ジャーナリスト・須田慎一郎が3月7日、自身がパーソナリティを務めるニッポン放送『須田慎一郎のスクープ ニュース オンライン』に出演。 愛知県の大村秀章知事のリコール(解職請求)運動における不正署名事件について、「金の動き」と「タイミング」から、その背景を読み解いた。
「あいちトリエンナーレ2019」展示内容に端を発した“事件”
大村秀章愛知県知事のリコールを求めて実施された署名活動において、選挙管理委員会に提出された署名のうち8割超に不正があった問題。不正の方法、発注した人物、不正発覚の背景について須田が自身の取材メモから明らかにする。
須田)この問題は、愛知県警が強制捜査に踏み切っていますので、事件と呼んでいいのかなと。愛知県知事リコール不正署名事件と呼んでいいのかなと私は思います。どういった事件なのかということですが、改めて説明するまでもなくよくご存じのかたも多いと思うし、一方で愛知県名古屋で起こっている事件であるためにあまり東京では報道の量が多くないということもあります。何となく知っているという方もいると思いますのでざっくりと振り返っていきたいと思います。
そもそもは、「あいちトリエンナーレ2019」という芸術展があってそこで企画展というのが開かれまして、その中の「表現の不自由展・その後」における展示内容にいろいろと問題があったんです。これに対する公金の支出に対して大村知事に批判を加えたことがそもそもの発端となっていくわけなんです。そういった批判の盛り上がりを受け、2020年8月25日から11月にかけてリコールの署名活動が実施されたんです。
あつまった署名の大半が“無効”という事態
須田)リコールと言っても辞めさせるだけではなく知事を選びなおしましょう、出直し選挙をしましょうということをやるための署名活動ですが、愛知県下でどの程度の署名が集まればリコールができるかというと、86万6千筆集めなければいけないんです。最終的に集まった署名の数が43万5千筆。重要な数なので繰り返しますが、必要な数が86万6千、これに対して集まったのが43万5千、約半分、見事に半分です。
ただ、驚いてはいけないのが、選挙管理委員会がチェックしてみるとこの43万5千筆のうちの約83.2%が無効であることが分かったんです。無効な署名のうち約90%は、同一の人が複数人分書いたと思われるような筆跡のものだった。そして、有効でないもののうちの約48%が愛知県会下の有権者ではない、正確にいうと、選挙人名簿に名前の載っていない人が署名をしていたことが明らかになったんです。同一の筆跡だった、そして有効ではないということが出てくると、なにかイリーガルな、非合法なことが行われていたのではないかという疑いが強まり、選挙管理委員会が県警に刑事告発をするということで、いよいよ警察が動き出す事態になったんです。
そうすると、いったい誰が何のためにやったことなのかが最大のポイントになってくるんですけれども、少なくとも今回の放送の時点では明らかになっていないんです。このことを前提にご理解いただきたい。
署名バイト代は1000万円もの赤字 この出所が真相解明の最大のカギ
須田)そして私は今回、この一件に関して、お金の流れから読み解いていきたいと思います。
どういうことかというと、署名簿に名前と住所を記入するというのはもちろん本人がやったわけではない。全く別の第三者が勝手に名前と住所を書いて押印をしたということです。これがどのように行われたかといいますと、広告代理店がアルバイトを雇ってそのアルバイトを一堂に会場に集めて、何らかの名簿、名前と住所が書かれたものがありそれを書きうつすというそういう作業が行われていたんです。何者かが広告代理店に仕事を発注し、広告代理店が下請けにその仕事を投げ、下請けがアルバイトを雇って会場に一堂に会して書き写す作業をした。当然その広告代理店や下請けはビジネスとしてやっているわけですから、その対価が払われるわけです。先ほど申し上げたようにお金の流れという点でいうと、どうもリコールの会の事務局から広告会社に474万6千円が当初現金で支払われて、仕事の発注が行われた。愛知県警が内々に取材に応じたことによると、最終的にはどうやらアルバイトにトータルで1500万円支払われましたということなんです。とりあえずいま分かっているのは、事務局から474万円が出ました、最終的な出口では1500万円です、差し引き1000万円の赤字が出ているんです。
新行市佳アナウンサー)でもその1000万円がなければアルバイトにお金払えないですもんね。誰かがその1000万円を出したということですか?
須田)どうも広告代理店にはそれほどの現金があったとは思えないし、下請けにもあったとは思えないし、ましてや肩代わりで払うということはしないでしょう。広告代理店と事務局、あるいは事務局幹部との関係を考えていくと、なにか同志という関係でもなければ友人でもない、ただ単に仕事を発注しましたという関係のようです。そうすると意気に感じてそのお金を立て替えるだとか負担するなんていう関係にはないんです。お金がなければ仕事はしませんよという状況なのに、残りの1000万円は誰がどういった名目で出したのか、これが今回の事件の真相を解明していくうえでの最大のカギだと思います。こういった報道はあまりテレビや新聞ではやっていないんですけれども、私が注目したのはそこなんです。
期限1週間前に慌てて体面を繕ったのか
須田)そしてもう1点言っておくとすると、この書き写しの仕事が発注されたのが昨年2020年の10月19日なんです。そして署名集めには期限があり、その期限が10月25日だったんです。
新行)期限の1週間くらい前に発注したということですよね。
須田)そうすると、さっき申し上げたように8割ちょっとが有効ではないですから、これらの無効な署名はあらかた約1週間の間に集中して行われたと。つまりこの違法行為が行われるまでは箸にも棒にも引っかからない状況にあったんではないかなと。
新行)署名された数がそこまで多くはなくて……
須田)だから43万の8割が無効とされているならば、大体10万くらいが有効です。86万必要なのに10万くらいしか集まっていない、格好がつかなくないですか? あれほど強気でリコール活動始めたのに全然集まってない。86万6千筆あつめることは不可能で失敗するにしても、もう少し集めないと格好がつかないんじゃないのと。このあたりがこのスケジュールから見えてくる読み解き。わかりませんよ。わかりませんが、それが実際のところだったんじゃないかなと思います。
おそらく今後事件の操作が進んでいくことによっていろいろ新しい事実が解明されて行くと思いますからそれを見ていただきたいと思いますね
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