キャスターの辛坊治郎氏が1月26日、自身がパーソナリティを務めるニッポン放送「辛坊治郎 ズーム そこまで言うか!」に出演。この日の新聞各紙朝刊で報じられた、新型コロナウイルス感染症のワクチン接種に関するスケジュールにおいて、その「優先順位」の報道にある誤りを指摘した。
「基礎疾患を有する人や高齢者施設従業員ら」が4番目であるが
1月25日、本格論戦がスタートした衆議院予算委員会の質疑では、政府与党が2月初旬の成立を目指している特別措置法改正案に盛り込む罰則規定などをめぐって、菅総理と立憲民主党の質問者が攻防を繰り広げた。
辛坊)いまやっぱり国会で野党が質問すべき、いますぐそこにある問題っていくらでもあるのに、まったくみんなスルーだなという話で。
26日の朝刊をみると、みんなこう書いてあります。例えば産経新聞。
『高齢者 3カ月以内に ワクチン接種、3600万人対象』
~『産経新聞』2021年1月26日(1面) より
辛坊)読売新聞も1面です。
『コロナワクチン 高齢者接種3か月で 3月下旬以降 3週間あけ2回』
~『読売新聞』2021年1月26日(1面) より
辛坊)これは、新聞を読んでいて、素朴な疑問が生じたんです。これ、全紙書いてあることは同じなのですが、例えば産経新聞にはこう書いてあります。
「政府はワクチン接種について、(1)一部の医療従事者(2)全国の医療従事者(3)65歳以上の高齢者(4)基礎疾患を有する人や高齢者施設従業員ら(5)その他-の順で進める方針。」
~『産経新聞』2021年1月26日(1面) より
辛坊)いいですか、なんか引っかかりません? まあ、そこまでだとなかなか引っかからないかもしれませんね。私は引っかかったのです。
どうやって「基礎疾患を有する人」約820万人を区分け、優先できるのか
辛坊)当然、新聞の読者は「俺はどうかな?」と思って読むわけですよ。私は64歳ですから、65歳以上の高齢者には当たりません、該当しません。だけど、基礎疾患、高脂血症に高血圧という、典型的な血液な病気を持っております。だから、ハイリスクグループですよね。こう考えたら、私は「基礎疾患を有する人」という(4)。「高齢者施設従業員と同じくらいのタイミングなんだな」と、こう思いますよね。
じゃあ読売新聞を読んでみますよ。
「高齢者が接種を受けるために必要なクーポン券は、市区町村が3月5日までに印刷などを終え、3月中旬以降に発送される。原則として住民票のある自治体で接種を受ける。高齢者施設などに入所している人は、住民票のある自治体外の施設でも接種を受けられる。開始は3月下旬以降になる見込みだ。」
~『読売新聞』2021年1月26日(1面) より
辛坊)……ということで、65歳以上の高齢者は3月5日までに印刷を終え、市区町村によって3月中旬までに発送されて、手元に届く。そのクーポン券を持ってワクチンを受けにいくということになります。私はこれに該当しませんね。
で、続けて読んでみます。
「ワクチン接種は2月下旬に医療従事者(約370万人)を対象に開始。その後、高齢者(約3600万人)、高齢者施設の従事者(約200万人)や、基礎疾患のある人(約820万人)らに行われる。」
「基礎疾患のある人や、優先接種の対象外となる一般の人のクーポン券は4月23日までに印刷を終え、その後、順次発送される予定だ。」
~『読売新聞』2021年1月26日(1面) より
辛坊)これを読むと、一般の人より前に高齢者施設の従事者と同じタイミングで私はワクチン接種の対象になる約820万人のなかに含まれると、こう思いますよね?
