Gグラブ賞のオリックス・宗、7年目の覚醒の陰に「3つの覚悟」

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話題のアスリートの隠された物語を探る「スポーツアナザーストーリー」。今回は、オリックスバファローズのリーグ優勝に貢献。ゴールデングラブ賞を初受賞した宗佑磨選手のエピソードを紹介する。

【プロ野球日本シリーズヤクルト対オリックス第3戦】3回表、適時打を放ったオリックス・宗佑磨=2021年11月23日 東京ドーム 写真提供:産経新聞社

「史上稀に見る激闘」とも呼ばれた今年(2021年)の日本シリーズで、ヤクルトとの激闘の末、惜しくも日本一を逃したオリックス。このシリーズで、優秀選手賞の杉本裕太郎、敢闘賞の山本由伸に負けず劣らず目立っていたのが、7年目でサードのレギュラーに定着した宗佑磨です。

6試合すべてでヒットを放ち、チーム最多の8安打。守っては第3戦で失点につながるまさかの大暴投もあって、オリックスファン以外でもその名を覚えた人は多いはず。そんな宗がこのたび、自身初のゴールデングラブ賞受賞という栄誉を手にしました。

今シーズンのオリックスと言えば、ラオウ杉本が「6年目の覚醒」として話題になりましたが、ブレイクまでの長さで言えば、7年目の宗ももっと語られてしかるべき選手です。

横浜隼人高校では甲子園出場経験がなかったものの、類い稀な身体能力を見込まれ、2014年、ドラフト2位の高評価でオリックスに入団。ところが、もともと期待されていたショートでは通用せず、外野手に転向。そこでも、レギュラーになかなか定着できない状況が続いていました。

そんな苦しい状況から、宗はいかにしてレギュラーの座をつかみ、自己最多の139試合に出場、ゴールデングラブ賞受賞とブレイクを果たせたのか? その背景にあったのは「3つの覚悟」です。

1つ目の「覚悟」は、今年の春季キャンプでの出遅れがきっかけでした。

昨シーズン(2020年)、当時まだ2軍を率いていた中嶋監督からの勧めもあって、外野手から三塁手への転向を決めた宗。結果的に1軍出場機会も増加し、いよいよ勝負の年、の意気込みで迎えるはずだった今年の春季キャンプ。下半身のコンディション不良が原因となり、リハビリ組での始動となってしまいます。

結果的に、宗は最後まで1軍キャンプに合流できず。一方、同じ内野手では、自分よりも若い高卒2年目の紅林弘太郎、高卒3年目の太田椋が1軍キャンプでアピールしていました。ここで生まれた焦りこそ、宗の内なる覚悟を呼び起こしたのです。

『今年はずっと2軍かなとか、考えたりもしてました。でも紅林とか太田が出てきて、ちゃんとやんなきゃクビになると。若い選手が、どんどん入ってきて、同じ成績なら若い選手を使うでしょう。若手と言われるけど、もう7年目。クビになる選手も見てきたし、先の短い世界。覚悟が足りなかったと思いました』

~『スポーツ報知』2021年8月18日配信記事 より

2つ目は、チームメイトが気づかせてくれた「覚悟」です。

外野手に転向したとき、ともに汗を流した3学年下の可愛い後輩・西浦颯大が国指定の難病「両側特発性大腿骨頭壊死症」を患い、9月24日に引退を表明。するとその日の試合前、宗はベンチ前での円陣でナインに向けてこう声を張り上げました。

『彼みたいに野球がしたいと思っている若い子でも、野球ができなくなってしまうときがあります。いつそうなるか、みんな分からないんですよ。今日ケガしてできなくなるかもしれない。全員、そういう熱い気持ちを持って、1試合1試合取り組んでいってください。今日も絶対に勝ちます! いや僕ら勝たなきゃいけないんです! 最後まであきらめず戦っていきましょう!』

~『週刊ベースボールONLINE』2021年11月7日配信記事 より

宗の叫びが導火線となったのか、オリックスはこの日から引き分けを挟んで8連勝。このとき優勝争いを演じていたロッテに3連勝したことが、後に大きくモノを言いました。また、球団50年ぶりとなる「3試合連続完封勝ち」といった劇的な勝利も続き、リーグ優勝につながる終盤の勢いを生んだのです。

3つ目は、そんな宗を信じてサード転向を進め、我慢して起用し続けた中嶋監督の「覚悟」です。

宗に対して「打てなくても使うから、積極的に行け」とシーズン中から言い続け、凡退しても「終わったことはしょうがない、次やり返せ」と我慢強く使ってくれた中嶋監督。そのブレない信念に対しては、周囲で見ていたコーチ陣からもこんな声が聞こえて来ます。

『監督はすごく寛大です。我慢強い。やらせてみて、失敗したら次考える、という感じ。だから選手はやりやすいと思います。基本的には失敗するものだから、ということを前提に考えていて、じゃあそこからどうするんだ、というところを大事にされている』

~『Number Web』2021年10月28日配信記事 より(オリックス・田口壮コーチのコメント)

もちろん、野球選手にとって大事なのは、1年だけではなく、毎年継続して結果を出すこと。初めて1年間活躍できた宗にとって、むしろ真価が問われるのは来年(2022年)以降です。

日本シリーズ第6戦、死闘の末に1点リードされて迎えた12回裏、セカンドゴロ凡退で「最後のバッター」となり、ヤクルトの日本一を許してしまった宗。あの最後の打席こそ、次なるステージへ羽ばたくための出発点かも知れません。このオフをいかに過ごし、来シーズンにつなげるのか? 26年ぶりの日本一に向けて「覚悟」はもうできている宗。さらなる飛躍が楽しみです。

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