これだけの要因が考えられる「中国の電力不足」
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ニッポン放送「飯田浩司のOK! Cozy up!」(10月4日放送)にジャーナリストの須田慎一郎が出演。中国で深刻化している電力不足について解説した。
中国で電力不足が深刻化
中国では現在、各地で電力の供給が制限され、電力不足が深刻化している。燃料となる石炭価格の高騰や二酸化炭素の排出量削減に伴う環境規制の強化が原因と見られ、一部地域では住宅地で停電が起こっている他、企業の操業停止も相次いでいる。
飯田)工場によっては、週に1日~2日ぐらいしか操業できないような企業も出ているようです。
国際的な厳しい目によって石炭鉱山開発がスピードダウン
須田)中国の発電は、石炭火力が主軸なのです。自前で調達できるというところもあって使われているのですが、電力需要に見合う分だけの石炭が採れているのかと言うと、必ずしもそうではなく、需要自体が右肩上がりに増えてしまっているという状況です。それに対して石炭の採掘量が間に合っていない。そのために石炭鉱山の開発を相当積極的に行って来た。ところが例の温室効果ガス排出ゼロの問題で、石炭鉱山の開発に厳しい国際的な目が向けられるようになり、開発がスピードダウンしたということがいちばんのベースにあるのです。
飯田)国際的な目によって。
須田)それならば外国から輸入しようと考えたときに、オーストラリアとの関係が微妙になってしまい、オーストラリアから石炭が入って来なくなってしまった。つまり、中国の発電は石炭火力がメインなのに、燃やす石炭そのものの量が減ってしまった。これが、今回の電力不足の大きな要因だと考えられます。
オーストラリアからの石炭が入らない、国外での火力発電所の新設も進んでいない
飯田)オーストラリアとの関係のなかでは、オーストラリア産の牛肉や大麦などに輸入制限をかけています。石炭もある意味、その一環でやってみたけれども、風がこちらに向いてしまったというようなことですか?
須田)そうですね。それを補っても、自前の鉱山開発がスムーズに進むと思ったのが1点目。そしてもう1つが、一帯一路構想のなかで、石炭の火力発電所を外国で新設しているのです。途上国の場合は、まだCO2を排出する権利を持っていて、石炭の火力発電所の新設が容認されているのです。
飯田)一帯一路構想のなかで、外国に火力発電所を新設しようと。
須田)加えて、石炭鉱山の開発も、一帯一路構想のなかでやって来たのですが、中国の経済景気にブレーキがかかってしまった。あるいは、一帯一路構想がある意味、中国的高利貸しのような負の側面が露わになって来て、途上国側も消極的になり始めたところがあります。本来であれば、まだ鉱山開発が容認されている、あるいは石炭火力が容認されている国外でやろうとしたのですが、スムーズに進んでいないという状況があるのでしょうね。
国際的な石炭価格が上昇~中国の要因
飯田)いろいろな目論見が外れて来たということになるわけですね。
須田)抜本的に問題を解決するためには、石炭火力からの発電所の仕組みを変えて行かなければならないのだけれども、一朝一夕には変わりません。中国は国営企業がやっているので動きが鈍いのです。そう考えると、電力不足というよりも、石炭不足をどうするのか。そういうことを前提とした上で、国際的な石炭価格が上がっているでしょう。
飯田)そうなのですね。
須田)そもそも石炭需要があったわけではないので、世界的に石炭価格が上がって来たというのは、中国の要因と考えていいのではないでしょうか。
原子力発電の過渡期にある中国
飯田)石炭を持って来て燃やせば、今度はCO2が出るという、あちらを立てればこちらが立たずという状況になっていますよね。すぐに抜本的な解決へ向かうのは難しいですか?
須田)ここはアメリカとの交渉カードになっているので、中国は2050年の国際基準に向けて、「うちはやらない」と言うわけにはいかない。そこは小出しにして行き、有利なものを引き出すというのが中国の戦略だった。そのためにも原発の開発をしていたのです。原子力発電所の設置を積極的に進めようとして、ちょうどいま過渡期になっているのです。
飯田)そこのところで、いまひっ迫してしまっていると。この先、冬を迎えますよね。
須田)それまでには金の力で何とか石炭を買って来るのでしょうけれど、中国の石炭火力はタイプとしては古いものですから、効率が悪いのです。そこも悩みの1つなのかなと思います。
恒大集団の経営危機は中国経済の成長の限界か
飯田)それに加えて不動産の経営危機も、恒大集団だけでなく、他の不動産にも広がるのではないかと言われています。
須田)恒大集団も含めて、不動産業の問題は、無茶な借金経営と無茶な多角経営をやったというところで、かつての日本のダイエーのようなイメージで捉えてもらっていいと思います。本業のスーパーだけではなく、多角経営に乗り出した。それも外部借入を膨らませて行くような、まさにバブル経営の典型だったわけです。右肩上がりで経済が成長して行けば、成長と利払いが相殺されていたわけなのだけれども、成長にブレーキがかかって、立ち行かなくなって来た。
飯田)成長にブレーキが。
須田)中国経済がいよいよ成長の限界を迎えているところが本質的な問題であって、単に不動産会社が経営に失敗したという話ではないのです。
飯田)中国経済の成長の限界。
須田)それに対していま何をやっているのかと言うと、恒大集団が持っている資産のなかでも、地銀株を地方政府に売って、お金を入れて借金を返すという形を取っているのだけれども、地銀株は本当に価値があるのか。また、市場価格で売られているのかということを考えると、実質的な「地方政府からの公的資金注入」なのです。輸血なのです。だからこれが、いったいいつまで続いて行くのか。なぜ中央政府ではなく、地方政府なのかということも、マーケットが疑心暗鬼になっている問題なのだと思います。
国民のモチベーションの低下が怖い中国政府
飯田)すでに第2、第3代の恒大というような話も囁かれていますよね。
須田)不動産価格が上昇したことによって、普通の人が働いて家を持つことが難しくなって来た。中国の場合は結婚するにあたって、持ち家があることが大前提のようなのです。そうすると、持ち家も持てない、結婚もできない。「そうであれば、もう熱心に働く必要もないのではないか」というように、モチベーションが低下してしまう。そこが中国政府にとって、いちばん怖いことなのではないでしょうか。
飯田)「寝そべり族」などという人たちが出て来ています。
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