ニッポン放送「飯田浩司のOK! Cozy up!」(12月8日放送)に数量政策学者の高橋洋一が出演。12月8日から代表質問が始まった臨時国会について解説した。
総理の気持ちが入る「所信表明」 ~規制改革がない
臨時国会で岸田総理の所信表明演説に対する各党の代表質問が、12月8日から3日間の日程で始まる。衆議院は8日・9日、参議院は9日・10日に実施。8日は立憲民主党の泉健太代表、自民党の茂木敏充幹事長らが質問に立つ。
飯田)6日に所信表明があり、それに対しての代表質問という形ですが、まず、所信表明についてはどうご覧になりましたか?
高橋)所信表明には、総理の気持ちが入るのです。施政方針演説は役所が書いて、そのまま合わせるものなのだけれど、所信表明はそうではないので、いつも着目します。私は、「規制改革がまたなかったかな」という感じがしました。
飯田)前回の10月のときもおっしゃっていましたよね。
「規制改革」は役所に対する重しであり、株式市場の夢
高橋)「規制改革がない」と言ったら、周りの人が「規制改革はします」と言っていたから、どうなのかなと思っていましたが、やはりなかった。規制改革がないと、役所に対する重しもないし、株式市場の夢も少なくなるなと思いました。
飯田)役所に対する重しがない。
高橋)規制改革は役所に対する重しであり、株式市場の業種ごとの夢というか、どこが成長するかというような話が出やすいのですが、そういう話がないのかなと思いました。
飯田)株式市場の。
高橋)一時期は、「新自由主義からの脱却」と言っていたのだけれど、竹中平蔵さんや他の人を新会義に入れたでしょう。それでまた戻ったのかなと思ったのですが、そうでもない。グルグル回るのですよ。1回いろいろな意見を聞いて、こっちに行って、また逆になってと。人の意見をたくさん聞くからいろいろと動くのでしょう。
総裁選で言っていた「所得倍増」はそのまま停止
高橋)「所得倍増」もないでしょう? あれは悲しいですね。
飯田)総裁選のときには言っていました。
高橋)あれは1回も回らなくて、言ったけれどもやめて、終わっているのでしょうか。案件ごとに「まだ動くのか、止まっているのか」を見なければいけないので大変なのですよ。
飯田)それを流れのなかで把握しなくてはならない。
高橋)所信表明を読むのも大変です。
岸田総裁直轄の「財政健全化推進本部」と高市政調会長の「財政政策検討本部」 ~2つの財政部会
飯田)所信表明では、コロナ対策や補正予算について話されていましたけれども、全体としてはどうですか?
高橋)「経済あっての財政だ」などと言っているのだけれども、自民党のなかに岸田総裁直轄の財政部会がありますよね。
飯田)「財政健全化推進本部」ですね。
高橋)一方では、安倍さんが顧問で高市さんが中心となっている「財政政策検討本部」があります。
飯田)そうですね。
高橋)総裁の下にあって、政調会長の下にもある。それぞれ岸田さんと安倍さんがやっているというのは、これはこれで面白いのですが、「何を議論するのかな」と思いました。
飯田)昨日(12月7日)は「財政健全化推進本部」の会合が開かれています。
高橋)「どっちにするの?」という感じです。これが6月くらいまで行われて、1つの政局の種になるのかも知れないと思いながら見ています。
総債務で見るのは誤り
飯田)岸田総理は常々、「短期的なコロナ対策の財政出動と中長期的な財政再建は両立するのだ」とおっしゃっていますが。
高橋)両立するならするのでしょうけれど、具体的な「財政再建目標」はどうするのかという話になります。理論的な話をすると、プライマリーバランスに着目するというのはあまり正しくないのですよ。
飯田)理論的な話では。
高橋)なぜなら、日本銀行も含めた統合政府の話なので、そこのプライマリーバランスを考えないといけないから、政府のなかで考えてもダメなのです。そういうことが理論的に考えられる筋なのだけれど、果たしてそこまで財務省ができるのかどうか。どうもそうではないのですよね。
飯田)税調の議論などでもコロナ増税しかり、短期的なところで手前の部分、財政の見せかけの健全化を図ろうとする。
高橋)前提として債務をグロスと言って、総債務で見るからそうなるのですよ。それが大きいから。普通のファイナンス論で考えると、債務は資産と差し引いたネット(純量)で見るべきです。ネットで見たら、いまはほぼゼロだから、「何をしているのですか」ということになるわけです。
飯田)ネットで見れば。
高橋)総債務で見ると大きいから、「増税が必要だ」という議論になるのだけれど、これは現状の財政の認識問題で、認識いかんだと思います。「総債務で見る」というのはファイナンス論では誤りなので、私は取れないですね。私は「誤りだ」と言ってしまうわけです。「間違いですよ」と。
いまはネット債務がゼロなので積極財政で大丈夫
高橋)たぶんいちばん強硬なのですね。私は「積極財政派」などと言われますが、そうでもなくて、財政の現状を見て判断するだけなのです。財政の現状が危なかったら、それは緊縮になるかも知れないと自分で思う。財政の現状を見て考えるわけです。「いまはネット(純量)債務がゼロだから、当分大丈夫でしょう」としか言いようがないです。当分大丈夫だから、これだったら積極財政で何の心配もありません、という言い方になるわけです。
飯田)それで経済を回して、景気がよくなった方が。
高橋)だから積極主義者でも何でもありません。問題は「現状をどう見るか」ということだけです。
代表質問で注目される議論
飯田)きょうから代表質問で与野党が立つということですけれども、この間に野党も代表が代わり、泉さんになりました。
高橋)どのように質問するのか。18歳以下への現金5万円とクーポン5万円の話などは、簡単な話だと思いますよ。
飯田)給付金の。
高橋)それと、野党は文通費(文書通信交通滞在費)の話など、領収書を公開すべきと言っていますからね。しかし自民と公明は反対だから、法案は数的に通らないでしょう。でも法案を出した以上は、自主的に対応するというのが普通ですよね。
飯田)自主対応で、うちはこうすると。
高橋)領収書を出すのが維新と国民民主と立憲になって、領収書を出さないのは自民と公明と共産になったら、それはそれで面白いですよね。
飯田)政治の姿勢などが、来年(2022年)の参院選へ向けてつながって行く。
高橋)それはそうでしょう。国会が政策を外へ売り出すショーウィンドウになるから、それを見ているといろいろな議論があります。マスコミはそういうものを報道すると面白いと思います。
国会での議論は変わるか
飯田)国民民主党は「対決よりも解決」と言っていますし、立憲も泉さんは「政策で勝負する」という趣旨の発言をしていましたから、変わって来ますか?
高橋)どういう法案を出すのか、この代表質問でわかりますよね。政策で勝負するのであれば。
飯田)維新はもともと対案を出したり、与党と修正協議をしたり、いろいろな形で政策にコミットしようとしていましたよね。
高橋)閣内に入っていませんからね。コミットする立場、よりよくする立場であれば、全部反対ではないですよね。
番組情報
忙しい現代人の朝に最適な情報をお送りするニュース情報番組。多彩なコメンテーターと朝から熱いディスカッション!ニュースに対するあなたのご意見(リスナーズオピニオン)をお待ちしています。