ふるさと納税~「住民票2ヵ所取得制度」への可能性

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ニッポン放送「飯田浩司のOK! Cozy up!」(7月1日放送)にジャーナリストの佐々木俊尚が出演。泉佐野市がふるさと納税訴訟で勝訴したニュースについて解説した。

ふるさと納税~「住民票2ヵ所取得制度」への可能性

【ふるさと納税逆転勝訴】会見を行う泉佐野市の千代松大耕市長=2020年6月30日午後、大阪府泉佐野市 写真提供:産経新聞社

ふるさと納税訴訟で泉佐野市が勝訴

ふるさと納税の新制度の対象から除外された大阪府泉佐野市が、総務省の除外決定の取り消しを求めた裁判で、最高裁判所は泉佐野市を敗訴とした大阪高裁の判決を破棄し、除外決定を取り消す判決を出した。今後、泉佐野市の申請をどう扱うか、総務省の対応が焦点となる。

飯田)逆転勝訴ということになりました。

佐々木)泉佐野市はアマゾンギフト券を大量に配っていて、それはけしからんという話になりました。この報道を見ると、多額の寄付がOKなのかと思いがちですが、そうではなく、法律改正前に多額の寄付をやっていたのを、「後出しじゃんけんで除外するのはよくない」ということです。今後もいいという話ではありません。あと重要なのは、補足意見が出ていて、林景一裁判官が「この結論はいささか居心地の悪さを覚えたところがある」とおっしゃっています。要するに、返礼品が豪華なものはやり過ぎだと。

ふるさと納税~「住民票2ヵ所取得制度」への可能性

ニッポン放送「飯田浩司のOK! Cozy up!」

人口割合だけでいいのかという問題~1票の格差と同じ

佐々木)もう1つは、ふるさと納税制度について「国家全体の税収の総額を増加させるものではなく、端的に言えば限られたなかでの税収を取り合うゼロサムゲームである」と言っています。世田谷区は裕福な区民が多いので、ふるさと納税をあちこちに出しまくっていて、その結果、住民税の税収が激減するということが起きています。結局、あちこちで引っ張り合っているだけなのです。ただ、引っ張り合うこと自体は悪いことではありません。いまのところ、東京のような富裕なところに税金が集中してしまって、地方の過疎化して行く市町村に税収が少ないという、人口割合だけでいいのかという問題があります。例えば総選挙の、1票の格差問題と同じです。地方には地方の課題があるので、割合が多めにあってもいいのではないかという意見があるのと同じ問題だと思います。

飯田)いままでのふるさと納税がない枠組みだと、地方交付税交付金の形で再分配はできますが、そうすると、一旦国をかえす形になるので、そこに裁量が働いたり権限ができたりします。であれば、自分が寄付したいところに納税できるような形にしたらどうだというのが、もともとの出発点としてありました。

佐々木)自治体の独立性が失われて来た問題というのはあるのですが、独立していれば何でもいいのかというと、夕張のように野放図な財政に走るリテラシーの低い自治体もあるので、必ずしもそうとは言えません。そこを国がコントロールしたがる気持ちもわからないでもないですが、あまりにも縛り過ぎだったということはあると思います。全国で地方交付税不交付団体、地方交付税をもらわないでも税収だけでやって行ける自治体もあります。僕が拠点で借りている軽井沢もそうです。中学校とか体育館とか、めちゃくちゃ豪華ですよ。

飯田)そうですよね。

佐々木)こんなに箱ものに金を掛けていいのかと思うのですが、やはり金の使い方が荒くなるということはあります。

飯田)箱ものにお金をかけてしまうというのは、原発の立地自治体もそうです。

佐々木)本来のふるさと納税の原点に立ち返って言うと、今回、コロナでリモートワークが解禁になり、地方に移住して、そこで「東京の会社勤務のまま田舎で暮らす」という話も出て来ています。そうすると、前から主張していますが、多拠点居住、2~3ヵ所に家を借りて、それぞれを行ったり来たりする生活というのがより普及して来ると思います。そうなると、どこに税金を払うのかが重要な問題です。住民票は1ヵ所にしか置けないので、僕は東京に置いているのですが、福井に行くと微妙に「お前は住民でもないくせに」という空気を感じることがあります。

飯田)インフラにただ乗りしているのではないか、みたいな。

ふるさと納税~「住民票2ヵ所取得制度」への可能性

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「ふるさと納税」から「住民票2ヵ所取得制度」への可能性~コロナで変わる生活環境

佐々木)町内会に入れないのですよ。そのときに、ふるさと納税で住民ではありませんが、半住民、3分の1住民のような、両方の自治体に所属している制度化ができるようになると、その問題は解決します。ふるさと納税をもう1つ進めて、住民票2ヵ所取得制度とか。

飯田)住民税も分割とか。

佐々木)そのようにやると違う形になり、いまのような多額の返礼品狙いではない、新しい形のふるさと納税ということになるのではないでしょうか。自治体に対しては、関係人口を増やす話として持って行くと面白いと思います。

飯田)確かに、多拠点で生活すれば、自分で再分配していることになりますよね。いままでは国や地方自治体のシステムを使わなければならなかったものが、そうやって働き方や生活がどんどん変わって行くのですかね?

佐々木)総務省、国を経由しないで、自分が各自治体にお金を回す。それをみんながやるようになると、新しい地方自治体の姿が見えて来るかも知れません。コロナは意外にそういうところから、抜本的に社会のありようをひっくり返す可能性も秘めているのではないかと、期待感を持っています。

飯田)いろいろなものが変わりますね。地方の空き家対策とか、そういうミクロな1つ1つの課題の解決に、横断的になるかも知れませんね。

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