オープン戦で本塁打量産、「令和初の3冠王」の可能性も 岡本和真、進化の秘密

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話題のアスリートの隠された物語を探る「スポーツアナザーストーリー」。今回は、オープン戦で本塁打・打点の2冠王に輝いた巨人・岡本和真選手にまつわるエピソードを紹介する。

オープン戦で本塁打量産、「令和初の3冠王」の可能性も 岡本和真、進化の秘密

【プロ野球オープン戦巨人対楽天】4回、ソロ本塁打を放つ巨人・岡本和真=2022年3月21日 東京ドーム 写真提供:産経新聞社

『打ったのはスライダーです。変化球についていけました』

~『スポーツ報知』2022年3月22日配信記事 より(岡本和真、オープン戦7号本塁打についてのコメント)

主砲の勢いが止まりません。3月21日に東京ドームで行われたオープン戦最終戦、巨人-楽天戦。4回、楽天先発・田中将大が外角に投じた135キロのスライダーに、巨人の4番・岡本和真は、体勢をやや崩されながらも左腕1本で振り抜いて左翼席へ。2試合連続のオープン戦7号ソロを放ちました。

これで岡本のオープン戦成績は7本塁打・12打点となり、いずれも12球団トップの2冠王。今季(2022年)、巨人では王貞治以来となる「3年連続2冠王」を目指す岡本にとっては、幸先のいいスタートとなりました。

左腕だけでスタンドまで運んだパワーには、ベンチにいた新外国人・ポランコもビックリ。隣にいた戸郷にジェスチャーで力こぶをつくり、食べ物をかき込む仕草を見せました。試合後、何を話していたのか聞かれたポランコは、以下のように答えています。

『岡本が(中南米系の豆である)アビチュエラをよく食べたという話をしていた。それを食べたから彼はパワーがあるんだという話を戸郷にした』

~『日刊スポーツ』2022年3月21日配信記事 より

これに関連して、岡本がパワー増進のため、食生活にも気を配っていることが窺えるエピソードがありました。

『ポランコはドミニカ共和国出身。岡本和もプエルトリコのウィンターリーグに参戦経験があり、中南米の豆料理について熱く語り合ったという』

~『スポーツ報知』2022年3月22日配信記事 より

ここ数年の岡本を見ると、年々体が逞しくなり、筋肉量がアップしているのを感じます。もともと「練習の虫」と言われていますが、最近は練習量を追求するよりも「質」を重視。ハードな練習を重ねて故障をしては元も子もないですし、何よりチームに迷惑が掛かります。昨年(2021年)は、左脇腹痛の影響もあったのか、シーズン終盤、不振に陥りチームも急失速。クライマックスシリーズは出場すらできませんでした。

肉体を強化すると同時に、どういう練習をしたら体に過度な負担がかからず効率的なのか、練習内容についても常に研究を怠らない。いい意味で「マイペース」を守り続けていることが、オープン戦で結果となって表れました。

3月2日の西武戦では、4回の第2打席、今井から今季東京ドーム第1号となる先制2ランを、センターバックスクリーンに叩き込みました。

『今年初の東京ドームで身が引き締まる思いでした。その中で、一発で仕留めることができてよかったです』

~『中日スポーツ』2022年3月2日配信記事 より

今年から東京ドームは、ビジョンが4.4倍の大きさに拡大されるなど大幅なリニューアルが施されました。そのビジョンの手前に飛び込んだ豪快な一発。オープン戦とはいえ、その幕開けの試合で主砲が最初の本塁打を放ったことは大きな意味があります。

またベンチに戻ったあとも見逃せない動きがありました。岡本はメモ帳を取り出すと、さっそくペンを走らせたのです。打席ごとに気付いたことを記し、次の打席に活かす。これも今年から新たに始めた習慣です。続く第3打席は三振でしたが、岡本は試合後、こう語っています。

『3打席目も結果は三振でしたが、テーマを持って打席に立てているので、継続して開幕までにしっかり仕上げていきたいです』

~『中日スポーツ』2022年3月2日配信記事 より

失敗できるのがオープン戦。各打席とも、明確なテーマを持って打席に立っているので、三振した打席でも岡本にとっては糧になるのです。

翌3日、再び西武との試合で、岡本は初回に高橋光成から左翼席へ2号本塁打を放つと、6回には下手投げ右腕の与座から、打った瞬間行ったとわかる特大の3号アーチを左翼席上段へ。2戦で3発、「今年の岡本は何かが違う」と予感させてくれる爆発ぶりでした。

さらに、福岡ペイペイドームで行われた9日のソフトバンク戦では、中日から移籍した又吉の141キロ真っ直ぐを叩き、左翼スタンド中段へ運ぶ4号ソロ。このときのコメントでも、前の打席の“反省”を忘れませんでした。

『打ったのはシュートです。甘い球を逃さずしっかり捉える事ができました。ただ、前の打席のゲッツーになる前の甘い球を仕留められなかったのは反省して、これからの試合で調整していきたいと思います』

~『スポニチAnnex』2022年3月9日配信記事 より

18日、東京ドームでのロッテ戦では“令和の怪物”佐々木朗希と対戦。3点ビハインドの5回、2死満塁のチャンスで岡本に打席が回って来ました。岡本はその前の2試合、開幕戦で当たる中日戦を「上半身の違和感」のため、大事を取って欠場していました。

回復ぶりが気になるところ、岡本はバットでファンの懸念を一掃してみせました。佐々木朗希の159キロ真っ直ぐをとらえ、バックスクリーン右へ。これもまた「打った瞬間」の、鮮やかな逆転満塁弾でした。

『前のポランコが粘ってつないでくれたチャンスだったので、何とかかえしたいと思って打席に立ちました。しっかり捉える事が出来て良かったです』

~『日刊スポーツ』2022年3月18日配信記事 より(岡本和真のコメント)

試合後、体調は問題ないと語り「今年はやりますよ。うん。今年はやります」と繰り返した岡本。この言葉からは「もう去年の轍は踏まない」という主砲としての決意が伝わって来ます。

さらに20日、東京ドームで行われた楽天戦で、岡本はファンをどよめかせました。2点を追う8回、2死走者なしの場面で迎えた第4打席。高めのナックルカーブに対し、岡本は体を泳がせながら、左腕1本で左翼スタンド中段へ運んでみせたのです。

『開幕まであと2試合でしたし、自分がやるべきことをしっかりとやろうと思っていました。一打席一打席大事にしたい』

~『スポニチAnnex』2022年3月20日配信記事 より(岡本和真のコメント)

今季、さらなる進化を目指してフォームを再構築し、実戦で試行錯誤を繰り返しながらオープン戦2冠王となった岡本。実際に「やるべきことをやった」成果が出ているだけに、このコメントには重みがあります。なお岡本はこの試合でも、本塁打を打ってベンチに戻るとすぐにノートを取り出し、配球や反省点をメモしていたことを付け加えておきます。

翌21日、オープン戦最終戦を、冒頭に挙げた7号アーチで締めくくってみせた岡本。これもまた「左腕1本」で運んだ一発でした。心技体とも万全の状態で迎える開幕戦。オープン戦をヤクルトと同率の最下位で終えた巨人ですが、15戦で7発、本番では自分が引っ張って行くとバットで示してみせた岡本に、原監督も絶大な信頼を寄せています。

なお、規定打席には足りませんでしたが、オープン戦打率も3割4厘と確実性も増した岡本。目標の「3年連続2冠」にとどまらず、もしかすると「令和初の3冠王」が誕生するかも知れません。

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