中国が抗議をするのは安倍元総理の発言が「正しいから」
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ニッポン放送「飯田浩司のOK! Cozy up!」(12月3日放送)に外交評論家・内閣官房参与の宮家邦彦が出演。台湾をめぐる安倍元総理の発言に対して抗議を申し入れて来た中国の対応について解説した。
中国が安倍元総理の台湾をめぐる発言に抗議
安倍元総理大臣が「台湾有事は日本有事だ。すなわち日米同盟の有事でもある」と台湾のシンクタンクが主催したシンポジウムのなかで述べたことに関して、中国外務省の華春瑩外務次官補は12月1日夜、垂秀夫駐中国日本大使と緊急会談し、厳重な申し入れを行ったと発表した。日本大使館によると、垂氏は「台湾をめぐり日本国内にこうした考えがあることを中国として理解する必要がある」と反論したという。
飯田)華春瑩氏は「極端に誤った言論で中国内政に乱暴に干渉し、『台湾独立』勢力を強硬に後押しした」と言っています。
宮家)垂さんの言う通りです。こういう考え方があるのは当たり前で、中国として理解しなくてはいけません。「ジャパンタイムズ」にこのことを書いたら、今朝アメリカからメールが来まして、「おお! よくぞ言った」と言われました。「アメリカでは安倍さんの発言について、“日本はこれから中国と大戦争だ”と大騒ぎになっている」とありました。
飯田)そういう伝え方をしているのですか?
宮家)おそらく、中国のプロパガンダが入っているのだと思いますが、一部ではそう伝わってているらしいのです。私が書いたのは、安倍さんは別に中華民国とか独立などと言っているわけではない。中国が万一、台湾に兵を送るということになれば、台湾は与那国島から110キロしか離れていないのだから。
飯田)台湾とね。
宮家)必ず日本に影響が及ぶ。そして米軍に対しても攻撃するかも知れないとなれば、当然、安保条約5条の世界になるわけです。
安倍元総理の発言は北京に対する真面目なメッセージ
宮家)それは何ら新しいことではありません。“Shinzo Abe's no-nonsense message”、「北京に対するナンセンスではない、真面目なメッセージだ」と書いたのですが、珍しく、口の悪いアメリカ人の友人が褒めてくれました。私が言いたいのは、日米中はこういう形で情報戦をやっているわけです。
飯田)情報戦を。
宮家)これも1つの情報戦で、中国がもし本当に台湾に対して何かしようと思うのであれば、「そんなことをしたらこういうことになるのだ」と伝えて、抑止をするわけです。それを安倍さんはやっている。そういう意味では、垂大使もよく反論したと思います。これでいいと思います。
客観的な事実を並べて伝えているだけ ~軍事的なことをすれば経済制裁を受ける
飯田)客観的な事実を並べて、「こうなっているのだから、当然こうなるよね」ということを話している。
宮家)「そうなる可能性がある」ということを伝えているだけですから、別に目新しいことではありません。戦争など始まるわけはない。始めるとしたら中国側から始めるでしょう。
飯田)このスピーチのなかでは、「軍事的なことをすると経済に影響がある」という話をしています。
宮家)自殺行為になりますよと。その通りではないでしょうか。経済制裁を受けたら中国経済は終わります。「それでもやるのですか」ということです。何がいけないのか、よくわからないですね。
中国にとって「嫌なところを突かれた」安倍元総理の発言
飯田)台湾の独立云々ということを、いろいろと中国側は言って来ますけれども、いまの蔡英文政権だって独立ということは言っていないのですよね。
宮家)日本だってそんなことは言っていません。私が書いたのは、安倍さんの発言も日中共同声明の枠から全然離れていないということなのです。
飯田)1972年の。
宮家)その意味では、効果的な一手だったのでしょうね。中国にしてみれば、嫌なところを突いて来たということです。北京オリンピックもあるし、「いらだっているな」という感じはします。
飯田)1972年のラインから一歩もはみ出していないスピーチというのは、そうとう練り上げられた内容だということですね。
手を出したら痛い目に遭うことを最も理解しているのは習近平氏
宮家)そうだと思います。おそらく安倍さんの持論であり、それが中国にとっては痛いところなのでしょう。いちばんわかっているのは、彼らですから。
飯田)実際は。
宮家)実際に手を出したら、痛い目に遭うと。それで失敗でもしようものなら大変なことになると、いちばん理解しているのは習近平さんご自身だと思います。
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