危険な方向に走る習近平政権 ~孤立化する中国

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ニッポン放送「新行市佳のOK! Cozy up!」(2月22日放送)に評論家の石平氏が出演。オーストラリア国防省がオーストラリアの排他的経済水域の上空を飛行していた哨戒機が中国軍の艦船からレーザー照射を受けたという発表に対して、中国外務省が「事実ではない」と否定したというニュースについて解説した。

危険な方向に走る習近平政権 ~孤立化する中国

習近平氏、辛亥革命110周年記念大会で重要演説(北京=新華社記者/申宏)=2021(令和3)年10月10日 新華社/共同通信イメージズ 写真提供:共同通信社

中国外務省がオーストラリア軍機へのレーザー照射を否定

オーストラリア国防省は、オーストラリアの排他的経済水域の上空を飛行していた哨戒機が中国軍の艦船からレーザー照射を受け、操縦士が命の危険に晒されたと発表した。これを受けて中国外務省の汪文斌副報道局長は「事実ではない」と否定した。

新行)ここでは専門家の石平さんに、北京オリンピック後の中国の狙いについてお話を伺います。おはようございます。よろしくお願いいたします。

石)こちらこそ。

新行)まずは中国軍によるオーストラリア軍機へのレーザー照射について、石平さんはどのように分析されていますか?

石)いま中国を封じこめる2つの国際連携があります。1つは「クアッド」で、もう1つが「AUKUS(オーカス)」ですが、この2つの国際連携のどちらにもオーストラリアが参加しています。

新行)そうですね。

石)クアッドは日・米・豪・印の国際連携であり、オーカスは米・豪・英の連携です。中国からすれば、いまはオーストラリアがインド太平洋地域において中国を封じ込める、中国包囲網の急先鋒という存在になっているのです。

新行)オーストラリアが。

石)今回のレーザー照射は、オーストラリアを脅すような狙いがあるのではないかと思います。

中国外務省は否定しているが

新行)スタジオにはジャーナリストの有本香さんもいらっしゃいます。

ジャーナリスト・有本香)今回の件について、中国外務省は「事実ではない」と否定しています。中国が否定したら、逆に事実なのかなと私などは思うのですが。

石)そうですね。公にすることはできないけれども、暗にオーストラリアに対して恫喝することが中国側の狙いではないでしょうか。

どの国に対しても恫喝的な態度に出て孤立化する中国

有本)オーストラリアも数年前とは様子を変えて、特にいまの政権は、中国に対して厳しい。そんなオーストラリアに対して、仮に中国軍のレーザー照射が事実だとすると、非常に危険な行為ですよね。

石)ますますオーストラリアを敵に回してしまうことになります。オーストラリアからすれば、中国が完全に軍事的脅威になるということです。習近平外交の特徴ですが、力づくで、誰に対しても恫喝的な態度に出る。いろいろな国を敵に回して、自ら孤立化してしまう。

プーチン大統領に迎合することは西側との対立を深めることになる ~危険な方向に走る習近平政権

有本)北京オリンピックでも、西側諸国はどの国もおしなべて外交的ボイコットを行い、政府関係者を派遣せず、中国と仲のいい国だけが来た。一方、いまウクライナで緊張をつくり出しているプーチン大統領とは会談しました。どのような狙いがあるのでしょうか?

石)習近平政権は、西側の外交的ボイコットに苛立っています。2008年夏の北京オリンピックのときには、アメリカの大統領、日本の首相、フランスの大統領、オーストラリアの首相などが北京に来て、開会式に参加しました。しかし今回は、西側の主要国首脳は誰も来なかった。

有本)そうですね。

石)プーチン大統領だけが習近平主席のメンツを立てるためにやって来た。そして習近平主席とプーチン大統領の会談では、中国はまた一歩踏みこんでしまっている。ウクライナ問題は実質上、ロシアとNATOとの紛争でしょう。今回のことで、中国はロシアの肩を持つことになり、NATOも敵に回してしまった。

有本)ロシアの肩を持つことで。

石)中国がプーチン大統領の主張する「ウクライナへのNATO拡大反対」ということを支持し、ロシアがウクライナと戦争することになれば、中国はロシアの戦争に加担することになって、中国と欧米世界、特にNATOとの対立がますます深まるのです。

有本)そうなりますね。

石)プーチン大統領に迎合するために西側との対立を深めることは、中国の国益にならず、これ以上の愚策はありません。習近平政権はいま危険な方向に走っているのです。

危険な方向に走る習近平政権 ~孤立化する中国

ロシアのプーチン大統領(左)と中国の習近平国家主席(ブラジル・ブラジリア) EPA=時事 写真提供:時事通信

今後、台湾、尖閣に関して、より挑発的な行動を強める ~秋の党大会後

有本)今後、例えば台湾に関して、あるいは日本の尖閣に関して、より挑発的、あるいは危険な行動に出る可能性はあると思いますか?

石)私はそう見ています。挑発や圧力を強める。ただし、秋の党大会までは中国も大きな行動は取らないでしょう。

中国「首に鎖をつながれた女性」事件

有本)一方で、いま北京オリンピック以上に、中国で首に鎖をつながれた女性の事件がかなり注目を集めているということです。中国国内でもかなり衝撃的な事件として扱われていて、8人の子どもを持つ女性が首に鎖をつながれた状態で見つかり、江蘇省の政府が真相解明に乗り出すと言われていますが。

石)この話が出たのが、北京オリンピック開催前の1月下旬です。オリンピック開催中も、多くの国民の関心は、北京五輪よりもこの件に集まっていたのです。

有本)北京五輪よりも。

石)普通の女性が誘拐されて、監禁されたということになれば、国民の誰にとっても自分と無関係の話ではありません。

有本)そうですね。

石)いちばんの問題は、江蘇省の下にある徐州市のさらに下に、豊県という政府がありますが、豊県政府が出した調査報告が偽装されていたことが、ネットユーザーによって暴露されてしまったのです。それで今回、豊県の上の徐州市がまた調査結果を出したところで、ネットユーザーにひっくり返されて、やっとさらに上の江蘇省政府が表に出たということです。

有本)ネットユーザーによって。

石)もし江蘇省政府の調査がまた捏造であるということになれば、中国国民は承知しないでしょう。いま中国国民は固唾を飲んで調査結果を見ているのです。しかし江蘇省は、事件の起きた村周辺に壁をつくって封鎖しているのです。

有本)村周辺を。

石)つまり、真相究明するつもりはないということです。むしろ逆のことをやろうとしている。しかし、習近平政権がここまでやったら、完全に国民の怒りを買うことになってしまいます。北京オリンピックでは晴れやかな開会式、閉会式で中国はすごいと思わせていますが、実際の中国の農村社会では、こういう問題はいくらでもあるのです。

有本)1つの典型的な事件ですよね。

石平)以前、中央テレビ局の行った調査で出した数字では、1年間で行方不明者・失踪者は800万人いるという話もあります。800万人ですよ。

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