ニッポン放送「飯田浩司のOK! Cozy up!」(3月3日放送)にキヤノングローバル戦略研究所主任研究員でスティムソン・センター東アジア共同部長の辰巳由紀氏が出演。米バイデン大統領が現地3月1日に行った一般教書演説について解説した。
米バイデン大統領が初の一般教書演説 ~対露政策強化などを決意
アメリカのバイデン大統領は現地3月1日(日本時間3月2日午前11時過ぎ)、上下両院合同会議で就任後初の一般教書演説を行った。演説のなかで、バイデン大統領はロシアによるウクライナへの軍事侵攻について、「独裁者が侵略行為への代償を払わなければ、彼らはさらなる混乱を引き起こす」と述べ、力による支配を許さない姿勢を示している。
飯田)また、ウクライナ情勢に関して、国連総会の緊急特別会合が開かれていましたが、「ロシア軍の即時撤退」などを求める総会決議を採択しました。賛成141で、中国は棄権だったということです。ここでワシントンから、キヤノングローバル戦略研究所主任研究員でスティムソン・センター東アジア共同部長の辰巳由紀さんにお話を伺います。この一般教書演説をどうご覧になりましたか?
辰巳)外交政策面から言いますと、バイデン大統領がウクライナ情勢について、政権の立場をしっかりと示したという感じがします。ただ、内政面では、アメリカ国内の分断を印象づける形の演説だったと思います。
ウクライナ情勢がメインであった
飯田)「プーチン大統領を呼び捨てにした」ということが日本国内では話題になっているのですが、この辺りのことはアメリカではどうなっていますか?
辰巳)こちらではあまり話題になっていないですね。演説前は「北朝鮮や中国に時間を割くのではないか」と言われていましたが、ふたを開けてみると、ウクライナについてかなりの時間を割き、ウクライナ情勢がメインでした。現在、この政権ではウクライナ対応が最優先課題であるということを、改めて示した演説だったように思います。
その他は既定路線の演説
辰巳)どちらかと言えば、既定路線でした。外交的にも、内政的にも、事前から予想されていた優先課題が焦点となっていました。内政については、コロナ後のアメリカ経済やインフレ対策のことでしたので、「予想通り」という感じです。ただ、ウクライナにかける時間が事前の予想で言われていたより多かったという印象です。
ウクライナで米軍がロシア軍と直接対決することはない ~第三次世界大戦につながりかねない
辰巳)「ウクライナがNATO加盟国ではない」ということが大きなハードルになっていますので、ウクライナに直接米軍を投入するということは考えにくいシナリオです。ただ、「投入するかしないかという以前に、アメリカとして何をするのか」というところで、ウクライナに対する軍事支援やポーランドとの国境における難民支援のための米軍動員、あるいはウクライナと国境を接する、NATOの最東端の国々に対する米軍派遣の増強などの支援がメインになって行くと思います。
飯田)何をするのかというところで。
辰巳)バイデン大統領も言っていましたけれど、米軍がロシア軍とウクライナで直接対決するということは、第三次世界大戦につながりかねない状況を生みます。アメリカとしては、可能な限り避けたいというところだと思います。
「ウクライナ情勢に対するアメリカや国際社会の反応を中国が見ている」ことを念頭にしたバイデン政権の対応
飯田)ウクライナに時間を割いたということで、アジアに対しての言及は思ったほどはなかったようですが、アジア方面に対する具体的な言及はあったのですか?
辰巳)アジア方面に対する言及は具体的にはなかったのですが、バイデン政権のなかでは、ウクライナへの対応を始めた時点から「これはヨーロッパだけの問題ではない」と。つまり、「ロシアのウクライナ侵攻に対するアメリカや国際社会の反応」を、中国がしっかりと見ているということが常に念頭にあっての対応だと思います。
スイスやスウェーデンによるウクライナへの支援表明は大きなメッセージとなった
辰巳)今回、国際社会のなかで、これまで中立を保って来たスイスやスウェーデンが第二次世界大戦以来の慣例を破り、ウクライナに対して兵器供与などの支援表明をしたというのは、ヨーロッパを越えた地域へ向けての大きなメッセージになったのではないでしょうか。そして、そこがバイデン政権の狙いであったのかなという気がしております。
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