ニッポン放送「飯田浩司のOK! Cozy up!」(12月23日放送)に数量政策学者で内閣官房参与の高橋洋一が出演。中国・全人代の常務委員会が「海警法」の審議を始めたニュースについて解説した。
中国・全人代常務委員会が「海警法」の審議を開始
中国の全国人民代表大会(全人代)の常務委員会は12月22日、海上警備を担当する海警局の任務を定めた「海警法」の審議を始めた。11月に公表された海警法の草案では、中国の管轄海域で外国の船が違法に活動し、海警局の停船命令などに従わない場合、武器を使用できるとしている。
飯田)「尖閣周辺で領海侵入を繰り返す中国の公船」と報道されると、その船は海警局に所属しているものです。その船が武器を簡単に使用できるようになるということです。
中国の海警~いつか攻撃される
高橋)海警というと、「日本の海上保安庁に相当する」という言い方をします。でもこれは軍隊です。2018年に、中央軍事委員会が指揮する人民武装警察部隊に移管されていますからね。日本で言うと、防衛省の下に海上保安庁があるような感じです。日本のように国土交通省の下にあるのとはわけが違います。
飯田)そういうことですよね。だから一体の作戦のなかで、まず白い色の船を出すと。
高橋)一体なのですよね。だからもう完全に軍組織だと思った方がいい。すごく大きい船が来るのです。日本の海上保安庁とは桁が違うのです。海上保安庁の人は大変でしょうね。あんなもので来られたら。
飯田)機関砲も積んでいて。
高橋)機関砲も積んでいて。鉄板は厚そうだし、日本の弾なんか跳ね返しそうな感じでしょう。それで中国は「きちんと国際慣習に従っています」なんて言っていますが、南シナ海ですごいことをやりましたよね。国際司法裁判所の話を全部無視して。
飯田)そうですね。
高橋)それが中国の「国際慣習に従う」という言い方なのです。全部無視しても、それはそれで「中国のやり方だ」という、そんな感じです。尖閣ではたぶん、武器使用はあるでしょうね。逆に中国の海警がやらなかったら「なぜ?」と、彼らの国内法に違反するというレベルになってしまうではないですか。
飯田)やらなければ国内法に違反すると。
装備率を均衡させることが必要~装備の格差が出ると武力衝突が起こる
高橋)やらないこと自体がね。いつか攻撃されます。だから菅政権で、安倍政権のころからやっていますが、海上保安庁と海上自衛隊の装備を上げて、装備率を均衡させることが必要なのです。10年くらい前であれば、日本の方が上でしたが、最近は完全に向こうが3倍~4倍の装備になっています。差が開いてしまった。差が開くとよからぬことを考えるというのが、国際関係論では常識です。リアリズムの立場で装備の格差が出ると武力衝突があり得るのです。
飯田)均衡が崩れたときと。
高橋)崩れたときです。崩れなければ、向こうも反発を食らうかも知れないので、恐れるのですが、ある程度の差になると、やって来るのですよ。
大型巡視船を物量共に整備する必要がある
飯田)海上自衛隊などの関係者に話を聞くと、軍艦や艦艇は水密区画が細かく分かれていて、少し穴が開いても沈まないような構造になっていると。ところが海保の船には、そういう仕様になっていないものもなかにはある。これからその辺りの整備が追いつくかどうかというレベルになっているそうです。
高橋)菅さんが、「尖閣諸島警備のために大型巡視船を整備したい」と言っていますが、大型巡視船を「物量共に整備」しないと、日本の安全保障が危うくなるというレベルなのですよ。これはお金の話だから、やった方がいいと思います。
飯田)船をつくるだけではなく、動かす人も必要です。
高橋)もちろん。でも船をつくらないと人を増やすこともできません。順番とすれば、船から増やすのだと思います。
尖閣に公務員を駐在させても装備が均衡していなければ意味がない
飯田)いまは、日本はアメリカがいて、何とかバランスを取っている感じですか?
高橋)アメリカがいなければ、完全にやられるというパターンだと思います。いても危ないと。アメリカだって、すぐに尖閣に出動するとは思えません。「まず日本でやってくれ」と。普通はそうですよね。そのときに尖閣の方で占有されたら、取り返すのはすごく大変ですよ。竹島と一緒です。だからやらせないように、装備だけは少なくとも均衡させておくべきなのです。そういう戦略しか取れないのです。「尖閣に公務員を駐在させればいい」と言う人がいますが、その前に「装備の均衡」が必要です。装備が均衡していなければ、公務員が駐在していても意味がありません。
飯田)武器使用なりの権限が、中国の国内法によって付与されると、彼らは尖閣が自分たちの持ち物だというように言っているわけです。国籍不明の人を拘束しに行くのだということで、主権の行使を堂々と世界中に言い始めてしまうと。
高橋)それをやらせないためには、ものすごい反撃があるという状態を保たなければならないのです。
飯田)もう、そこまで来てしまったということなのですね。
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