ジャーナリストの須田慎一郎が4月4日、ニッポン放送「飯田浩司のOK! Cozy up!」に出演。アメリカの失業率が3.6%まで改善されたことを受け、日米の景気の違いについて解説した。
アメリカの失業率が新型コロナ前までに改善、FRBの利上げを後押し
アメリカ労働省が4月1日に発表した雇用統計によると、3月の失業率は3.6%と、2月から0.2ポイント改善した。新型コロナウイルスの感染拡大前とほぼ同じ水準まで改善している。順調な雇用回復を受けて連邦準備制度理事会(FRB)はインフレ抑制を優先し、積極的な利上げを進めるとみられている。
飯田)新型コロナの影響で失業率は一時14.7%まで伸びたわけですけれども、感染拡大前の2020年2月の水準、3.5%程度に戻りつつあるということです。ひところは「5%を割れば完全雇用だ」というようなことがアメリカでは言われていたわけですが、だいぶ雇用が回復していますね。
須田)アメリカの場合、労働マーケットがフレキシブルに動くのです。日本は硬直化していますけれども。
飯田)労働マーケットが。
須田)FRBの金融政策として最も注目しているのが、労働市場であり、失業率なのです。いかに失業率を下げていくか。そしてアメリカの場合は、金融緩和をすると間違いなく失業率低下に結びついていきます。そこを目標にしていた以上、クリアしたということで、利上げに動くのは当然の流れだと思います。
開いていく日米の金利差 ~円安が進む
須田)そうなると、日米の金利差が開いていきますから、日本への影響が心配されます。もちろんそれはマーケットも織り込み済みですが、それを受けて円安が進んでいるという状況です。
飯田)円安が。
須田)これはアメリカで運用した方がより有利だからです。かつては「有事の円買い」などと言われましたけれども、そんな状況はなかったのです。日本はデフレですから、円で持っていた方が価格変動のリスクを回避できるということで、円が買われていました。
利上げとウクライナ危機による「有事のドル買い」で円安方向に
須田)もう1点は、日本国内の企業や法人がドルより円買いをして、円で持っているということです。それで借金を返すということなどをやっていたために、円買いが起こっているだけで、別に有事が起こっているから円が買われていたということではありません。ここへ来てウクライナ危機という本当の有事が起こったわけです。それによってドル買いという方向に動いていきました。利上げと有事のドル買いで、ドル円は極めて円安方向に振れているというのが実態です。
エネルギー価格や輸入品の価格も上がっていく
飯田)足元は1ドル=122円50銭付近での取引ということです。ひところは110円を割る時期もあったわけですから、そこから考えると少し円安傾向にある。
須田)円安というのも、エネルギー価格や輸入品の価格が上がっていくという状況になりますから。
飯田)円換算だと当然そうなりますよね。
須田)その辺りで、どう整合性を持たせるのかということが必要だと思います。
輸出企業にとって円安は悪い話ではないが
飯田)一方で、この程度の円安、120円台というのは21世紀に入ってからも何度もありますし、輸出企業にとっては悪い話ではないようです。
須田)輸出企業にとっては悪い話ではないのだけれども、日本はGDPのなかでみると、貿易立国ではありません。確かに輸出関連企業、なかでも自動車や機械などの企業にとっては追い風になるのだけれども、それ以外の企業にとっては痛みになるわけです。
飯田)自動車や機械関連以外の企業にとっては。
須田)国際的なサプライチェーンのなかで部品調達、原材料調達を行っていますから、輸出企業にとってみても、その辺りの価格は上がっていくので、「痛し痒し」ではないかなと思います。
物価上昇にうまくつなげることができたアメリカ ~金融政策だけでなく財政出動も行った結果
飯田)日本はコアコアでみるとデフレであり、アメリカでは、いま物価が上がっているということがあります。それはコロナ対策で相当、財政出動も行った結果であるということですか?
須田)アメリカの場合は、物価上昇につなげる対策がうまくいったのだろうと思います。
飯田)逆に言えば、まだまだ日本は足りないということになりますか?
須田)金融政策だけではいけません。アメリカは財政出動を行っていますから。
飯田)「両輪で」ということですね。
須田)そうです。日本は片翼ですから。
飯田)それだとなかなかうまくいかない。
須田)うまくいきません。
飯田)そうすると、今後の日本の課題も見えてきました。ウクライナ情勢がこうなってくると、なかなか外から上がっていくという機会はないわけですものね。
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