「中国海軍世界一」は真っ赤な嘘 ~同盟システムを持たない中国の弱さ

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ニッポン放送「飯田浩司のOK! Cozy up!」(8月24日放送)に地政学・戦略学者の奥山真司が出演。中国海軍の本当の戦力、また、同盟システムを持たない中国の弱さについて解説した。

1日、中国・北京の天安門広場で開かれた中国共産党創立100年を記念する式典で演説し、拳を突き上げる習近平党総書記(国家主席)[中国政府のニュースサイト「中国網」の中継動画より]=2021年7月1日 写真提供:時事通信

水上艦艇ばかりの中国

戦略国際問題研究所上級顧問のエドワード・ルトワック氏が執筆し、奥山真司氏が日本語訳をされている文春新書『ラストエンペラー習近平』。この本を基にして、大国になるほど弱くなるという中国海軍のパラドックスに迫って行く。

飯田)ルトワックさんと奥山さんは長い付き合いですよね。

奥山)そもそもの馴れ初めは2011年くらいですかね。来日中のルトワックさんにある会合でお会いしまして、「あなたのことはよく知っています」と彼に言いました。学問的には、私が専攻して来た戦略学、戦略研究という分野では、彼が第一人者なのです。生きるレジェンドという方だったので、早速話をさせていただいて、「あなたの本を翻訳したい」と言ったら、「俺が喋るから、温泉にまず来い」と言われました。あの方は温泉が大好きなのです。温泉で聞き書きをさせられまして、それを本にしたのがきっかけです。

船には水上艦艇と潜水艦の2種類がある~戦力になるのは潜水艦

飯田)日本を取り巻く環境が波高くなるなかで、ルトワックさんの本、奥山さんが訳している本が、注目されるようになって来ました。

奥山)彼は東アジアにも知識が深い方でして、その状況を彼自身の戦略論を踏まえて、刺激的なアドバイスをしてくれます。

飯田)今回は、中国海軍にフォーカスを当ててお話をしていただくということになっています。

奥山)現在、世界各国が持っている海軍の船は、実は2種類しかないと言うのです。1つは空母などの水上艦艇、もう1つが潜水艦です。水上艦艇はすべて、いざ戦争が起こったら、ターゲットでしかない。船が浮かんでいる時点で、レーダーなどで、どこで動いているのか存在がわかってしまう。そこを対艦ミサイルなどで撃たれてしまったら、1発で終わりです。しかし、潜水艦はなかなか見つからないので、「潜水艦が本当の戦力なのだ」という少し極端な見方を彼はしているのです。

潜水艦の少ない中国と潜水艦が多いアメリカ~実際の戦力は圧倒的にアメリカの方が大きい

奥山)そういう観点から見ると、中国はたくさんの水上艦艇を持っているけれど、潜水艦的な、水面より下の戦力は弱い。アメリカは海上自衛隊も含めてですが、水面より下の戦力においてはアメリカも日本も圧倒的に強いという話をしています。

飯田)そうなのですね。

奥山)サイズ的には中国海軍は、人民解放軍の海軍ということなのですが、数も多いし脅威ではあります。ただ、実際の戦闘態勢になったら、水中の戦力は圧倒的なので、その力はアメリカの方が持っているということを彼は言っています。

習近平共産党総書記・国家主席・中央軍事委員会主席は3月6日、中国人民政治協商会議(政協)第13期全国委員会第4回会議に出席している医薬品・医療衛生界、教育界の委員を訪ねて意見や提案を聞いた。〔新華社=中国通信〕=2021年3月7日 写真提供:時事通信

中国には仲間がいない

飯田)かつて、中国の潜水艦というと、ドラを打ち鳴らすようだと形容されるように、場所がすぐにわかってしまう。音も大きいと言われた時期がありましたけれども、最近は静粛性が上がっていて、脅威が高まっているという報道もありますが。

