ニッポン放送「飯田浩司のOK! Cozy up!」(8月21日放送)に慶應義塾大学教授で国際政治学者の中山俊宏が出演。ロシアの野党指導者アレクセイ・ナワリヌイ氏が体調不良を起こした原因には、毒を盛られた可能性もあると報じられたニュースについて解説した。
反プーチン派のナワリヌイ氏が毒を盛られた可能性
ロシアの反プーチン派の野党指導者、アレクセイ・ナワリヌイ氏が8月20日、飛行機内で体調不良を訴え緊急搬送された。中毒症状を示し、意識不明の重体ということである。この日、口にしたのは空港の喫茶店で買った紅茶だけで、なかに毒が入れられた可能性もあると報じられている。
飯田)20日の夕方にこのニュースが入って来て、「何だこれは!」という感じでした。ロシアではこういうことが起きるのですかね?
中山)断定的なことは言えないですが、明らかに怪しいですね。これまでもプーチン大統領の政敵というか、ジャーナリストもそうですが、批判的な人たちに繰り返し同じようなことが起きています。
飯田)いままでのことがあるだけに、と思いますが、大統領側は基本的に関わっていないと言っています。
中山)当然、そのような発言になるでしょう。しかし、いまは体調が安定しているというニュースも入っていますから、ロシアの特殊機関の仕事だとすると詰めが甘いですね。「もっと決定的なものを使うのではないか」ということも言われているようです。ただ、これまでの経緯を考えると、やはり怪しいというのが多くの人が持つ印象ではないでしょうか。
権威主義的体制が世界で勢力を広げている~民主主義が後退しているか
飯田)この方は以前、投獄されていたときも顔がすごくむくんで、毒が盛られたのではないかと言われていました。今回もそういう意味では、警告のような形なのでしょうか?
中山)ロシアだけではないですけれども、権威主義的な体制が世界で勢力を広げているので、これも1つの兆候なのかという気がしますね。
飯田)少し前まで権威主義というのは、かつての統治体制であって、変わって行くということが言われていましたが、その流れはどうなっていますか?
中山)ゆっくりですが、「民主化は基本的に拡大して行く」というのが、みんなが共有している前提だったと思うのです。しかし中国、ロシアなど、そういうものを押し返す勢力が伸びていて、アメリカなど、旗を振って民主化を進めて来た国が若干そういうことに関して後ろ向きになっているので、全体としては民主主義が後退しているような印象を持たざるを得ないですね。
飯田)ソ連が崩壊し、ロシア連邦となって選挙により大統領が選ばれる、当初はそういうものが芽生えて来るのかと思われました。フランシス・フクヤマさんが『歴史の終わり』という本を書き、ベルリンの壁やソ連が崩壊して、民主主義が勝利すると言われていましたが、少し風向きが変わって来ているということですか?
中山)そうですね。冷戦が終わったころは、これでリベラル・デモクラシーが世界に広がって行く、そのプロセスが世界史になって行くという認識でしたが、いま、そういう楽観論を言う人はいないのではないですかね。フクヤマさんの議論も、細かく詰めて行くとそこまで楽観論ではないのですけれども、一般的には民主主義の勝利として受け止められた本ですから、ああいう世界観はいま後退しているのではないでしょうか。
今回の米大統領選は国際的な民主主義の方向性に大きな意味を持つ
飯田)いまはアメリカの大統領選や米中関係などもありますが、その辺りもすべて通奏低音のようになっていると。
中山)リンクしていますね。今回の大統領選挙はアメリカだけではなく、国際的にも民主主義の向かう方向性に関して、大きな意味を持つ選挙になるのではないでしょうか。
飯田)今回の大統領選は、コロナの影響がどこまであるのかということも言われていますが、その辺りも含めてこの先を占うという形になりますか?
今後のコロナ禍でのモデルになり得る今回の米大統領選
中山)いまアメリカでやっている民主党の党大会は、政治のお祭りのような感じで、結果は出ているのだけれども、みんなで集まって問題意識を共有し、候補を応援して行こうというショーなのです。しかし、それがコロナの影響でできず、完全にオンラインになり、盛り上がりには欠けつつも、必死に新しい党大会の形を模索している。これはアメリカが始めましたが、政治集会はこれから各地でできなくなると思うのですね。オンラインを政治にどのように活用するか、これから各国でいろいろな取り組みがされると思いますが、その1つのモデルになり得るという感じもしますね。
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