台湾有事・尖閣有事のとき、「米軍は出て来るのか」という不安も

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ニッポン放送「飯田浩司のOK! Cozy up!」(10月19日放送)に朝日新聞編集委員で元北京・ワシントン特派員の峯村健司が出演。中国が開発を進める極超音速兵器について解説した。

台湾有事・尖閣有事のとき、「米軍は出て来るのか」という不安も

習近平主席、SCO・CSTO合同サミットに出席(北京=新華社記者/黄敬文)= 2021(令和3)年9月18日 新華社/共同通信イメージズ

中国が極超音速兵器の実験を行う

イギリスのフィナンシャル・タイムズは、中国が8月に核弾頭の搭載が可能な、音速の5倍以上の速度で飛行する極超音速兵器の実験を行ったと報じた。

飯田)これを受けて、中国外務省は昨日(10月18日)の会見で、「ミサイルではなく、宇宙船の再利用技術を検証するための定例の試験だ」と否定しています。極超音速ミサイルというのは衝撃的なニュースでしたが。

峯村)中国はこれまでにも「DF17」という極超音速ミサイルを軍事パレードで披露していますが、これは中距離のものです。今回の場合はもっと高度が高く、地球を周回したということになると、まったく違うものになります。

飯田)ロケットで飛ばして、周回軌道を回ってから落ちて来る。

迎撃をすることは事実上不可能 ~核の抑止力の概念が根底から覆る可能性も

峯村)これはもう、アメリカ本土を射程に入れたものだと考えられます。アメリカのミサイル防衛は、基本的には弾道ミサイルを想定したものです。弧を描くから軌道を予測して迎撃できるわけです。しかもその弧というのが、中国から飛んで来た場合、だいたい北極海の辺りを通って来るので、予測がつきやすかったわけです。ところが、地球の周りを回ったら、南の方から来るのかも知れないし、太平洋を超えるかも知れない。全然予測ができません。さらに弾道ミサイルと違ってコースを変えるので、迎撃が極めて難しくなります。非常に深刻な事態だと思います。

飯田)核弾頭が搭載可能ということになると、核の抑止力の概念が根底から覆る可能性がある。

峯村)あり得ますね。いまのところ中国は核弾頭の数も少ない。長距離の大陸間弾道ミサイル(ICBM)も、アメリカと比べれば数は少ないと言われているのですけれども、急速に内陸の砂漠に格納庫(サイロ)をつくっている動きが確認されています。本気でアメリカとのガチンコ対決を考えている。軍事的にはそういう動きだと見てもいいと思います。

台湾有事、尖閣有事のときに「米軍が出て来るのか」という不安も

飯田)地球の周りの周回軌道にまず投入するということですが、つまり、ずっと回し続けることも可能なのですか?

峯村)理論的には可能です。人工衛星がまさにそうです。ただ、普通の衛星のように回るのであれば簡単に迎撃できるのですが、コースを変えるとなると、まったくわかりません。

飯田)中国側は否定していますし、もともと核の先制攻撃はしないということは一応言っていますけれども、そこも変わりつつあるのではないかという指摘もあります。

峯村)「意思と能力」の話で言うと、意思の部分ですね。変えようと思えば2秒で変えられるわけですので、中国の言う言葉にほとんど意味はないと言っていいでしょう。中国軍の内部でも核の先制不使用を見直す議論を進めているという話は、いろいろなところから入っています。かなり緊張が高まって来ているということです。

飯田)アメリカの核の傘の下にいる日本も、それがなくなることも考えられますよね。

峯村)日本もそうですが、台湾有事を考えても、中国の専門家がよく言うのは、「アメリカは中国の核が怖くて尖閣有事、台湾有事には絶対手を出して来ない」というのが、彼らの自信だということです。中国の核・ミサイルによるアメリカへの脅威がさらに上がって来るとなると、ますます台湾有事や尖閣有事のときに、米軍が介入するハードルが上がることを心配しています。

「敵基地攻撃能力」も含めて抜本的な議論をしなくてはならない

飯田)そう考えると、「どのように守って行くのだ」ということを真剣に議論しなくてはいけないということですか?

峯村)そうですね。いま議論になっている「敵基地攻撃能力」も含めて検討することです。いままでのミサイル防衛だけでは立ち行かないということを意味していますので、抜本的な議論をしなくてはならないと思います。

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