増山さやかアナウンサー)思いますね。
辛坊)思いますよね。素朴な疑問ですが、私が血液疾患を抱えているということをどうやって厚生労働省は知ることができるのか。
増山)あ! 私もちょっとそれは思いました。
辛坊)どうやって先にクーポン券を発送することができるのか。
増山)そうそう。そうですよね。
辛坊)だって、そんなことわからないわけですよ。自分の病歴なんて、いま極めてデリケートな情報ですから、そんなものを政府が持っていたら大問題ですよ。
増山)そうですよね。知っていたらびっくりですよね。
辛坊)これもし、820万人の高齢者と基礎疾患のある人が、高齢者は65歳以上だから、65歳までの基礎疾患のある人が、ワクチンを最初に打ちたいからといって、医者に行って「証明書くれ」って言い出したら、820万人だからとんでもないことになるでしょう、これ。
増山)そうですよね。口頭でいいわけがないですよね、きっとね。
辛坊)そう。口頭でいいのだとすると、一般の人が「俺、基礎疾患持っているから先打ってくれ」って言いに行くという話だけれども、でもそれがありえないのは、
「一般の人のクーポン券は4月23日までに印刷を終え」
~『読売新聞』2021年1月26日(1面) より
辛坊)だから、基礎疾患を持っているということは誰にもわかっていないわけで、私は一般の人対象なので、私向けのクーポン券は4月23日までの印刷分なんですよ。どうやって私を含めた820万人の基礎疾患のある人に、優先で順位を先に打つことができるのかという。
増山)謎ですね。
新聞記者はなぜ疑問を持たずに書いたのか
辛坊)これ、新聞を書いている人間も、テレビでこのニュースを伝えている人間も、自分が当事者じゃないから想像力が働かないんだよ。誰もわからずにこのニュース書いていると思うよ。……と、思いませんか?
増山)そう思う。
辛坊)「どうやって俺のことを国は知っているんだよ、それ」っていう。
増山)私もこのあいだチラッと思いました、それ。
辛坊)それで、(番組スタッフに)「悪いけど、厚生労働省に聞いてくれない?」っていったら、厚生労働省が丁寧に教えてくれました。
いまの新聞報道は間違いです!
増山)間違い?
辛坊)間違いです。あの、基礎疾患を持っている人は優先されません!
増山)そうなんですか? 一般の人と一緒?
辛坊)一緒です。だって、優先させようがないじゃん、制度的に。
増山)まあ、たしかにそうですよね。
辛坊)新聞にはみんな「優先」「優先」「優先」って書いてあるのだけれども、その基礎疾患を持っている65歳未満の人を「優先」させる手段がないんだよ。厚生労働省に聞いたら、一般の人と同じタイミングで、一般の人に接種が始まった段階で「基礎疾患を持っている人を先にしてあげてくださいね、一般の人はちょっと遠慮してください」みたいなことを言うんだって。
増山)ええー?
辛坊)これ、相当「ええー?」だろう。
増山)え、え、え?
辛坊)だからね、新聞に、朝から全紙書いてあるんだけれど、いま私がここで説明したような疑問を新聞記者は持たなかったのかと。厚生労働省に聞かなかったのかと。
厚生労働省は、想定はしているみたいです。淡々と、ちゃんと答えてくれました。つまり「病歴みたいなものを国が管理していることはありませんので、そういう人に優先してクーポン券を配る手段がありません」と。で、病院にじゃあ各々がなんだか証明書、診断書みたいなものを出してもらって「俺優先してくれ」というようなことができるかというと、そんなことをできるということにした瞬間に医療がそれの煩雑な手間に追われてパンクするから、そういうことも厚生労働省は考えておりません。一応、基礎疾患を持っている人は優先しますけれども、一般の人がクーポン券をもらったあと、いろいろな質問表みたいなところに書き込んで、「あなた疾患がありますか、どうなのか」みたいなところで自己申告。
増山)ああ、そこで初めて。
辛坊)そのときに、「自己申告で早く受けたいからと言って、嘘をつく人がいたらどうするんだ」という素朴な疑問が生じますよね。それを厚生労働省に聞いたところ、厚生労働省のお答えは、「善意に委ねます」と。
増山)まあ、致し方ないという感じなんですかね。
辛坊)私が言いたいのは、厚生労働省が問題だとかなんだとか、という話ではなくて、こういう具体的な、ひとつひとつ詰め。だって、対象が820万人だから、ものすごく多いじゃないですか。今朝の新聞報道や、テレビの報道をみている人は、自分が基礎疾患のある65歳未満、60代の人間だけれども、優先してもらって、接種が行われるとみんななんとなく思い込みますよね。でも、その手段が現状においてはないんです。
増山)いや、そういうことだったんだ!
番組情報
辛坊治郎さんが政治・経済・文化・社会・芸能まで、きょう一日のニュースの中から独自の視点でズームし、いま一番気になる話題を忖度なく語るニュース解説番組です。
[アシスタント]増山さやかアナウンサー(月曜日~木曜日)、飯田浩司アナウンサー(木曜日のみ)