衆院選における各党の外交・安全保障政策 ~新しい時代の「平和主義」はどうあるべきか

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ニッポン放送「飯田浩司のOK! Cozy up!」(10月22日放送)に外交評論家・内閣官房参与の宮家邦彦が出演。各党の外交・安全保障政策について解説した。

衆院選における各党の外交・安全保障政策 ~新しい時代の「平和主義」はどうあるべきか

ニッポン放送「飯田浩司のOK! Cozy up!」

各党の外交・安全保障政策

10月31日の投開票に向けて論戦が行われている衆院選。各党、経済についてフォーカスが当たっているが、外交・安全保障政策も重要な争点の1つとなる。ここでは日本の今後の外交・安保政策について、宮家邦彦氏に訊く。

飯田)各党の論戦では、経済の話が目立ちますが。

宮家)国際的にも選挙で外交・安保が主要な争点になることはあまりないので、注目は集まりにくいのかも知れません。ただ、各党の政策を見ていると、いくつかに分類することができると思います。

欧州から中東、そしてインド太平洋へ

宮家)これは私の意見ですが、大きな流れで言うと、40年代後半~80年代までは東西冷戦がありました。その次には湾岸戦争があり、中東は大事だなと思っているうちに、9・11があり、過去30年間、アメリカは中東でテロとの戦いをやって来たのです。

飯田)中東で。

宮家)ところがその間に中国が台頭して来た。そうすると、我々にとってもそうなのですが、アメリカの関心がインド太平洋に変わりつつある。欧州から中東、中東からインド太平洋へと変わって来たのです。

その流れから見る各党の外交・安全保障政策

宮家)その流れを考えながら、各党の政策を見ていると、冷戦直後からの、日本の平和憲法で「これから平和国家になるのだ」という意味の平和主義があったことは事実です。しかし、いま申し上げたように世界の状況は変わっているわけで、「それだけで本当に大丈夫なのか」という思いもあります。

飯田)状況は変わっている。

宮家)冷戦時代はアメリカの関心も欧州が中心で、日本は直接の当事者ではないため、ある程度、日本が理想を追求できた部分はありました。しかし、インド太平洋が主な関心事になって来たときには、「冷戦時代の平和主義とは違うやり方があるのではないか」という考え方もあります。そして、その中間もあり得る、と見るべきだと思います。

衆院選における各党の外交・安全保障政策 ~新しい時代の「平和主義」はどうあるべきか

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抑止力を必要とする新しい平和主義……自民党、日本維新の会

宮家)そう考えると、自民党や維新の会は抑止力のことを取り上げていて、新しい21世紀の平和主義、それには抑止力が必要ですよという考え方ですね。

伝統的、平和主義的な考えが根底にある……共産党、れいわ、社民党

宮家)一方で共産党、れいわ、社民党などは、どちらかと言うと伝統的、平和主義的な考え方を根底に持っていて、その上でどう対応するかということを考えている。

その中間にある考え方……公明党、立憲民主党

宮家)公明党は自民党に近いけれども、基本的には中間という感じです。また、立憲民主党も自民党とは立場が離れているけれども、現実的な安全保障政策をやろうと考えているというように、大きく分けて3つに分類できるのではないかという印象です。

飯田)共産党、れいわ、社民党は、日米の関係も含めて見直して行こうと。共産党は日米同盟を破棄するという立場です。他方、立憲や公明党は日米同盟を基軸にしつつ、平和的な外交を展開するということを政策に上げています。

宮家)ただ、現実的と言いつつも、辺野古基地の移設を中止して日米地位協定の改定を進めると言っている政党もありますが、これが本当に現実的なのかどうかというところは、もう少し見なければならないと思います。

飯田)そうですね。

宮家)政党ですので、意見が分かれて当然なのですが、そのなかでどの政策が日本にとって重要なのかということを、有権者の方々にはよく考えていただきたいと思います。もちろん、経済もコロナも大事です。しかし、外交の方針もしっかりと持っていなければいけないと思います。

アメリカの関心がアジアに戻って来た

飯田)国際関係の重心がアジアにやって来たということは、日本が近代化した150年の歴史のなかでも初めてのことですか?

宮家)太平洋戦争では、アメリカがフィリピンを獲ったあとに、太平洋の覇権を日米で争ったわけです。そしてアメリカが覇権を確立した。その次に朝鮮戦争が起き、ベトナム戦争も起きたのです。そのあとで冷戦が厳しくなりましたが、ソ連が崩壊して、アメリカの関心は欧州から中東に流れて行った。でもアメリカも最初のころはアジア太平洋・インド太平洋に関心があったのですよ。

飯田)なるほど。

宮家)しかし、この何十年かは関心が薄れていた。その間に中国が台頭したので、「これは大変だ」ということで関心がアジアに戻って来たと見るべきだと思います。

冷戦、中東の時代は直接の対象にならなかった日本 ~今回はキープレイヤーになる新しい時代

飯田)当時のソ連が東西に長かったので、アジアにもコミットした。ヨーロッパ側はアジアに軸足を向けられては困るということで、アメリカを何とか引きずり込もうとして来たわけですね。

宮家)米軍をどの駐留地域で、どのような役割を果たさせるかということについては、アメリカの同盟国の間で綱引きがあったことは事実です。

飯田)そのなかで、当時のソ連は極東に軸足を持って来るかというと、そこまでではなかった。

宮家)ソ連の海軍も極東に増強はされましたが、あくまでも関心は欧州にありました。その意味では、日本は幸運だったのです。欧州にアメリカの関心が行き、比較的極東は安定している。次は中東でのテロとの闘いですが、幸い日本は距離がある分、直接の対象になることもなかったのです。

飯田)欧州、中東では。

宮家)しかし今回はインド太平洋ですから、我々はキープレイヤーになるのです。そういう意味では、新しい時代に入るという気もします。

飯田)一足飛びに過激なところに行くのも危険だし、すべてが平和だということでもいけない。

宮家)昔のままではいけない。では、「我々はどうするべきなのか」ということを考えないといけません。それで国全体、1億数千万人の方向性が変わってしまう可能性もありますから、この選挙でも外交・安保問題には関心を持っていただきたいと思います。

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