中国が“ワクチン外交”を積極的に進める理由
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ニッポン放送「飯田浩司のOK! Cozy up!」(2月9日放送)に戦略科学者の中川コージが出演。新型コロナウイルスの感染拡大に警鐘を鳴らした李文亮医師の死去から1年というニュースについて解説した。
中国武漢の医師・李文亮氏の死去から1年
中国当局の公表前に新型コロナウイルスの感染拡大に警鐘を鳴らした、武漢市の李文亮医師(当時34歳)が新型コロナウイルスに感染し亡くなってから、2月7日で1年となった。
飯田)現地レポートなども出ておりましたけれども、なかったことにするような形なのですかね。
中川)李文亮さんは英雄として表彰を受けているので、宣伝当局としては「なかったことにする」ということではないと思いますが、初動ミスの1つのアイコンになってしまっているので「風化させたい」ということはあると思います。他の人を持ち上げるなかで、相対的に李文亮さんの価値を落としている気はします。
飯田)「みんな頑張ったんだ」という博物館みたいなものも大々的にやっていますからね。
欧米に比べると圧倒的に感染を抑え込んだ中国~国民はその事実には満足
中川)そういうものをやるときに、人民にどのような大衆心理があるのかということも重要かと思います。それがうまく行っていなければ、どんなに宣伝当局が取り繕ったとしても批判は起こるわけです。やはり大きいのは、欧米と比べれば、はるかに中国の状況がいいということです。その事実は人民を十分に満足させてしまっているので、中国当局が宣伝をしたとしても、批判はそれほどないような状況だと思います。
飯田)振り返るよりも、先へ先へという感じですね。
中川)結果として、「うまくやっているではないか」と人民が見ているところはあるので、それが体制批判につながるようなネタにはならず、むしろ「体制は頑張ったね」という方が大きいと思います。
飯田)うまいこと使ったという。
中川)うまいところ使ったのですよ、新型コロナで一石二鳥、三鳥どころではないくらいの美味しいところを取っているような気がします。
積極的にワクチン外交を進める中国~途上国には安価で扱いやすい中国製ワクチン
飯田)“パンプキン座布団”さん、横浜市保土ケ谷区の方から。「中川コージさんにお尋ねします。中国のワクチン外交を取り上げてください、よろしくお願いします」というメールもいただいているのですけれども、国内だけではなく外へ出して行くと。
中川)中国には3社の大手がありますが、中国の人口14億人に対して、数十億くらい確保できたと公表しています。数十億回分のワクチンは1人が2回打ったとしても余る数です。そこでワクチン外交を展開して行こうということです。既に13ヵ国が決まっていて、今後38ヵ国を予定していると言っています。日本に入って来るmRNAワクチンは、温度管理が難しいのですが、中国製の不活化ワクチンは極めてオーソドックスなワクチンなので、途上国に持って行きやすい。途上国にしてみれば、温度管理は日本のような先進国とは違って大変ですから。
飯田)確かに。
中川)安くて、温度管理もしやすい中国製ワクチンにはそういう需要があるのです。そこはCOVAXファシリティという国際的な枠組みを含めて、対米のコンテクストを考えても、ここは積極的にワクチンを配って行きたいというところはあると思います。
廉価版ワクチンとして途上国に売って行く中国
飯田)不活化ワクチンの効き目がどのくらいなのかは諸説あるところですが、工業製品における廉価版が普及するのと同じような構図になるわけですかね。
中川)そうです。アフリカ諸国で何しろ安く、扱いも難しくないということであれば、有効性がたとえ半分だとしても、「それでも打つよね」という状況になると思います。飯田さんが言われるように廉価版というようなものを、マーケットのセグメントとして狙っているのではないでしょうか。「中国製は信用できない」というのは我々の意見であって、発展途上国はそうは思っていません。頭数で国連等が決まるような民主主義的な価値観をやればやろうとするほど、中国的な権威主義や価値観が跋扈するという状況になってしまっているのです。もう我々は現実を見なければいけない気がします。
ワクチン外交はわかりやすいアイコン~効くかということよりも安全性を重視する中国
飯田)ブラジルでは、大統領はこのワクチンに否定的なのですが、サンパウロの知事さんは積極的に打とうと言っていて、政争の具になっているという話も聞きます。
中川)ワクチン外交というのはわかりやすいアイコンになっているのだと思います。中国としては、それを淡々とやって行くというところはある。中国は、国策としてワクチン外交をやるのは初めてなので、効くかどうかということよりも、安全性を重視していたなという気はします。
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