ニッポン放送「飯田浩司のOK! Cozy up!」(10月20日放送)に数量政策学者の高橋洋一が出演。中国の経済成長率予測について解説した。
中国の経済成長率予測を下方修正
バンク・オブ・アメリカは10月19日、中国の経済成長率予測を下方修正した。下方修正は2ヵ月で2度目。中国では電力不足で製造業が打撃を受けたものの、中央銀行による大規模な政策支援が遅れていると指摘している。
中国は失業率統計が出ないので、確かな成長率がわからない
飯田)中国の7~9月期のGDPの値が早くも出て来まして、相当減速していると。4%台後半の成長であるということが言われましたけれども、数字も含めてどこを信じればいいのか。
高橋)中国は失業率統計が出ていないので、よくわからないです。失業率統計が出ていれば、成長率をチェックできるのですが。成長率と失業率になぜ関係があるのかと言われてしまうのですけれど、経済学には「オークンの法則」というものがあります。どこの国でも成り立つような関係があるので、そこからある程度推計できるのです。
飯田)なるほど。
高橋)共産圏では失業率統計がないからわからないのですよ。旧ソ連もずっと誤魔化していたのです。「これはどうなのですか?」と言われても、よくわからない。中国の統計は早く出ますが、あんなに早く出るわけがありません。
飯田)9月30日に締まってから、だいたい2週間余り、20日経たずに数字が出ている。
高橋)普通の国は1ヵ月くらいかかります。GDP統計は、いろいろな統計の合算で加工するのですけれど、さすがに2週間では無理だと思います。だから数字自体がよくわからなくて、ポリティカルな意味の数字ということであれば、そこを避けているということなのでしょうけれどね。
飯田)政治的な意味で。
高橋)政治的な意味でね。嘘が激し過ぎるから、「その嘘をなるべく少なくしたい」と思っているのかも知れません。
オークンの法則
飯田)先ほどおっしゃった「オークンの法則」について、実質GDPの成長率と失業率の変化には、負の相関というか、関係があると。感覚的には、「経済が成長していれば失業率は下がるよね」ということです。
高橋)それを数値化して、どこの国でもだいたい成り立つのです。
飯田)つまり、どちらかの数字がある程度正確であれば、裏返しでわかるということですか?
高橋)普通の国では、違う部署で2つの統計をつくらせるのです。中国に関しては1ヵ所でやるので、疑わしいのです。日本ではGDPの方は内閣府で計算しているし、失業率は総務省でやっています。まったく別のセクションなのです。普通は違うセクションでチェックするので、「どちらも嘘はないですよ」ということを言うのです。
飯田)突き合わせて見ると、整合性は取れる。
統計のつくり方自体が怪しい中国
高橋)中国は統計のつくり方自体が怪しいというか。だから「政治的には下げたのでしょう」としか言いようがないのです。
飯田)「実際の足元はどうなのだ」と思っても、わからないけれど政治的にそういう思惑があるということは、相当下げているのではないかと思ってしまいますよね。
高橋)そうですよね。思ったほど成長しないという感じなのでしょうけれども。でも、こんなに高いとは正直言って思えません。
「中国恒大」の問題も財務諸表がないので不良債権がどのくらいあるのかわからない
飯田)「社会のなかでどのような不満があるのか」という話も出て来ます。不動産のバブル崩壊などについても言われていますが。
高橋)あれもなかなか大変です。財務諸表がほとんどないのですよ。
飯田)中国恒大の問題。
高橋)そうです。不良債権は何かと言うと、「出している」と言うのだけれど、例えば外貨債を調達するときには出すのですが、部門が全部わからないのです。
飯田)公表している以上に、次から次へと出て来るかも知れないということですか?
高橋)あっても隠すからわからないのです。不良債権はきちんとした財務諸表がないとわかりません。私も中国に何回も行ったことがあって、そういうことを何度か言ったのですが、基本的にないのです。日本のように財務諸表がないから、わからない。
飯田)日本も不良債権問題には時間もかかって、政治的コストもかけましたものね。
高橋)そうですね。でも日本の場合、一応は財務諸表があるから、そこをインチキしてしまうと大変なことになるので、わかるのですけれどね。金融機関も相手先の財務諸表を持っていますから。中国の場合は金融機関も相手先も国有企業だから、「なあなあ」なのですよ。
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