奥山)テクノロジーを上げているという部分は否定できません。ただ、潜水艦の話云々は置いておいて、私がいつもルトワックさんの話を聞く点で、いい指摘だなと思うのは、「中国に仲間がいない」ということです。それは何かというと、同盟です。

飯田)同盟。

奥山)過去の戦争を見ると、いろいろなテクノロジーを持っている、または物量的に優位な方が勝つと言われていますけれども、実際に勝ち続けている国を見ると、「同盟が強かった方が勝って来た」ということをルトワックさんも指摘していますし、私もその指摘は素晴らしいと思います。

飯田)同盟が強い国が勝って来た。

奥山)その典型が、私が留学をしていたイギリスです。イギリスはナポレオン戦争が1815年に終わりましたけれども、あのあとから、スエズ運河で危なかったり、クリミア戦争などもありましたが、実質的に戦争では負けていないのです。うまくアメリカを巻き込んだり、フランスやドイツを巻き込むなど、いろいろやって、仲間をうまく引き連れて勝っているのです。

飯田)大学受験の勉強ですけれど、私が世界史をやっていたときに、教えてくれた塾の先生に「ヨーロッパ史を理解するのならばイギリスを見ておけ」と言われました。イギリスは大陸で最強になって来る国の敵になるのだと。2番手以下の国を同盟で仲間にして、戦って行くということを必ずやるからと。ロシアが大きくなったらフランスを巻き込んで、ドイツが大きくなったらロシアを巻き込んでしまうのだと。

奥山)その通りです。仲間づくりがうまいのです。

周りが敵だらけだった第二次世界大戦での日本

奥山)日本も歴史を振り返ると、日露戦争のときはイギリス、アメリカを含めてうまく仲間を使っています。ロシアがバルチック艦隊でアフリカの方を回って来てもスエズ運河に入らせないとか、途中でどこかの港に入ったら邪魔するということをやってくれますし、横須賀には「戦艦三笠」があります。

飯田)ありますね。

奥山)どこが売ってくれたかというと、イギリス製です。そういうところも含めて、物資も戦費も調達してくれる。すべてお世話になったところがあるのですが、日本も勝てた戦争を冷静に見て行くと、やはりいい国と同盟を結んでいたから勝っている。

飯田)同盟ですね。

奥山)ところが第二次世界大戦は、我々は教科書でも習いましたが、ABCD包囲網で、周りが敵だらけになり、外交的に負けている状況で戦争をやろうとしていました。これでは勝てるわけがないということです。

飯田)Aがアメリカ、Bがイギリス。

奥山)Cはチャイナ、Dはダッチ(オランダ)です。日本にはろくな同盟相手がいなかった。一応、ドイツはいたのですが、たまにBMWの試作エンジンを送ってくれるとか、金塊を潜水艦で送ってくれましたが、それ以外はほとんど役に立たなかったということです。

3日、米ホワイトハウスで演説するバイデン大統領(ロイター=共同)=2021年8月3日 写真提供:共同通信社

同盟システムを持っていない中国~世界で40ヵ国と同盟関係を持つアメリカ

奥山)いまの中国を見てください。いざというときに頼りになる仲間がいますか? 経済力は強いのですが、同盟システムを彼らは持っていません。仲がいいのは、北朝鮮やラオス、カンボジアくらいです。アメリカは世界に四十数ヵ国の同盟関係を持っています。基地も使えます。軍隊も派遣できる。

飯田)その違いが。

奥山)人間もそうなのですが、国も仲間は大切ではないですか。とりわけ、いざというときに助けてくれる仲間。中国はそういう意味で、仲間を得られない国なのです。システム的に弱さを持っている。

中国に対抗するにはオーストラリアが大事に

飯田)日本も同盟の大切さを常に意識しなければいけません。

奥山)中国に対抗するという意味では、オーストラリアです。今回のオリンピックでも、オーストラリアの選手が日本に感謝してくれていました。オーストラリアはこれからも日本にとって大事な国になって来ます。また、インドもクアッドという仕組みに入っています。日本が自発的に仲間になろうと、みんなとうまくできる状況をつくることが必要です。

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