中国が「ヤバイ」状況にある「5つのポイント」
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ニッポン放送「飯田浩司のOK! Cozy up!」(11月16日放送)に地政学・戦略学者の奥山真司が出演。米中首脳会談がオンラインで開催されたというニュースについて解説した。
米中首脳オンライン会談が開催
アメリカのバイデン大統領と中国の習近平国家主席は日本時間の11月16日午前、オンライン形式で会談した。
飯田)日本時間の9時45分ごろから始まったということです。
今後、米中関係はどうなるのか ~いまの中国が「ヤバイ」理由
奥山)オンラインで会談するということですが、習近平さんはゼロコロナを標榜しているわけですから、ここ2年ほど、国外にほとんど出ていません。ここで話題にしたいことは、「米中関係はどうなるのか」というところです。
中国の経済はいまがピークで今後落ちて行く
奥山)「フォーリン・アフェアーズ」という有名な外交雑誌に載った論文を話題にしたいと思います。ハル・ブランズさんとマイケル・ベックレーさんという、中国の専門家とアメリカの大戦略を研究されている2人の研究者が共同で書いているのですが、「中国がヤバイのではないか」と。「ヤバイ」という言葉はいろいろありますけれども、実は中国がピークに達したと。経済や国力もいまがピークで、これから下がって行くだろうという分析をしているのです。中国の国力がピークというのは、日本にとって安心材料のように聞こえますけれども、実は落ちて行くときに、「いろいろとヤバイことになるよ」という話をしているのです。
中国がヤバイ5つのポイント
奥山)どのように中国がヤバイかと言うと、「5つのポイントがある」と言っているのです。中国のような新興大国が、アメリカという既存の大国に挑戦する。日本も30年くらい前に挑戦したと言われたことがありました。ところが日本はそれからバブルが終わり、失われた20年、30年となっているのですけれども、いまはナンバー2の国として中国が台頭しています。
(1)経済成長が鈍化 ~(2)戦略的に囲まれている
奥山)どうヤバイかと言うと、まず1つ目として、経済成長が鈍化し始めている。中国はこれまで2桁成長で来ましたが、今回は4.9%と、初めて小さくなっている。その次に、日本のときにはなかったのですけれども、中国の場合は戦略的に囲まれています。まさに我々日本も含めてなのですけれども、「インド太平洋」という形で囲まれています。
飯田)自由で開かれたインド太平洋。
奥山)そうですね。周りが中国に対して対抗意識を持ち始め、周囲で同盟関係をつくっている。
(3)暴政で正当性に欠ける ~(4)利己的な野心を持っている、(5)軍事・技術面で拡大が続いている
奥山)3つ目のチェックリストは、「中国は正当性に欠ける野蛮な部分があるのではないか」ということです。「暴政で正当性に欠ける」と言っています。4つ目は、利己的な野心を持っている。アメリカにとって代わろうという意志を持っています。そして最後の5つ目なのですけれども、軍事・技術面で拡大が続いている。経済成長が鈍化していて、戦略的に囲まれていて、暴政で正当性に欠けている、利己的な野心を持っている、軍事・技術面で拡大が続いていると。こういう5つの問題を持つ国は、「これからヤバイことになる」という話なのです。
バブルのころの日本と似ている
奥山)経済成長が鈍化していて、国力がピークから落ち始めると、人間もそうですけれども、ピークから落ちたときは傲慢になる部分があるではないですか。バブル崩壊前後の日本もそうだったのではないでしょうか。
飯田)エズラ・ヴォーゲルさんが『ジャパン・アズ・ナンバーワン』という書籍を刊行しました。
奥山)あのときの日本は、いまの中国と同じようなことをやっていると仮定すると、やはり似ているなと思います。当時の日本は「アメリカから学ぶものはない」と言っていました。石原慎太郎さんが『「NO」と言える日本』という本を書きました。
飯田)大ベストセラーになりました。
奥山)これと同じような形で、いま中国はやる気満々なところがあって、「アメリカ何するものぞ」という感じですよね。
