三遊亭とむ 落語の覚え方は「1日1ページ」
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黒木瞳がパーソナリティを務めるニッポン放送「あさナビ」(6月2日放送)に落語家の三遊亭とむが出演。二ツ目昇進から現在について語った。
黒木瞳が、さまざまなジャンルの“プロフェッショナル”に朝の活力になる話を訊く「あさナビ」。5月30日(月)~6月3日(金)のゲストは落語家の三遊亭とむ。4日目は、落語のネタの覚え方について---
黒木)好楽師匠のところに入って3年は修行をされて、それからどのような経路を辿って寄席に出られるようになるのですか?
とむ)修行中も前座として必ず高座に上がることはできるのです。ありがたいことに僕も、修行初日から高座に上げていただいています。修行を終えて晴れて二つ目になりますと、自由に活動ができるのです。羽織を着たり、好きな色の着物を着たり、袴をつけられたりと。
黒木)きょうは真っ赤なお着物を着ておられますけれども。
とむ)自分のなかでラッキーカラーを赤にしています。
黒木)そうなのですか。
とむ)それで赤い着物を着させていただくことが多く、きょうも着させてもらいました。
黒木)元気が出る色なのですってね。
とむ)元気出ますよね。古典落語では赤がうるさいときもあるので、そういうときには、もう少し抑えた色のものや、黒紋付を着させてもらうこともあるのですけれども。そういう着物を着られるようになるのも、修行を終えた二つ目からです。
黒木)二つ目から。そのあとはどうなるのですか?
とむ)そして、真打になります。真打になりますと「師匠」と呼ばれるようになりまして、あと弟子を取れるようになります。ですから、やはり真打になって、初めて本物の噺家のスタートなのかなと思います。
黒木)真打を目指して、いろいろと活動なさっているわけですけれども、どのような日々を送っていらっしゃるのですか?
とむ)真打というのは,寄席でも最後のトリがとれるようになりますので、そういうときには大きな話もできなければいけないということで、ネタ数を増やして,その準備はしています。自分の腕を上げていかなければならないと思うので、落語を一生懸命精進してやっています。
黒木)古典も創作も両方やっていらっしゃる。
とむ)創作落語も多いですね。自分でつくるのも好きなので。毎月1本はつくっています。
黒木)志の輔さんが来られたときに、どうやってあの長いセリフを覚えているのですかと伺ったのですよ。そしたら「普通に覚えているから、意識したことはないけれど、たぶんここで笑いがくるだろうみたいなところまでを一気に覚えて、笑いが次どこでくるかというような区切りで覚えている」とおっしゃっていました。
とむ)すごいですね。僕は全然違いますもの。
黒木)どうやって覚えているのですか?
とむ)僕は1日1ページです。2ページ目で眠くなっちゃから。
黒木)1ページ1ページコツコツコツコツ、真打を目指して。
とむ)うちの師匠は紙に起こしていないので、何度も繰り返し聞いて。
黒木)耳で覚えてしまう。
とむ)昔は「三遍稽古」と言って、3回師匠がやってくださって、それで覚えろというシステムだったそうです。いまは録画して何回も見ることができますけれども。僕は書かないと覚えられなくて。1分くらいなのですよね、1ページって。30分の落語であれば、1ヵ月間で覚えるという。ただ、前の日飲みすぎてしまう日もあるので、3日間だけ休みをもらっています。ですから33日で一応覚えられるという。
黒木)でもネタはたくさん持っていらっしゃるのでしょう。
とむ)そうですね、一応。
黒木)忘れたりはしないのですか?
とむ)大分と忘れていますね。もちろん口が覚えるまでやりますけれども、1ヵ月やらないだけでも「あれ、このセリフ何だっけ」と出なくなったりもするので、日々繰り返し稽古していないといけません。
黒木)落語家の方は1人何役もやられるではないですか。
とむ)それは俳優さんもそうだと思うのですが、僕らの場合は、同じものを何回もやり続けられるというか、台本をずっと入れておけるので、「忘れにくい」という部分はあるかも知れません。
黒木)逆に1人の方が。
とむ)そうですね、自分のペースでやれるので。たまにですが、お芝居のお仕事をいただいたときに、相手役のセリフも覚えてしまって、自分のペースになってしまうことがあるので、気を付けないとなと。勝手に想像して「こんなしゃべり方かな」と思って話しているので。
黒木)そうなりますね。
とむ)それはいつも気を付けています。
三遊亭とむ(さんゆうてい・とむ)/ 落語家
■1983年12月31日生まれ。東京都出身。実家は東京都板橋区の『末高歯科医院』。母親はピアノ講師。
■1999年2月、末高斗夢(すえたか・とむ)としてお笑い芸人デビュー。得意のダジャレを活かしたネタを披露。ドラマも含め数々の番組に出演。
■2011年8月、三遊亭好楽(こうらく)に弟子入り。落語家に転身。
■2011年9月、両国寄席にて、「三遊亭こうもり」として高座デビュー。
■2013年2月、落語家として「R-1ぐらんぷり2013」の決勝に進出。
■2014年9月、二ツ目昇進「三遊亭とむ」に改名。
■2015年11月、一般女性と結婚。いまは2人の子どものお父さん。
■古典落語から新作落語までを行い、独演会では「宙乗り(フライング)落語」や「イリュージョン」なども披露 真打ち昇進では「日本武道館で襲名披露」と宣言。
■マラソン・テニス・ピアノ・神社巡り・ダジャレ・スキー(SIJ スキー検定ゴールド1級)・利き水(水ソムリエ資格保持)など多彩な趣味や特技を持つ。
番組情報
毎朝、さまざまなジャンルのプロフェッショナルをお迎えして、朝の活力になるお話をうかがっていく「あさナビ」。ナビゲーター:黒木瞳