41歳で日本S勝利 小さな大エース・石川雅規が“枯れない”理由

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話題のアスリートの隠された物語を探る「スポーツアナザーストーリー」。今回は、11月24日の日本シリーズ第4戦で、71年ぶりの40代勝利を挙げた東京ヤクルトスワローズ・石川雅規投手にまつわるエピソードを紹介する。

41歳で日本S勝利 小さな大エース・石川雅規が“枯れない”理由

【プロ野球日本シリーズヤクルト対オリックス】本日のヒーロー ヤクルト・石川雅規=2021年11月24日 東京ドーム 写真提供:産経新聞社

『先ほど監督もおっしゃいましたけど、年齢は関係ないと思っているので。マウンドに上がったらまだまだルーキーの気持ちで投げているので。まだまだ一生懸命腕を振りたいと思います』

~『日刊スポーツ』2021年11月25日配信記事 より(日本シリーズ第4戦 試合後のヒーローインタビューにて 石川雅規コメント)

11月24日の日本シリーズ第4戦で、オリックス打線を相手に6回1失点の好投を見せ、41歳10ヵ月で日本シリーズ初勝利を飾ったヤクルト・石川雅規。パワーで押す投手が多いパ・リーグでは、配球の妙や緩急で打者を手玉に取るタイプの投手はほとんどいないため、オリックスの打者たちが戸惑ったことは否めません。

が、それにしても年齢を感じさせない見事なピッチングで、高津監督が讃えたのも頷けます。石川が167センチの小さな体格で、20年間、大きな故障もなく投げ続け、177勝を挙げているのは驚異的ですらあります。同世代の選手たちがほとんどユニフォームを脱いでいるなか、なぜ枯れることなく現役で戦えるのでしょうか?

それは根っからの「負けず嫌い」もあるでしょう。2015年、石川はソフトバンクとの日本シリーズで、第1戦・第5戦と2度先発登板し、いずれも負け投手になっています。第4戦は、6年前に味わったその悔しさと「今度こそ勝利と、日本一を!」という本人の思いが伝わって来るピッチングでした。

さらに今季(2021年)は、プロ20年目で初めて開幕1軍に残れず、2軍スタートとなりました。昨季(2020年)は40歳で開幕投手を任された石川ですが、今季はオープン戦で大量失点が続き、調整不足と見なされたのです。ベテランがこういう経験をすると「そろそろ潮時なのかな……」と思ったりするものですが、石川の心はまったく折れませんでした。体調は万全なのだし、きちんと調整すれば、1軍で投げられる状態に持って行ける、という自信があったからです。このメンタルの強さも、石川の持ち味の1つです。

実際、シーズン途中でお呼びが掛かり、チームが優勝争いをするなか、6年前のVを経験している石川は貴重な存在となりました。援護に恵まれないことも多く、勝ち星こそ4勝止まりでしたが、成績以上に貢献度は高く、だからこそ高津監督も、シリーズの分岐点となる大事な第4戦を石川に託したのです。

石川が枯れない理由はもう1つ、いくつになっても新しいことにチャレンジしていることです。今年の春季キャンプでは、元監督でもある古田敦也氏が臨時コーチを務めて話題になりました。石川は、得意のシンカーを古田氏に受けてもらい、アドバイスを仰いでブラッシュアップ。40代になっても飽くなき進化を求める姿勢は、若手の手本にもなっています。

また、石川のコメントには、ミドル・シニア層の励みになる言葉がたくさんあります。ヤクルトを心から愛するノンフィクションライター・長谷川晶一氏が、今季開幕前、石川にインタビューしたときに、こんな発言がありました。

『自分で自分の限界を決めてしまっては絶対にダメだと思います。以前から言っているように、僕は200勝を目標にしています。でも、200勝を目指していたら、185勝ぐらいで引退すると思うんです。200勝を目指すには、やっぱり、220から230勝する気持ちじゃないと。現状維持を目指しているうちは現状維持はできないですから』

~『週刊ベースボールONLINE』2021年3月26日配信記事 より

自分で限界をつくらず、高い目標を立て、前だけを見てプレーする……この気構えこそ、石川がいまも第一線でプレーできている理由です。現在、石川の通算勝利は177勝。200勝まではあと23勝ですが、石川にとってそれはあくまで「通過点」。彼の意識のなかでは「230勝まであと53勝」なのです。

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