将来は日本もAUKUSに参加か どのような形が最も効果的な「抑止の枠組み」かを考えるべき

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ニッポン放送「飯田浩司のOK! Cozy up!」(10月22日放送)に外交評論家で内閣官房参与の宮家邦彦が出演。イギリスのカーター国防参謀長がAUKUS(オーカス)について、日本を含めた形で拡大する可能性を示したというニュースについて解説した。

将来は日本もAUKUSに参加か どのような形が最も効果的な「抑止の枠組み」かを考えるべき

米英豪3カ国オンライン共同記者会見=2021年9月16日 EPA=時事 写真提供:時事通信

将来は日本のAUKUS参加も イギリス軍の制服組トップが認識を示す

イギリス軍の制服組トップであるカーター国防参謀長は、米シンクタンクの新アメリカ安全保障センター(CNAS)が開いたイベントで、「AUKUS(オーカス)」について、日本などを含める形で拡大する可能性があるとの認識を示した。

飯田)AUKUSはアメリカ、イギリス、オーストラリアの3ヵ国による安全保障の枠組みです。またカーター氏は、「AUKUSは排他的に設計されていない」と答えたそうです。

日本には日本の事情があり、AUKUSには簡単に加われない

宮家)AUKUSというのは、いい意味で申し上げるのですけれども、これは軍事同盟ですから、クアッドとは違うのです。クアッドはあくまで政治的な対話の枠組みだけれども、AUKUSはオーストラリア、イギリス、アメリカの軍事同盟ですよね。これは太平洋戦争のときの同盟国です。日本が戦った相手ですよ。それがまた復活して、今度は相手が中国ということです。これはこれで強力なのだけれども。

飯田)そうですね。

宮家)CNASというのはアメリカのシンクタンクです。イギリスの参謀長が自由に話すのはいいですが、それはあくまで軍人の1つの見識だろうと思います。これに将来、日本が参加するかしないかといった政治的な話を、あまり軽々しく言ってもらっては困ります。

飯田)軽々しく言ってもらっては。

宮家)各国にいろいろな事情があるし、憲法上の制約もあるわけです。仮に集団的自衛権を行使するにしても、ある程度の制約があるのは仕方がないことです。それが日本の政策ですから。その意味でイギリスの気持ちはわからないでもないけれど、もう少し将来のことをよく考えて話した方がいいのではないかと思います。方向性として間違っているとは言いませんが。

かつてのNATOが置かれた状況とは違う

飯田)集団的自衛権の行使という話もありましたけれども、AUKUSの枠組みで想定されるのは、冷戦期の欧州におけるNATOに近いものですか?

宮家)そうですね。でもNATOほど広範ではありません。数としては3ヵ国でしょう。これにニュージーランドやカナダが加わるとしても、要するに旧英連邦ですよね。そういう形で広がって行くのかどうかも含めて未知数ですから、NATOと一緒のように考えるのは少し行き過ぎかも知れません。

飯田)NATOと同じようだとするのは。

宮家)かと言って、日米安保条約のような2国間だけのものかと言われれば、そうでもないのです。この地域でNATOのような、多国間の安全保障に関する枠組みをつくるべきなのかという議論はもちろんあるのでしょうけれども、東アジアはNATOとは状況がまるで違います。かつてのようにソ連があって、政治体制も価値観も似た国々が入って来るならばわかりますが、東アジア、インド太平洋全部を含めても多種多様で、まだそういう状況ではないし、これからもそうではないと思います。

どのような形が最も効果的な抑止の枠組みなのかを考えるべき

宮家)むしろAUKUSはAUKUS、クアッドはクアッドで、政治も経済も軍事もいろいろな枠組みがあります。重層的に枠組みが重なり合って、1つの抑止力をつくって行くというのがあるべき姿でしょうし、そういう方向にしかならないと思います。AUKUSをどこまで広げるかについては、「どこまでがいちばん効果的、重層的な抑止の枠組みなのかどうか」という全体の議論のなかで出て来ることだと思います。

飯田)ある意味、モザイクを重ね合わせて行くという形になるのですかね。

宮家)NATOのような包括的なものはつくれないわけですから。それに代わるものとして、どのような形がいちばん現実的で、最も効果的なのかということを考えなければいけません。ただ単に広げればいいというものではないと思います。

ヨーロッパの国々がどのような形でインド太平洋地域に関わって来るか

飯田)ヨーロッパの国々のコミットに関して、イギリスはAUKUSとして入って来ています。他方、フランスは先日、日本との間で2プラス2の手前となる実務者での協議を行いました。

宮家)フランスは太平洋に領土があって、太平洋艦隊まであるわけですから。その意味では、フランスも当然ながら関心があります。インド太平洋地域というのは、国際的に考えて最もマーケットが大きい。高い経済成長も見込まれていて、とてもダイナミックな部分です。そこにヨーロッパ諸国が関心を持つのは当然です。特にイギリスの場合はEUから出てしまいましたからね。ドイツがこれからどうするかは別として、フランスだってアジア太平洋、インド太平洋地域に対する関心は当然深まるわけです。

飯田)フランスも。

宮家)日本とアメリカと豪州が、いろいろと考えてやっている。イギリスも入って来る。そうなればフランスも全く関心がないはずはありません。中国とどのように付き合って行くか、どのようにけん制して行くかも含めての問題がある。これから、ヨーロッパの一部の国々はクアッドに入るのか、それともTPP的なものに入るのか。それだっていわゆる重層的な枠組みの1つです。いろいろな手段があって、そのなかで各国がやりやすいものから、インド太平洋地域への関心が高まって行くのではないかという気がします。

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