中国が始めてしまった「人質外交」の怖さ ~拘束経験のある元特派員が解説

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ニッポン放送「新行市佳のOK! Cozy up!」(2月18日放送)に朝日新聞編集委員で元北京・ワシントン特派員の峯村健司が出演。中国・上海で50代の日本人男性が拘束されたというニュースについて解説した。

「七一勲章」授与式、北京で盛大に開催(北京=新華社記者/劉衛兵)= 2021(令和3)年6月30日 新華社/共同通信イメージズ

中国の上海で50代の日本人男性が拘束 ~政府は早期釈放を要求

日本政府は中国・上海市で2021年12月、50代の日本人男性が中国当局に拘束されたことを明らかにした。具体的な拘束理由は不明だが、国家安全当局によってスパイ行為に関与した疑いが持たれているとみられる。松野官房長官は記者会見で「中国側に対し、さまざまな機会を通じて早期解放を強く求めている」と強調した。

新行)産経新聞によりますと、2015年以降、16人の日本人が拘束されており、中国ではスパイ容疑などで日本人が拘束されるケースが続いているということです。

峯村)私も北京特派員をしていたときは、よく取材中に拘束されていましたので、他人事ではありません。

新行)そうなのですね。

峯村)拘束の「容疑」はほとんど「国家の安全を害した」というものでした。普通にデモや事件取材を取材していただけでも捕まってしまいます。基準がよくわからないので、非常に怖いですよね。

新行)基準がわからない。

峯村)拘束されてからも、いつゴールが見えるのかがよくわからない。容疑や証拠もはっきりと示さないことも少なくありません。日本の取り調べとは違うことが行われます。私は20回以上も取り調べを受けたましたが、毎回心配でした。

反スパイ法の施行以来、拘束されるケースが増える

峯村)私がいたころの中国はここまで厳しくなかったのですが、2014年に中国が「反スパイ法」をつくりました。それ以降、日本人も含めた人たちが拘束され、さらにその後に起訴されて司法手続きに入るというケースが急激に増えました。

新行)反スパイ法の施行から。

峯村)私は北海道大学で研究しているのですが、2019年に同僚の先生が中国に拘束されました。このときも心配しましたが、(今回の件は)それ以来の話になりますよね。

1日、中国・北京の天安門広場で開かれた中国共産党創立100年を記念する式典で演説し、拳を突き上げる習近平党総書記(国家主席)[中国政府のニュースサイト「中国網」の中継動画より]=2021年7月1日 写真提供:時事通信

外交ルートでは解決できない中国の「人質外交」

峯村)私のときも、北海道大学の先生のときもそうだったのですが、国や外務省は基本的に何もしてくれませんでした。

新行)そうなのですか?

峯村)若干恨みを込めて言いますが、取り調べを受けて釈放された後に面会したある日本の外交官の一言は忘れません。私はそのとき、中国のステルス戦闘機の写真を世界に先駆けて撮って、スクープ記事を出したのですが、私の身柄の心配をする前に「どうやってその情報を取ったのですか?」と聞かれて、「おい!」と思いましたね。

新行)そうだったのですね。

峯村)松野官房長官がいろいろ申し入れているという報道がありましたが、外交ルートでいくらやっても無理なのですよ。中国が始めているのは「人質外交」です。「人質をお前が捕まえたら、こちらも捕まえる。そちらが釈放したら、釈放してやる」というもので、まさに冷戦期に米ソで行われていたようなことをしています。その例として、2018年に中国の通信機器大手ファーウェイの副会長が逮捕された事件がありました。

新行)カナダで逮捕されましたね。

峯村)そのとき、ほぼ同時に中国当局は、カナダ人の元外交官と企業家の2人を捕まえて、まさに人質外交をしました。2021年に釈放されたのですが、まさにファーウェイの副会長を釈放したタイミングで、「ではこちらも2人を釈放しますよ」と対応していると考えられます。

新行)人質外交ですね。

峯村)外交ルートでいくら申し入れたところで、どうしようもない状況まで来ているということです。先ほどの件も、カナダが事実上、中国による人質外交を認めてしまっているわけで、この対応は間違いだと思いました。中国は「こういうやり方ができるのだ」とわかってしまったわけですから。

新行)前例ができてしまったということですね。

峯村)そうです。フェーズが変わっていることを考えると、やはり日本は普通に外交ルートで文句を言っているだけではダメだということです。対策を考えなければいけないと思います。

日本にもスパイ防止法の制定が必要

新行)日本に求められる対応はどんなことでしょうか?

峯村)中国は「反スパイ法」をつくって取り締まっているので、日本も法律を含め、制度を整えなければいけないと思います。国内的に反対の意見もあると思いますけれども、国際的な基準がそのようになって来ているわけですから。

新行)国際的な基準に。

峯村)中国だけでなく、アメリカなどもスパイ防止には厳しいです。それに比べて日本は緩いと言わざるを得ず、法整備も含めて国民的に議論し、まずは制度を整えなければいけないと思います。

日本も例外ではない「域外適用」 ~香港で「ビジネスしただけ」が通用しない

新行)域外適用についても懸念があると思うのですが、こちらに関してはどうでしょうか?

峯村)中国のいくつかの法律や国家安全法もそうですけれど、建て付けが域外適用を謳っていますので、確実に起こり得る話で、日本も例外ではありません。すでに第三国から「容疑者」が中国側に引き渡されるケースが出ています。他人事ではないと考えなければいけないところまで来ています。

新行)なるほど。

峯村)特に心配なのは香港ですよね。ビジネスマンなど、香港をトランジットで使う人は多いと思うのですが、香港も国家安全維持法ができて以降は、域外適用になり得ます。例えばあまり歓迎されていない日本の新聞記者が、香港でトランジットしようと思ったら、入管で「ちょっとこちらに来てください」と言われかねない。気軽に出張に行って「ビジネスをしただけです」ということが通用しなくなってきているわけです。

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