黒木瞳がパーソナリティを務めるニッポン放送「あさナビ」（10月27日放送）に評論家の山田五郎が出演。機械式時計について語った。

※イメージ　機械式腕時計のムーブメント

黒木瞳が、さまざまなジャンルの“プロフェッショナル”に朝の活力になる話を訊く「あさナビ」。10月25日（月）～10月29日（金）のゲストは評論家の山田五郎が出演。3日目は、機械式時計について---

黒木）山田さんは8月に講談社選書メチエから『機械式時計大全』という本を出版されています。機械式は皆さん好きだとおっしゃいますものね。

山田）いまのクォーツ式時計とは別物ですね。とにかくメカの話が難しいではないですか。なるべくそれをわかりやすく書いています。そのメカの図が「わかりにくい」と言われますので、わかりやすくしようと思って、自分で描いたのです。するとね、わかりやすくすると、辻褄が合わないところが出て来てしまうのです。デフォルメして描くと、「こことここが当たってしまって動かないぞ」みたいな。

黒木）本当にこれ、「時計辞典」みたいなことですね。

『機械式時計大全』山田五郎・著

山田）ブランドの話にしても、85ブランドくらいあるのですけれども、いま、特にスイスの高級時計ブランドは、国際ラグジュアリー資本による買収がガンガン進んでいるではないですか。少し前もティファニーがモエ・ヘネシー・ルイ・ヴィトン・グループに買われました。原稿書いている間に、そのグループが変わってしまうことがあるのです。

黒木）だから2021年版ということですよね。

山田）ブランドに関してはそうです。メカと歴史に関しては変わらないですけれどもね。

黒木）刻々と動いていますものね。

山田）刻々と動き過ぎですよ。

黒木）勉強になりますね、「あ、自分が持っている時計はこうなのだ」という感じで。

山田）これ頭から読むと嫌になってしまいますから、例えば、「私の時計、クロノグラフと言われるのだけれども、クロノグラフって何？」というように。そうしたら、クロノグラフのところだけ見てもらえばいいのです。「私のこの時計どのようなブランドなのかしら？」と思ったら、そのブランドのところだけ見ていただけばいいのです。

黒木）フランクミュラーとか、ティファニー、ブルガリとか。たくさんありますね。

山田）一応機械式つくっているブランドだけ。

山田五郎

黒木）前に来てくださったときは2017年の6月ごろだったのですけれども、このときも時計好きの話を受けたのですけれども。いまの時計事情というのはどうなのですか？

山田）クォーツは、水晶の発振で動く時計です。これをGPSで自動的に合わせます。すると正確さということに関しては、これ以上はないのですよ。衛星は原子時計を乗せていますからね。原子時計と合っているわけですから。精度に関しては、これ以上あり得ないわけです。だからスマホの時間が多分いちばん正確なのです。あれもGPSで合わせますから。

黒木）正確さということでは。

山田）そうすると、腕にする機械式の時計はもう、単純に時間を知るためのものではないのだよと。一言で言えば、「機械仕掛けの高級アクセサリー」ということです。

黒木）機械仕掛けの高級アクセサリー。

山田）宝石で飾るばかりではなくて、歯車の機械自体が宝石に匹敵する。よく聞かれるのですよ。「これダイヤの飾りもないのに、どうして1億円もするのだ」と。「それは1個1個の部品が宝石と同じだからですよ」と。「そのくらい手間がかかっている」ということです。

山田五郎

山田五郎　／　評論家

■1958年12月5日 東京都渋谷区生まれ。大阪府豊中市で育つ。
■上智大学文学部在学中にオーストラリア･ザルツブルク大学に1年間遊学。西洋美術史を学ぶ。
■卒業後、講談社に入社。「Hot-Dog PRESS」編集長、総合編纂局担当部長等を経てフリーに。
■これまで 西洋美術、まちづくり、時計、ファッションなど幅広い分野で　講演、執筆活動を続けているほか、テレビ･ラジオなどメディアでも活躍。
■主な著書に『知識ゼロからの西洋絵画入門』『知識ゼロからの西洋絵画史入門』『知識ゼロからの西洋絵画 困った巨匠対決』『知識ゼロからの近代絵画入門』など。

■2021年3月に 創元社から、アルケミスト双書『闇の西洋絵画史』シリーズを刊行。西洋絵画の「王道の裏面」、「闇」の側面をテーマにした著書となっている。これまで第1期として「黒の闇」篇5巻、来年1月以降に「白の闇」篇5巻を刊行予定。
■2021年8月には講談社から『機械式時計大全』という本も出版。機械式時計に関する山田五郎さんの教養を総動員した1冊。
■2021年1月からは公式ユーチューブ「山田五郎 オトナの教養講座」を開設。登録者数25.4万人。絵画の解説･疑問･裏話などを中心に話をされています。