、記者団に話すドナルド・トランプ米大統領(アメリカ・ワシントン)=2019年10月3日 写真提供:時事通信

トランプ大統領が米朝協議に意欲

アメリカのトランプ大統領は3日、近く再開される見通しの米朝実務者協議について「北朝鮮は対話をしたがっており、我々はまもなく彼らと話す」と述べ、意欲を示した。アメリカと北朝鮮は4日、スウェーデンのストックホルムでの予備接触を経て、実務者による協議に臨む予定。

飯田)その直前に北朝鮮はミサイルを発射しました。

米朝実務者協議~その先にあるトランプ大統領の目論見

南北軍事境界線がある板門店で握手するトランプ米大統領(左)と北朝鮮の金正恩朝鮮労働党委員長=2019年6月30日(ロイター=共同) 写真提供:共同通信社

これまで事務レベルで何かが決まったことはない

宮家)「大統領が意欲」ですって? いままで事務レベルで交渉をやって来て、何か決まったことがありますか? ないですよね、それはそうですよ。金正恩さんはトランプさんと会える立場にある、「会えるのだったら下っ端と話をしても仕方がない、私がトランプと話して決めるのだ」となるのだから、それは足元を見ますよね。そしてSLBMまで発射して、まったく北朝鮮の態度は変わっていません。前の板門店での写真撮影会を除けば、内容のある会談は行われていません。前回は2月末にハノイで本格的な会談がありましたが、あのときは結局アメリカが退席したわけです。それはボルトン氏がいたこともあり、アメリカの国内政治的にとって妥協できる状況でもなかった。いろいろな要素があったと思いますが、いまはボルトン氏もいません。

米朝実務者協議~その先にあるトランプ大統領の目論見

会談を前に握手するトランプ米大統領(左)と中国の習近平国家主席=2019年6月29日、大阪市(ロイター=共同) 写真提供:共同通信社

トランプ大統領にとっては弾劾問題から目先を変えさせるためのものでしかない

宮家)アメリカではいま大統領の弾劾問題が佳境になっていて、トランプさんは相当追い詰められている感じがします。そうすると、そこから目先を変えさせる、お得意の「目晦まし」戦術に出て来るだろうと思います。北朝鮮との首脳会談でも世界のメディアを呼んで写真を撮って、中身よりもそちらを重視する。要するに、すべて選挙のキャンペーンのためです。それからもう1つ、米朝関連ではないのだけれども、このような状況であれば目先を変えるという意味で、もしかしたら米中の貿易関係についても何らかの、私がいつも言っている一時的で限定的、表面的な妥協ということを考えるかもしれません。いまは追い詰められていますから、日本としては、北朝鮮にせよ、中国にせよ、アメリカに変な妥協をされないか要注意だと思います。

米朝実務者協議~その先にあるトランプ大統領の目論見

2日午前、北朝鮮の国防科学院が東部の元山湾で行った新型の潜水艦発射弾道ミサイル(SLBM)「北極星3」の試射=2019年10月3日 写真提供:時事通信

日本にとっては脅威となる潜水艦発射型ミサイル

飯田)特に北朝鮮の関係で言うと、今回のSLBM、潜水艦発射型ミサイルが直接的に日本の脅威になるというものですよね。

宮家)射程は1800キロくらいあるだろうと言われていますが、潜水艦ですから、どこにいるか見えません。あの建造中といわれる新しい潜水艦もテレビ画像で見たけれど、何だか大きい音がしそうですよね。潜水艦は静かでなければ意味がないので、どれほどの性能があるのでしょうか。しかし中長期的に見れば、北朝鮮の潜水艦は脅威には違いない。陸からの攻撃ならばどこからなのか、ある程度は見当が付きますけれど、潜水艦は見えないわけですから、やはり脅威にはなって行くでしょうね。

飯田)そういう中射程や短射程のミサイルはOKと、アメリカが認めてしまえば大変なことになる。

宮家)そこは大きなギャップがありますよね。国内政治や選挙に関心の高いアメリカ人と、我々のように国の安全保障を考えなくてはいけない、日本のような北朝鮮の隣国とは当然温度差がありますね。

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