話題のアスリートの隠された物語を探る「スポーツアナザーストーリー」。今回は、1月29日に入団会見を行った、巨人の新外国人投手、エンジェル・サンチェス投手と、チアゴ・ビエイラ投手にまつわるエピソードを取り上げる。
昨シーズン(2019年)、支配下登録された外国人投手のうち、マシソン(引退)、ヤングマン、クック、アダメスの4投手が退団した巨人。支配下で残留したのはC.C.メルセデスと、ルビー・デラロサの2投手だけですが、その穴を埋めてくれると期待されているのが、サンチェスとビエイラの外国人コンビです。
2人は29日、「サメダンス」が早くも話題になっている、前ナショナルズのヘラルド・パーラ(外野手)とともに入団会見を開きました。
サンチェスはドミニカ共和国出身の30歳で、2017年、パイレーツでメジャーデビュー。同年オフに韓国・SKワイバーンズに移籍し、昨年まで2年間プレーしました。
最速158キロの速球を誇る本格派右腕で、昨シーズンは17勝5敗、防御率2.62、165イニングを投げ、打たれた本塁打は2本だけという堂々たる成績を残しています。
巨人での背番号は「20」。日本の野球になじみ、8年間在籍したマシソンの番号を受け継ぎましたが、実はサンチェスも、入団前からかなりの“親日家”なのです。
巨人との契約が決まった際、球団を通じ「子どものころから、日本に来るのが夢だった」とコメントしたほど。早く日本語を覚えたいそうで、「日本文化も大好き」と公言しています。豚骨ラーメンが大好物で、会見した29日夜もさっそく食べに行ったとか。
ラーメン好きの外国人投手と言えば、昨年まで阪神に10年間在籍、引退したランディ・メッセンジャーを思い出しますが、遠征先でも熱心に食べ歩き、甲子園球場内にも自身がプロデュースするラーメン店があったほど。
サンチェスがエース級の活躍をしてくれれば、将来、東京ドームにもサンチェスプロデュースの豚骨ラーメン店がオープンするかもしれません。
一方、ビエイラはブラジル・サンパウロ出身の27歳。背番号は「49」です。2016年、マリナーズでメジャーデビューを果たし、史上4人目のブラジル出身メジャーリーガーとなりました。サッカー王国で知られるブラジルですが、2013年の第3回WBCでは本戦に出場。ビエイラはそのときのブラジル代表メンバーで、予選ではクローザーとして活躍しました。2018年からは、ホワイトソックスでプレー、巨人ではリリーフ投手として期待されています。
持ち味は剛速球で、マイナー時代、球場のスピードガンで何と103マイル(約166.7キロ)を計測したこともあります。もしかすると、大谷翔平が日本でマークした最速記録・165キロを更新するかもしれません。
ただし課題はコントロールで、メジャー通算23登板で2勝1敗1セーブ、防御率7.36と振るわなかったのも四球の多さが原因です。そこをどう修正するかがカギになるでしょう。
またビエイラも、“日本愛”ではサンチェスに負けていません。契約合意の際に、球団を通じ「ブラジルで日本人コーチの指導を受けたことがあり、日本の文化や習慣にもなじみがあります。以前から日本でプレーしたいと思っていました」とコメント。
サンパウロは日系人の多い街としても知られていますが、子どものころから野球少年だったというビエイラは、日本の文化を知るコーチから“日本式野球”と礼儀作法を叩き込まれたそうで、彼にとっては「ようやく“本場”でプレーできる」とワクワクしているのかもしれません。
ともに日本に憧れ、“和”の心を持ったサンチェスとビエイラは、会見翌日の30日にさっそく、ジャイアンツ球場で練習を開始。少しでも早くチームに合流し、溶け込みたいという意思の表れです。
ちなみに、今季も残留したデラロサは、もともとサンチェスと友人で、来日した28日夜、ビエイラも誘って3人で決起集会を開いたとのこと。気心の知れたチームメイトがいることもプラスに作用しそうです。
サンチェスが先発として山口俊の穴を、ビエイラがリリーバーとしてマシソンの穴を埋めてくれれば、リーグ連覇と日本一奪回を狙う原監督にとって、これほど心強いことはないでしょう。