「実質賃金0.5%増」だけでは「景気が回復したとは言えない」理由

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数量政策学者の高橋洋一が5月25日、ニッポン放送「飯田浩司のOK! Cozy up!」に出演。2021年度の毎月勤労統計調査について解説した。

2022年5月16日、会議のまとめを行う岸田総理~出典:首相官邸ホームページ(https://www.kantei.go.jp/jp/101_kishida/actions/202205/16keizaishimon.html)

2021年度の毎月勤労統計調査、3年ぶりプラス

厚生労働省が5月24日に発表した2021年度の毎月勤労統計調査によると、基本給や残業代などを合わせた労働者1人あたりの現金給与総額(名目賃金)は、月平均で前年度と比べて0.7%増の32万604円であり、3年ぶりのプラスとなった。新型コロナの影響で経済活動が大きく制限された2020年度からの反動で、残業代が大幅に増えたが、コロナ前の水準には戻っていない。

雇用を増やすと賃金の平均値が下がり、実質賃金は上がらない

高橋)実質賃金が前年度に比べて0.5%増ということです。アベノミクスで名目賃金も上がり、雇用も伸びたのだけれども、実質賃金だけが上がらなかったのです。

飯田)実質賃金だけが。

高橋)それは、雇用を増やしすぎると、給料の低い人から雇用されることになるからです。その前まで失業していて、所得ゼロの人が入ってくる。そうなると、賃金の平均値が下がるという話だったのです。

失業が増えると賃金の平均値は高くなり、実質賃金が上がる可能性も

高橋)今回の統計については、まだ細かく分析していないので、断定的には言いにくいのですが、少し失業が増えたのです。ということは、いままで給料をもらっていた人がいなくなる。失業が増えるということは、通常は賃金が低い人から辞めさせられます。そうすると、それよりも賃金の高い人が残るので、平均値は高くなる可能性があるのです。

飯田)そうですね。

高橋)残業代が増えているという話もありますが、それはある意味で基本給の平均値が低い人を落とすのと、残っている人に残業させた場合、急に増える可能性があります。

飯田)賃金が高い人が残業すれば高くなる。

高橋)そういう意味では、雇用者数が減ったから、その結果として給料が増えたのか……。その可能性もありますので、これが本当にいい方向なのかどうかは、よく見ないとわからないですね。

賃金ではなく「雇用がどれだけ確保されているか」がポイント

飯田)まず、数字の分析も必要であると。「雇用というものは遅れてくる数字だ」と、高橋さんは何度もおっしゃっていますね。

高橋)雇用が悪化して、もしかすると、さらに給料が高くなるかも知れない。しかし、見るところは賃金ではなく、雇用なのです。「雇用がどれだけ確保されているか」ということが先です。

飯田)雇用がどれだけ確保されているか。

高橋)雇用が全部確保されていて、さらに人手不足になると、賃金が徐々に上がっていきます。そういう意味では、賃金、給料の話だけで右往左往するよりも、一緒に雇用を見なければいけない。どちらかと言えば、雇用量を先に見るのです。そこがポイントです。そこを見ないで賃金の話だけすると、判断を間違えてしまいます。

政策転換しても失業率を増やさないためには、GDPギャップを埋めなければいけない

飯田)コロナ禍においても、雇用調整助成金などがあるということで、失業率は3%足らずです。

高橋)これは世界でも少ない方で、政策の意図通りです。ポイントなのは、景気をよくしてGDPギャップのようなものを縮めないと、あとで失業者が増えてしまうのです。そういう意味では、補正予算が2.7兆円というのは、額が1桁違います。

飯田)いまは雇用調整助成金等々で持っていても、政策を転換した場合、そこから首切りに走るということになると、一気に数字が悪くなってしまう。

高橋)GDPギャップさえあれば、原材料価格やエネルギー価格も転嫁できるし、需要もそれなりに出ます。そうすると、あまり失業者は増えないのです。GDPギャップを早く埋めなければいけないのだけれど、今回は埋めていません。

飯田)補正予算は2.7兆円という数字ですが。

高橋)私は「27兆円」と見間違えたくらいですよ。

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