「経済安全保障包括法」はやらなければならない ~高市早苗前総務大臣が総裁選へ出馬表明

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ニッポン放送「飯田浩司のOK! Cozy up!」(9月9日放送)に外交評論家・内閣官房参与の宮家邦彦が出演。高市早苗前総務大臣の自民党総裁選への出馬表明について解説した。

自民党総裁選への出馬表明を行う高市早苗前総務相=2021年9月8日午後、国会内 写真提供:産経新聞社

自民党の高市早苗前総務大臣が総裁選へ出馬表明

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高市前総務大臣)私、高市早苗は日本を守る責任と未来を拓く覚悟を持って、ここに自民党総裁選挙への立候補を表明いたします。日本経済強靭化計画、いわゆるサナエノミクスの3本の矢は、「金融緩和」、「緊急時の機動的な財政出動」、そして「大胆な危機管理投資・成長投資」でございます。

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飯田)9月8日に国会内で開かれた、高市早苗前総務大臣の出馬表明記者会見の模様をお聴きいただきました。自由民主党の総裁選に立候補することを正式に表明したということで、出馬表明は岸田文雄前政調会長に続いて2人目となります。政策がさまざま出てまいりましたが、どうご覧になりましたか?

宮家)私は立場上、「どの候補者がどう」ということは言い難いのですが、まず嬉しかったのは、いろいろな経緯はあるけれど、総裁選が行われ、候補者が出て来て、具体的な政策案を出して堂々と議論しているということです。最近はあったようでなかったことです。その意味では、金融緩和、そして財政出動。安倍さんの考え方が踏襲されているのだろうなとは思いましたが、サナエノミクスですか。それ以外にも新しい「経済安全保障包括法」。先端技術の海外流出を防ぐと。これは絶対にやらなければいけないことですから、どんどん議論を進めて欲しいですね。

外交だけで票を獲ることはない

飯田)経済安全保障、サプライチェーンの話なども出て来ましたけれども、昔であれば外交というのは票にならないと言われていました。その感覚は変わって来たと思っていいですか?

宮家)どうですかね。外交だけで票が出るというのは、世界どこへ行ってもありません。

飯田)アメリカ大統領選であっても。

宮家)アメリカでも、「オールポリティックス・イズ・ローカル」というわけで、政治はローカルなのです。もちろん、外交的に失敗すれば、票が減るという可能性はあります。しかし、基本的に外交は特定の政治家のためにやるというよりは、むしろ日本のため、米国のため、自国のため、国益を最大化するためにやっているわけなので、本来はコンセンサスがあって然るべきところだと思います。そういう意味で、外交で票を獲ろうと思ったら、なかなか難しいと思います。しかし、やるべきことはやらなければいけないのですが。

自衛隊機のアフガニスタン派遣についても指摘

飯田)高市さんの会見を私も取材していたのですが、話題になっているところだと、アフガニスタンへの邦人の救出について。現地政府の承認や現地の安全が確認されて、という派遣要件に関しても、かなり踏み込んだ指摘をされていました。

宮家)そうですね。誤解を恐れずに言わせていただくと、安全が確保された条件で自衛隊が出るということは、ちょっとおかしいでしょう。安全が確保されているのであれば、民間の航空機が行けばいいのです。そうではなく、民間の航空機が行けないような状況だからこそ、自衛隊機が行くのです。安全が100%確保されているわけではないけれども、訓練を受けた人たちが、ある程度リスクを取りながら、日本国民なり、アフガニスタンの協力者も含めて連れて帰ろうとすること自体について、「安全が確保されていなければいけない」のでしょうか?冗談ではないと思います。

