航空・旅行アナリストの鳥海高太朗氏が5月2日、ニッポン放送「飯田浩司のOK! Cozy up!」に出演。ロシア軍によって破壊されたウクライナの航空輸送機「ムリーヤ」が航空業界に与えた影響について解説した。
ロシア軍が破壊した世界最大の輸送機「ムリーヤ」
4月上旬、ウクライナの首都キーウ近郊のホストーメリ空港に駐機していた世界最大の航空輸送機アントノフAn-225、愛称「ムリーヤ」がロシア軍の攻撃によって破壊された。そのムリーヤが航空業界に与えた影響は少なくない。
飯田)千葉県・酒々井町のラジオネーム“89X”さんという方からメールをいただきました。航空関係の仕事をされている方です。「国際線の路線の復活が遅れている上に、ロシア上空は飛べないので、欧州からの便が減っている」ということです。「仕事が減ったままで困っています。燃料代も上がってきています。個人的にはウクライナのアントノフ航空の世界最大の輸送機ムリーヤの破壊がとても悲しいです。まだ会えていなかったので、コロナ禍が収まったらウクライナ旅行として、チョルノービリと絡めて見に行くつもりだったのに。ウクライナ語では夢という意味のムリーヤが復活することを願っています」ということです。アントノフAn-225、愛称「ムリーヤ」という飛行機の破壊は、航空ファンにとってはショックでしたね。
鳥海)そうですね。かなりショックでした。日本には、2010年に名古屋のセントレア空港にも来ましたし、2011年には、東日本大震災のあとにフランス政府がチャーターしていろいろな物資を載せて来ました。災害が起こったときに大量の荷物を運べるのです。
コロナ禍で貨物の需要が高まっている
鳥海)ムリーヤは貨物を250トンまで運ぶことができます。いま使っているのは1機しかないので、希少価値というところも含めて悲しんでいる方が多いですね。
飯田)特に新型コロナが世界でまん延し始めてからは、新型コロナワクチンの輸送でも活躍していたのですよね。
鳥海)コロナ禍で国際線に乗る人は少ないけれど、貨物量は多く、貨物の単価は上がっているので、稼ぐこともできる飛行機だったのです。
飯田)なるほど。むしろ需要があったのですね。
ムリーヤを復活させたいゼレンスキー大統領
飯田)一応は2機つくられたという話ですけれども、もう1機の方は途中でやめてしまったのですよね。
鳥海)完成したのは1機です。1988年に初飛行が行われました。旧ソ連時代に宇宙往還機「ブラン」を輸送するためにつくられたものです。
飯田)ゼレンスキー大統領は「ムリーヤを復活させるのだ」というようなツイートもしていましたけれど、難しいのでしょうか?
鳥海)かなり大変だと思います。やはりまだ1機しかない飛行機ですし、この飛行機はエンジンが6個あるのです。エアバスA380やジャンボなどは4発機ですが、いま時代は2発の双発機です。
飯田)双発機が主流に。
鳥海)そのなかで6発というのは、それだけでつくるのが大変です。募金活動も始まっているのですが、ウクライナが戻ってくるときの象徴になればいいでしょうね。まだ戦争中ですので、終わってからになると思います。
ウクライナ情勢の影響でヨーロッパへ行く人は限られた人だけ ~シベリア上空を飛べず、通常よりも所要時間が5時間多くなる
飯田)ウクライナ情勢は日々刻刻と変わっていますが、航空旅客に対する影響も相当大きいですよね。
鳥海)大きいです。日本人も海外に行けるようになり、バンコクやオーストラリア、ロサンゼルスなどに行かれる方は多くなっています。ウクライナ情勢がなければ、ゴールデンウィークはパリやロンドン、イタリアなどへ行っていた人は多かったと思います。いまは便数が少ないのと、時間が前よりも5時間くらい余計に掛かるので、行くことができる人は限られます。
飯田)シベリア上空が飛べないからということですか?
鳥海)そうです。シベリア上空が飛べないことで北回り、南回りを活用して、直行便で言うと4時間くらい時間が余計に掛かります。中東のカタール航空やエミレーツ航空などを使い、中東経由で行くのが価格的にはお得だと思います。
飯田)昔はシベリア上空が飛べないと北回り、南回りのヨーロッパ線がありました。アンカレッジ経由のものも復活しているのですか?
鳥海)飛行機の性能がよくなりまして、特にボーイング787であれば、アンカレッジの方を通るのですけれども、降りなくてもいいのです。昔は燃料が足りなくて降りていたのですけれども、いまはその上を飛んでもノンストップでヨーロッパまで行けてしまいますので、経由便にはなりません。
飯田)なるほど。
鳥海)アラスカ上空を飛ぶくらいの感じですね。
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