サッカー五輪代表をまとめる「3人のキャプテン」の存在

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話題のアスリートの隠された物語を探る「スポーツアナザーストーリー」。今回は東京五輪サッカー日本代表を目指す選手たちのなかから、「3人のキャプテン経験者」にまつわるエピソードを取り上げる。

【サッカーU-24日本代表対ジャマイカ代表】後半、堂安律(中央)のチーム4点目となるゴールを喜び合う日本イレブン=2021年6月12日 豊田スタジアム 写真提供:産経新聞社

東京五輪のサッカー日本代表メンバー決定前、最後の試合となるジャマイカ代表との試合を4対0と完勝したU-24日本代表。五輪本番に向け、期待を抱かせる結果となりました。

特に、エース久保建英(ヘタフェ)や背番号10を背負う堂安律(ビーレフェルト)、期待の1トップ上田綺世(鹿島)という、以前から「攻撃のキーマン」と注目されて来た3人が揃って得点したことは明るい話題です。

ただ、本大会で日本が戦うグループAは、南アフリカ、メキシコ、フランスという強敵ぞろいの「死の組」。グループリーグを突破し、悲願のメダルを目指す上では、守備陣の踏ん張りがカギを握るのは必至です。

だからこそ、注目のオーバーエイジ(OA)に守備に長けた3選手、DFの吉田麻也(サンプドリア)、酒井宏樹(マルセイユ→浦和レッズ)、ボランチの遠藤航(シュツットガルト)を選んだ森保一監督。彼ら3人が加わることで、チーム全体の「成長」を期待しています。

『3人とも絶対的な戦力であり、プレーでチームに貢献できて、経験の浅い選手たちにも影響力がある選手です。プレー以外の面でもピッチ内外で行動を背中で示し、若い選手たちとコミュニケーションを取りながら、彼らの成長を促してくれる3人だと思っています』

~公益財団法人日本サッカー協会 2021年5月21日配信記事 より(森保監督コメント)

ここで注目したいのは、ロンドン五輪キャプテンの吉田麻也、リオ五輪キャプテンの遠藤航と、歴代の五輪キャプテンが2人も加わったこと。これまでU-24のキャプテンとしてチームを支えて来た中山雄太(ズウォレ)とあわせ、3人のリーダーがチームを牽引して行くことになります。

船頭多くして……となる心配もありますが、それぞれ違ったキャプテン像を持ったリーダーだけに、その点も大丈夫ではないでしょうか。

吉田麻也と言えば、2018年のロシアW杯後、前代表キャプテンの長谷部誠からバトンを受け継ぐ際に、「僕はどうあがいても長谷部誠にはなれない。自分のスタイルで代表を引っ張って行かないといけない」と涙ながらに語ったことで有名です。その後、クラブでもキャプテンを任されることが増えた2019年には、自分が目指すキャプテン像として、より明確なイメージを抱いていました。

『僕は何も変えるつもりはない。自分の態度や行動はこれまでと同じまま、自分のやり方で、正しいと思ったことをする。チームにとって何か重要なことがあると感じたら、それを言う。サウサンプトンでも、代表でも同じことするだけだ』

~『サッカーダイジェストWeb』2019年4月10日配信記事 より(吉田麻也コメント)

「重要なことがあると感じたら、それを言う」の具体例が、実際に今年(2021年)の代表戦でありました。3月、A代表が10年ぶりに宿敵・韓国と対戦することが決まった際に、若手代表メンバーに向けてこんな言葉を残しています。

『僕は年上の人達に韓国戦の重要性やいかに勝たなくてはいけないことを伝えられたギリギリの世代で、10年という間が空いてしまったがゆえに、その部分を伝えられていないことに僕の中では若干危惧があります。下の世代の選手たちにこの試合の意味、韓国戦の重要性を理解して、意識をより強く持ってもらいたい。「キャリアの中で一番大事な試合になる」と意識してほしいと思っています』

~公益財団法人日本サッカー協会 2021年3月25日配信記事 より(吉田麻也コメント)

そんな強い決意の吉田キャプテンに牽引され、日本は韓国に3対0と完勝。吉田本人としても、韓国は2012年ロンドン五輪の3位決定戦で敗れ、メダルをあと一歩で逃すことになった相手だけに、その借りを返した形になりました。

東京五輪本番に向けても、この「重要なことがあると感じたら、それを言う」キャプテンの統率力に期待したくなります。

言うべきことは言う吉田に対して、遠藤航は「言葉よりも背中で引っ張るリーダー」と言えます。2016年リオ五輪前のインタビューでは、自らの目指すキャプテン像についてこう述べています。

『手倉森(誠)監督がやりたいサッカーを、自分が一番理解していると思っている。それをプレーで示す、背中で周りを引っ張る。そういうキャプテン像を目指しています』

~『Football ZONE web』2016年1月27日配信記事 より(遠藤航コメント)

「プレーで示す、背中で周りを引っ張る」の言葉通り、今季は所属チームでもまさにプレーで引っ張った遠藤。その結果は数字に表れ、1対1での勝利数を意味する「デュエル・ランキング」で堂々、リーグ1位に。ドイツメディアから「日本のボディガード」「ミスター信頼」といったニックネームを命名されるほど、チームに欠かせない存在になっています。

リオ五輪では1勝1敗1分で、グループリーグ敗退。この悔しさを糧に、リオからの4年間ヨーロッパで揉まれて来た男がチームの中心=ボランチとしてもどんな舵取り役を見せてくれるのかにも注目です。

そして、中山は「対話型のキャプテン」と言えます。2019年11月のコロンビア戦で0対2と完敗を喫した翌月の合宿では、中山主導で選手ミーティングを開催し、チームの問題点や目的意識を再確認したことが話題になりました。

また、OAの3人が加わった新生U-24代表において、自らが「パイプ役」となることでチームの一体感を高めて行きたいと宣言しています。

『主将はフル代表と同じく吉田が務める公算が大きい。中山も「僕より視野に入れているものが多く、見て学ぶ部分は多い。僕はOA組と五輪世代のパイプ役を担う」と、この日は吉田に密着して積極的に対話。一体感を高めるよう腐心していくつもりだ』

~『西日本スポーツ』2021年6月1日配信記事 より

1年前、五輪開催延期が決まった際には、自らの言葉で正直な気持ちを語ったことも話題になりました。

『下を向きそうなこの状況に、自然と上を向いて生活できている自分はいます。これは今まで事象は違えど、苦しい時期にその先にある明るい未来を信じ頑張り続け、その未来にたどり着いた時に自分に起きた事が全て繋がっていると思えた事を経験しているからです。今回も明るい未来に向かって、今のこの現状をポジティブに行動し続けたいと思います』

~中山雄太Instagram 2020年3月25日投稿文 より

国難と言える状況で挑む五輪だからこそ、中山のポジティブに行動する姿勢もまた、チームの一体感を高めてくれるはずです。

OAでの選出がほぼ決定事項の吉田、遠藤と違って、中山のメンバー入りはまだ決まっていません。過去にも、アジア予選では不動のキャプテンだった選手が本大会ではメンバー外だった事例はあります。それでも、三者三様のキャプテン像がうまく融合すれば、チームはより強固な組織になって行くはず。目指すはメキシコ五輪以来、53年ぶりのメダル獲得です。


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