飯田)安全が確保されていなければいけないというのは。

宮家)ある程度の覚悟はある。それがおそらく現場の気持ちです。「リスクは取ります。その代わり、私たちも訓練を受けていますから、最善の努力で危険がないようにします」ということでないといけない。そのためには法律を変えなければいけません。でも、それは初めからわかっていたことです。2015年の安全保障法制のときも議論はしたけれど、中途半端な状況と言ったら失礼かも知れませんが、現行法ではうまく行かないに決まっています。決断に時間がかかるのも当然です。であれば、「初めからちゃんと法律作ってやってよ」ということになるのかなと。徐々に試行錯誤するということは仕方ないにしても、法律改正は方向性としては正しいのだろうなと思います。

飯田)その話が、その先で憲法の議論になって行くのか。憲法についても、自民党はすでに改憲4項目を出していますけれども、これも議論するという発言がありました。

宮家)もともと自民党は憲法改正の政党だったわけだから、そういう意見が出てもおかしくないですね。

アフガニスタン東部ジャララバードに入った反政府勢力タリバンの戦闘員ら。=2021年8月15日 AFP=時事 写真提供:時事通信

岸田氏は「経済安全保障推進法」を定めると表明

飯田)他方、岸田文雄さんも記者会見を行っておりまして、経済安全保障に関して担当大臣を新設するということ、あるいは「経済安全保障推進法」を定めるということも表明しております。

宮家)当然新しい法律をつくるべきです。でも、いちばん大事なことは、国家安全保障の問題に関わるものについては、相当程度、通常の商業取引や市場の自由な取引に例外をつくるべきだ、ということです。

国家安全保障の問題についてだけは、政府が修正できるという条項を入れるべき~通常の国の軍隊の法律は「ネガリスト」

宮家)各国とも形は違いますけれども、そうした条項を持っている。しかし日本の法律は、どれも「国家安全保障上の問題はない」という前提でつくられていて、例外的にそういう規定が入っているという状況になります。もともとは法律をつくるときにも、基本的には自由だけれど、国家安全保障の問題についてだけは、「政府として言わせていただきますよ、修正させていただきますよ、変えさせていただきますよ」という条項を入れておかなければいけないわけです。

飯田)国家安全保障の問題についてだけは。

宮家)それが入っていれば、わざわざ経済安全保障推進法や包括法などと言っているけれど、本当は、新しい法律をつくるのではなくて、それ以前の段階で包括的に国家安全保障問題の取り扱い方について、法律の体系を変えなければいけないと思うのです。

飯田)その前の段階で。

宮家)なぜこのようなことを言うかというと、いままでの基本的なやり方は「ポジリスト」というのですが、「これだけはやっていいですよ、これならできますよ」という建付けです。しかし、普通の国の軍隊の法律は「ネガリスト」なのです。つまり、「これはやってはダメだけれど、それ以外はすべてやっていいよ」と。日本でこの種の法律を新しくつくるというのは、結局「ポジリスト」の方式なので、どうしても後手後手になるような気がします。でも、ないよりはもちろんいいのですから、ぜひ新しい法律をつくっていただきたいとは思いますけれど。

有事の場合の「自由のあり方」については柔軟な議論が必要

飯田)経済安全保障面で、企業に対して、あるいは個人に対して規制をかけようとするとき、外為法で一部が使えるとはいえ、あまり武器が多くないということは指摘されています。

宮家)ないのですよ。いままでその種の法律をつくろうとした人たちはたくさんいたはずなのだけれど、すべて議論が途中で終わっていたわけです。しかし、これだけ問題が積み重なって、「いまの法律のやり方だけでは、十分機能的に動けない」ということはわかっているのに、どうしてこの議論が進まないのかと考えると、とても残念な気がします。

飯田)その議論を突き詰めて行くと、財産権。財産の自由であるとか、あるいは移転の自由というものが憲法で保障されているではないかという、憲法問題になって来る。

宮家)もちろんそうです。でも、他の国の憲法を見てください。そのような自由もあるけれど、自由というのは当然、義務を伴うものなのです。そして国の安全全体に問題が生じたときには、その自由がすべて制限されるというわけではありませんが、少なくとも考え方は変えなければいけない。有事の場合の自由のあり方については、もう少し柔軟な議論が必要だと思います。

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