JTBが中小企業化へ~背に腹はかえられないその実情
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ニッポン放送「新行市佳のOK! Cozy up!」(2月24日放送)に数量政策学者で内閣官房参与の高橋洋一が出演。国内最大手の旅行会社JTBが資本金を1億円に減資するというニュースについて解説した。
JTBが資本金を減資し、中小企業化へ
国内最大手の旅行会社JTBが、資本金を現在の23億400万円から1億円に減資することがわかった。2月12日の株主総会ですでに承認されていて、3月31日付で実施する見通しである。資本金が1億円以下になると、税制上は中小企業の扱いになる。
新行)これまでも毎日新聞やスカイマークが資本金を1億円に減資するという報道はありました。
中小企業には外形標準課税が課されない~背に腹はかえられない
高橋)資本金が小さければ、法人税が安くなるのです。23%の法人税率が15%になる。しかし、法人税は赤字であれば、払わなくていいのです。中小企業になっても「払わなくていい」のは同じなのに、なぜこういうことをするのかと思うかも知れませんが、法人税の代わりに外形標準課税というものがあって、これは計算が複雑ですが、給料の1%くらいを払うという形で、赤字でも必ず払わなければなりません。法人税は赤字だと払わなくてもいいというのは、あまりに黒字と赤字での差があり過ぎるでしょう。それを補う意味で、支払い給与の1%くらいを必ず支払う外形標準課税というものがあるのです。これも中小企業になると適用されません。だからすごくお得なのです。
新行)なるほど。
高橋)中小企業になりたいという企業は多いです。昔、税務署長をしていたことがありますが、「こんなに大きい企業なのに、なぜ中小企業なのですか」と聞いたら、「そんなの署長さんならわかるでしょう、税金を払いたくないからだよ」と言っていました。そういうのは地方ではかなりあって、わざと1億円以下にしているという例も多いです。上場企業になるとさすがにできませんが、非上場だと少なくありません。
新行)逆にデメリットはないのですか?
高橋)大企業と言えず、格好が悪いということです。中小企業の人には、「見栄などはどうでもよくて、税金を払いたくない」という人はかなりいます。資本金は恣意的に変えられて、脱税とまでは言いませんが、税回避という感じになるので、マスコミなどは格好が悪いですよね。普段「税金を払え」と言っておいて、いざ自分のことになると払いたくないというのは。だからマスコミはあまりやってはいけないと思いますが、JTBは背に腹はかえられないのではないでしょうか。
新行)これから同じように、中小企業化しようとする大企業は増えて行きそうですか?
高橋)増えて行くかも知れませんね。
Go To トラベルを止めた影響も
新行)JTBに関してですが、政府の観光需要喚起策の「Go To トラベル」を実施した部分がありますけれど、その原資が血税であるのはどうなのだろうかという報道もされているようですが。
高橋)Go To トラベルは効果がありました。Go To トラベルが新型コロナの感染を拡大させたというエビデンスはありません。Go To トラベルに関係するのは、全移動の1%くらいです。Go To トラベルは経済的な効果があったけれど、マスコミにいろいろ言われて、結果的に止めてしまった。それがJTBなどにも影響が出ているのではないですか。
新行)歩いていても、近所の旅行会社の支店が閉まるという光景を見ます。
高橋)そうでしょう。旅行とホテル関係は大変ですよ。帝国ホテルなども、貸し出すようなことをしています。
新行)お得なプランが。
高橋)1ヵ月貸してくれて何十万円というレベルです。それくらい、ホテル需要がないということでしょう。オリンピックも延期になったので大変でしょう。「Go To トラベルはいらない」と言う人がいるかも知れませんが、放っておいて倒産してしまって、あとで失業給付が増えるのとどちらがいいかという話です。倒産させないで失業を抑えた方が、国民の負担も少ないのではないかと思います。
まだ予算が十分残っている「Go To トラベル」
新行)Go To トラベルも、今後コロナウイルスが落ち着いて、ワクチン接種が始まれば、そのあと、どうするかという部分もあると思いますが。
高橋)3月以降、Go To トラベルにはまだ予算が1兆円くらい残っているはずです。それを使った方がいいのではないかと思います。緊急事態宣言が終わったら解禁してもいいのではないかと思いますが、マスコミが批判しそうなので、すぐには解禁できないようですけれどね。
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