飯田)そうですね。
奥山)我々は忘れていますけれども、90年代の日本には強い反米意識がありました。同様に中国のなかでは反米意識が出ていて、あのころの日本と似て来ているのです。そういうときは危ないということです。
焦りから「いまのうちにやっておこう」というメンタリティが働きがち ~台湾を先に獲ってしまおうと
奥山)日本の場合はアメリカと同盟国として仲よくやっているなかで、少しビジネス方面で反目しているという状況でした。ジャパンバッシングなどもありましたけれど、いまの中国は当時の日本と体制も違いますし、敵国同士です。経済的な結びつきは強いですけれども、敵国同士という状況なので衝突に向かう部分が大きいのです。
日本はいまの状態の中国に気を付けなくてはいけない
奥山)人間も国もそうなのですが、特にピークアウトして、落ち始めて来たときは焦るではないですか。そうすると、中国が衝突の方向に向かうのではないか。例えば台湾を先に獲ってしまおうなどと。「余裕があるから、いまのうちにやっておこう」というメンタリティが働きがちなのです。そういう意味で、中国が落ち始めたときに我々は気を付けないといけない、警戒しなければいけないと、この論文を読んで感じました。
「なりふり構わない状況」になりつつあるところが怖い
飯田)いままでであれば鄧小平氏が言った「韜光養晦(とうこうようかい)」という形で、「爪を隠しておくのだ」、「いまは力をつける時期なのだ」という状況が続いていました。しかし、この間の歴史決議で、鄧小平時代をあからさまに否定はしませんけれども、「フェーズは変わったのだ」となって来ているということは、焦りの部分もあるのでしょうか?
奥山)そうですね。「我々に時間は残されていない」という認識があると思うのです。人口が減少し始めている。それと、少子高齢化が日本よりも速いスピードで起こっています。
飯田)一人っ子政策は80年代ごろからやっていますものね。
奥山)「時間的余裕はそれほどない」という焦りがあり、いまのうちに行けるところまで行ってみようと。いままでの中国であれば、「そういうことはせず、なるべくアメリカに攻撃されないような形で」となるのですが、いまはなりふり構わない状況になっているというところが、怖いと思います。
外交的に中国に対する包囲網は既にできている ~クアッド、AUKUS、ファイブ・アイズ
飯田)日本はどうするのかというところです。いままでであれば、台湾に関しても「守るか守らないか」について、台湾基本法などの事実で「やることはできる」というのがアメリカのスタンスだった。最近、それも少し疑問が出て来たという。
奥山)アメリカ側は、敵国認定を中国側に対して行って来ると思うのです。AUKUSによる豪英米、クアッドの日米豪印、ファイブ・アイズによる英米加とオーストラリア、ニュージーランド。外交的な包囲網は既にできていて、あとはアメリカのやる気次第という状況になっています。
バイデン政権が国内の分断をまとめられるか ~中国国民がやる気になることが怖い
奥山)ここで問題なのは、アメリカ自身が国内で分裂している状態で、バイデンさんがなかなかまとめられないということです。そういうときに、対中国という方向で主導権を握って行けるのかどうか。もちろん、気候変動で協力できる部分はやって行くべきだと思うのですけれども、中国に激しい動きをさせないためにも、しっかりと周りで守りを固めておくということは、日本も含めて重要になって来るのではないかと思います。
飯田)中国がアメリカを見るときに、中間選挙や国内で民主党も割れているというところは、「俺たちにとってチャンスではないか」という思考に転換する危険性がある。
奥山)そこで怖いと思うのは、習近平さんや執行部よりも中国国民がやる気になって、「やれ、やれ」という形になることです。中国政府は、COPでは「アメリカと協力します」と柔らかめなことをやって来ているので、逆に中国国民の方が多感になって、執行部に「もっとやれよ」と尻を叩いているような状況が少し見えて来ているのが怖いなと思います。
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